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キザな青年とぬいぐるみ。

標高の高い山の上から強い風が吹いた。
風は小石を転がし、砂を吹き飛ばし少しずつ弱くなりながらも尚も吹き続ける。
そこから、少しだけ離れた村ペリオンにもその風はやってくる。
ペリオンに吹いた一陣の風は砂や小石だけでなく、声までも運ぶかのようにペリオン中に子供の泣き声が響いた。

(参った・・・)
突如として吹いた風にリーンは少し身を屈める。
そしてリーンの目の前には子供が一人。その表情はくしゃくしゃに歪み大きな涙と大きな泣き声を上げてお構いなしに泣き続けている。
構図だけ見ればまるでリーンが子供を泣かしてしまっているようでリーンはそれで尚のこと参っていた。
何故、子供がこうまで泣いているのか良く解らない。リーンがペリオンにやってきて少し村を散策している時にはすでに子供は泣いていた。
一体どうしたのか、とリーンは子供に聞いたが子供から帰ってくる返事はキンキンと耳に響く泣き声だけであり、リーンもこの場から離れようにも離れられない状況に陥ってしまっていた。
通りすがる人達から突き刺さるような視線にリーンは特に何もしていないのにバツの悪い気分になる。
そして通りすがる人間達も刺す様な視線を向けてくるだけで、構うことは無く通り過ぎていく事にもやや憤りに近いものすら覚えた。
かといって自分には今の状況をどうすることもできそうに無い、一体どうすればよいのか解らずリーンまでも泣きたい気持ちになっていた時・・・
「おー、どうしたんだいお嬢ちゃん?」
ふいに後ろから・・・ややキザな印象を与えるような声が泣いている少女に話しかけた。
リーンは驚いて振り返りその姿を見る。長い緑髪を後ろで束ね、全身黒を基調にした服を着た青年がそこににこやかに笑いながら立っていた。
その喋り言葉や服装でリーンはややうさんくさいという印象を受けたが・・・藁にも縋りたい気分だったリーンは突如として現れた青年の姿を黙ってみていた。
しかし、少女はやはり尚も泣き続け結局理由が解らない。
「あらら、お兄さんには言えないかい?泣いていたら可愛い顔が台無しだよ?」
尚も、泣く。
青年は手を少し上に上げて降参のようなポーズをした後、ポケットに手を入れると1つキャンディーを取り出した。
「まあまあ、とりあえずコレでも食べな。このキャンディーはね、食べるとすごく幸せな気持ちになれる魔法のキャンディーなんだ。」
そのキャンディーを少女の目の前にちらつかせると少女はぐずりながらもそれを受け取り口に放り込む。
「・・・おいしい・・・」
「だろう?何せこれは魔法のキャンディーだからね。君はやっぱり泣き顔は似合わないよ。」
青年はニっと笑い、少女の頭をやさしく撫でた。
少女は少し、はにかむ様に笑ったがすぐにまた顔を歪めて泣きそうな顔になった。
「でも・・・でも・・・」
「どうしたんだい?よかったらお兄さんに何があったか話してみてくれないかい?」
「おかあさんに買ってもらった、くまさんがね・・・」
それだけ言って少女は真っ直ぐに指を差した。
青年とリーンはほぼ同時に振り返り指の差す方向を見たがそこには何もなく、ただ崖が見えるだけ。
少女は「こっち・・・」と何時また泣き出してもおかしくない声を出してその方向へと歩き始め、リーンと青年もそれに釣られる様に歩き出した。

少女の歩みに付いていきたどり着いた場所はやはり何も無い崖だった。
リーンと青年は顔を見合わせキョトンとしていたがやがて少女はしゃがみ込んで崖の下を指差した時ようやく状況を理解することができた。
崖の下、5メートル程、その辺りに何やら可愛らしい顔を覗かせていた。
「くまさんといっしょにね、おさんぽしてたんだけど今日は風さんが強くてくまさんが・・・」
それだけ言うと少女は今まで我慢していた声をとうとう吐き出してしまった。
青年は「よしよし」と少女の頭を再び撫でて、なだめている間リーンは崖を覗き込む。
・・・取ろうと思えば取れる、が・・・
正しく断崖絶壁。落ちてしまえば一溜まりも無い。
なんとか安全に取る方法は無いかとリーンは考えていると、いつのまにか青年が隣で同じように崖を覗き込んでいた。
「あー・・・これ、落ちたら死ぬよなあ?」
「まぁ・・・間違い無いだろうな・・・」
だよなぁ・・・と青年は頭を掻いた。そして振り返り今も尚泣き続けている少女を見て、意を決したかのように深呼吸をした。
「兄さん、ちっとあの子の事見といてくれ」
「え?」と返答すると同時に青年は崖から降り始める。崖から少し隆起している岩を持ちながら器用に降りていく。
リーンは鼓動が急速に高る。余りにも危なっかしく見ている方がハラハラしてしまう。
青年は、少しずつ慎重に、着実にぬいぐるみの場所に近づき、なんとかぬいぐるみを手に取った。
ぬいぐるみを片手で懐に仕舞うとそこからまた少しずつ登っていく・・・
あと数センチ、その辺りまで登ってきてリーンはほっと胸を撫で下ろした。その時、
「うおっ・・・?」
突如として青年の体が下へ崩れ落ちる、足元の岩も崩れ、その岩も下へ落ちる。
青年は手を伸ばし突起している岩に手を伸ばそうとしたが後数センチ届かない。
あぁ、これは死んだな、と。青年は眼を閉じ覚悟を決めたが、不意に青年の体は落下を止めた。
眼を開き上を見るとリーンが身を乗り出して青年の手を掴んでいた。

「くっ・・・早く・・・上がってきてくれ・・・」
呻く様にリーンは言った。
崖っぷちでリーンはうつ伏せに寝そべり腕を伸ばし、青年の左手を掴んでいた。
力が入りにくい体勢で踏ん張っている為かリーンの顔から汗が吹き出る。
「おおう・・・悪いね兄さん」
青年は状況をまるで理解していないかのように軽い声を出した。
そして空いている右手で崖っぷちを掴みそこからひょい、と身軽な動作で登る。
思いのほか素早い動きと、無理な姿勢で踏ん張っていたリーンの体はそのまま仰向けに倒れた。
そして青年はそのままぐったりしているリーンを無視するかのように少女の下まで歩き、
「ほら、君のくまさんはちゃんとここにあるよ」
「わぁ・・・!おにいちゃん有難う!!」
今までの泣き顔が嘘だったかのようにぱぁっと笑顔になる。
青年はぬいぐるみを少女に渡し、また頭をそっと撫でる。
「おう、もう落すんじゃないぞ。お兄さんとの約束だからな。」
「うん!」
そういって少女は笑顔で家へと帰っていった。
今度は絶対に落さないようにしっかりとぬいぐるみを抱えて。
仰向けになりながらその様子を見てリーンはほぅ、と安堵した溜息をついた。

「いやー死ぬかと思ったー悪いね兄さん。大丈夫かい?」
「なんで死にかけたお前より僕がぐったりしているんだろうな・・・?」
相も変わらず体を大の字にして仰向けになっていたリーンだったがようやく身を起こし立ち上がり、全身についた砂をぱんぱんと叩いて落とした。
「本当に感謝はしているよ、兄さんが手掴んでくれなきゃ俺は今頃あの世に逝ってるぜ?」
尚も軽い調子で話す青年に、リーンは軽く溜息をつく
「・・・礼なら僕からも言わせてくれ。お前がいなかったら僕は今頃まだあの子の泣き声を聞いていただろうからな・・・」
「ん?あぁ、それは別に気にする事はないさ。それより兄さんの方こそ大変だったな。」
そう言うとと彼はクツクツと笑った。
「あの絵面だけ見てるとどうみても兄さんが子供を泣かせているようにしか見えなかったぜ?」
「あぁ・・・」
やはり、そう見えていたんだなとリーンは肩をがくりと落した。
あの状況を見ていた人はさほど多くは無かったが一部の人の間では「リーンは子供を泣かせる非道な人間」という印象になってしまったと思うと気が滅入る。
「最初は文句いってやろうと近づいたんだがな、見てれば兄さんの方が泣きそうな顔になるじゃないか。それで少し様子を見ていたんだが早とちりしなくて正解だったようだな。」
ハッハッハと暢気に笑う青年を横目にリーンは深く溜息をついた。

「と・・・それはそうと兄さん、ちょっとこの子に見覚えはないか?」
青年は不意に話を変えて懐から1枚写真を取り出す。
リーンはその写真を受け取りまじまじとその写真を見つめた。
長い髪をした少女が満面の笑顔でピースサインをしている・・・
「ん・・・悪いが僕は見覚えがないな・・・」
「そうか・・・悪いな変な事聞いて」
リーンから写真を返してもらいながら青年は写真をまた懐に入れると、今度は彼が大きな溜息をついた。
「どこいったんだか・・・全く・・・」
「その子がどうかしたのか?」
「いやね、つい最近コイツが家から飛び出していっちまったらしいんだ。親御さんに何も言わずにただ『冒険にいってきま~す☆』って置手紙一枚残してなぁ・・・」
それだけ言うとまた青年が溜息をつく、先ほどまでの明快な口調からはおよそ想像できない光景だった。
「捜索依頼は出してないのか?」
「一応、手紙は置いてあるし多分大丈夫だろう、って事で親御さんも本格的な依頼はしてないみたいだな。ただ心配ではあるからせめて一度顔見せてくれって事らしい」
青年は両手を顔の横に上げて首を振った。
「で、1ヶ月近く探してるんだが中々見つからなくてね・・・世界ってのは思った以上に広いもんだなぁ・・・」
「流石に一人で探してるとなると相当骨が折れるだろう・・・」
「だよなぁ・・・だが、俺も探すのを辞める訳にもいかんのでね・・・」
青年の顔は少し疲れている様には見えたが迷いは無い。どうやら彼自身も本気でその少女を心配しているようだった。
その青年の顔を見て、リーンは一つの提案をした、
「なら、僕達に一つ依頼をしてみないか?」
「依頼?」
青年が不意をつかれたような顔をする。
リーンは胸元に付けているギルドエンブレムを少し前に引っ張り、青年に見せた。
「自己紹介がまだだったな。僕はリーン=クルシモ、ギルド「Assemble」のギルドマスターだ。」

「兄さん、ギルドマスターだったのか・・・まだ若いのに意外だな・・・」
「と、いっても小さいギルドなんだがね。人数は僕含めて4人しかいない」
そういってリーンは苦笑した。こんなやり取りは既に何度もしている事も含めて。
「だが、一人で探すよりは大分見つけやすくなるだろう。声を掛ければ皆もきっと探してくれるはずだ。」
メイフィとホロウは間違いなく喜んで探してくれる筈だ。
レイも・・・嫌味を吐きつつも探してくれるだろう。
「それは有難いんだが・・・生憎依頼できる程の持ち合わせは無いんだよなぁ・・・」
青年はポケットを引っ張り、何も持ってないと仕草をする。
リーンは少し微笑んで、首を振った。
「依頼、とは言ったが別に金を取るつもりは無いさ。行き着いた街で辺りを見回しながら歩く事に労力は必要ないからな。」
「あー・・・だがそれじゃ俺の気が・・・」
「本当に気にしなくてもいい。お前にはさっきの借りもあるからな・・・」
うーん、と青年は唸る。そのまま少し考え混みリーンに一つ質問をした。
「兄さんのギルドの思念・・・っていうか本来の活動目的は何なんだい?」
「一応、魔物狩りを目的にしている。だから依頼があればあちこち街を回ったりしているんだ。」
「なるほどね・・・」
今度はふんふん、と頷き
「じゃあ代わり・・・になるか解らないが俺も兄さんのギルドに入れてもらえないか?」
予想もしていなかった青年の答えにリーンは少し驚く。
「俺もこう見えてそこそこには戦える。兄さんのギルドに貢献できるはずだ。それに・・・」
青年は視線を少し傾け頭を掻いた。
「アテも無く探すより何かの依頼がてら探した方がいい様な気がしてきたんでね・・・だから俺ばっかメリットがあって兄さんにメリットがあるかと言われると微妙なんだが・・・」
申し訳なさそうに言う青年に向けてリーンは首を振る。
青年の人柄はキザだが惹かれる物がある。もちろん変な意味ではないがそれがリーンが青年に抱いた感想だった。
そんな彼がギルドに入りたいと申し出てくれるのはリーンにとっても非常に嬉しい事だった。
「お前の名前は?」
「Sicaf=Yatray(シカフ=ヤットレイ)さ。ハハ、変な名前だろう?」
キザな青年、シカフはニっと笑い右手を差し出す。
リーンもそれを見て少し笑いその手を握り返した。

標高の高い山の上から強い風が吹いた。
風は小石を転がし、砂を吹き飛ばし少しずつ弱くなりながらも尚も吹き続ける。
そこから、少しだけ離れた村ペリオンにもその風はやってくる。
ペリオンに吹いた一陣の風は街中に子供の笑い声を届け、リーンとシカフを包み込む様に優しく吹いた。

※キャラクター紹介に「SicafYatray」追加しました。

sica.jpg
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| 小話 | 22:02 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

3行で

| 名も無き者 | 2011/07/29 22:26 | URL |

毎回終わりらへんで風吹いてない?
1000点

| 名も無きあご | 2011/07/29 22:38 | URL |

んんwwwwwwwwwwwwww

| 名も無き者 | 2011/07/29 23:24 | URL |

Assembleに役割が持てますなwwwwwwwwwwwwwwぺゃっwwwwwwwwww

| 名も無き者 | 2011/07/29 23:47 | URL |

また男の娘かよ

| 名も無き者 | 2011/07/30 00:53 | URL |

名も無き者A>
あたらしい
なかま
くわわる

名も無き顎>
言われてみればその通りだな・・・

名も無き者B、C>
なんだきさまら!

名も無き者D>
男の娘じゃねぇ青年だよ

| LeanKurusimo | 2011/07/30 17:55 | URL |















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