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騒がしい弟子と爽やかな風

「間合いが近すぎる!もう少し距離をおけ!!」
「はい!師匠!」
オシリア大陸の雲の上に浮かぶ浮遊する街オルビス。
その町から少し東に歩いた所にある雲の公園から二人の男の声が響いている。
「今度は離れすぎだ!もう少し近づけ!!」
「はい!!」
威勢の良い掛け声で返事したその男は今度は魔物に向かって突進していく。
その手に持つ長い槍を振り回す間合いとは到底思えないほどの距離に近づいた時、先ほどから指示を出していた男ははあ、と深い溜息を付く。
全く、どうして自分が戦いの指導をしなければならないのか。その青い髪を風にたなびかせながらリーン=クルシモはまた溜息を付いた。

その日、リーンがオルビスにやってきたのはギルド本部からの呼び出しがかかったからであった。
長らくギルドのメンバーが自分一人という状況が続いていたためあまり来る機会が無かったのだがここ1ヶ月ほどの間にそのメンバーは自分含めて3人に増えた。
そして・・・ギルドのメンバーが増えるという事があれば更新手続きを行わなければならないという事を彼はすっかり失念していたのであった。
「感謝してくださいね。私が連絡をしなければ貴方のギルドは規約違反で解体の恐れもあったのですから。」
赤い縁の眼鏡を中指で触りながらギルド本部の秘書レアは呆れたように言う。
「本当にすまない・・・でも、よく僕のギルドにメンバーが増えた事が分かったな。」
「貴方がギルドに対して受け取った報酬の履歴におかしな所がありましたからね・・・ほら。」
そう言ってレアは手に持っていたファイルをリーンに見えるように傾けた。
報酬の受け取った時刻、場所がみっちりと書かれていた。その一覧の中程に彼女は指を当てる。
「この日、ルディブリアムとアリアントでほぼ同時刻に報酬を受け取ってますから。」
ルディブリアムとアリアントはかなり距離が離れている。空間移動アイテムを使えばすぐさま移動できる事はできるのだがそれでもここまでほぼ同時刻に報酬を受け取る事はまずできないだろう。
それに納得したリーンは「あぁ・・・」と呟いた。
「ともあれ、これで更新手続きは完了です。次は必ず忘れないようにしてくださいね・・・それからこれも・・・」
レアは数歩歩いて自分の机の引き出しを開けると中からバッチのような物を取り出し、リーンは手渡した。
リーンはきょとんとした顔でそのバッチを受け取り、しばしばそれを見つめていた。
だが、雪の結晶のような美しい意匠が施されているな、と率直な感想が思い浮かんだだけで結局それが何か解らずレアに顔を向けてこれが何なのか尋ねた。
「ギルドエンブレムですよ。それを付けていれば自身がギルドマスターである証明になります。
人数が増えると何かとクライアントとの間やギルド同士の間でトラブルが発生する事例も最近はよくありますので・・・その対処としてギルドマスターが話を付けられるように最近発行を始めたんですよ。
貴方のギルドはまだ人数が少ない方ですからトラブル等を起きないとは思いますけど。」
それを聞いてリーンはふいに一人の人物が脳裏に浮かんだ。その口の悪さからトラブルを引き起こしそうな人物が一人自分のギルドにいる。
リーンは大きな声で溜息を付く。それに対してレアが不信そうにこちらを見てきたためリーンは慌てて話題を逸らした。
「と、ところで今オルビスでは何か依頼は無いのか?折角ここまで来たのだから何か依頼があれば引き受けようと思うが・・・」
「オルビスの依頼ですか・・・少し待ってくださいね・・・」
レアは本棚から今度は違うファイルを取り出すと中の資料を読み始めた。
ほんの数秒見ただけでレアはこちらに向き返し、
「残念ながらオルビスでの依頼は現在無いみたいですね・・・」
「そうか・・・」
依頼が無いという事はこの街が平和な証拠なのだろう。
喜ばしい事であるはずだがつい残念そうな声を出してしまった自分をリーンは心の中で責めた。
「ですが・・・最近は雲の公園でフィクシ達の数が少し多くなっております。可愛らしい外見や街の中にまで攻め入ってきてないという事で街の人はあまり気にしてないようですが・・・
 魔物であることには変わりませんのでこちらの数を少し減らしていただけないでしょうか?ギルド本部からの依頼という事にしますので報酬も勿論出しますよ。」
「フィクシか…解った、引き受けるよ。」
「お願いします。お気をつけて。」
そう言ってレアはお辞儀をした。リーンは軽く頷いてギルド本部を後にした。

オルビスは雲の上にある美しくも変わった街だ。
気候は常に穏やかで(雲の上にあるから当然なのだが)妖精族が多く住んでいる。
妖精族は人間をあまり良く思っていない節もあるためこの街で人間はあまり歓迎はされない。
だがそれでもこの街に多くの人間が集まるのはこの穏やかな気候と美しい風景があるからではないか、とリーンは思う。
そのオルビスから東に向って少し歩いたところに「雲の公園」は存在する。
そこは「'雲の'公園」という名前の通り雲が自分のすぐ目の前に浮かんでおり、その「雲の'公園'」という名前とは思えないほど人通りは少なかった。
「これは・・・確かに多いな・・・」
雲の公園に到着したリーンはついた途端にそうぼやいた。
あまりこの場に訪れた事は無かったが他の地域と比べて明らかに魔物の数が多い。
可愛らしいフィクシ達の姿に思わず退治するという気力も削がれてしまいそうになるが気を引き締めて二刀を手にしっかりと握る。
強襲をかけようと高台に立ちフィクシの大群に向って飛び立とうとしたその時・・・
「う、うわああああああ!!!来るな来るなー!!!」
唐突に聞こえてきた声にリーンは体制を崩す。
何事か、と高台から下を覗き込んでみると身の丈より大きい槍を持った少年が大量のフィクシ達に追いかけ回されているのが目に入った。
「うわああああああ!!ちょ、ちょっとまってよ!!!!!」
魔物に対して叫びながら少年は逃げ回っていた。
当然通じる訳も無く、その言葉を無視するかのようにフィクシ達は少年に向って魔法を放つ。
その魔法を器用に、危なっかしく避けながら少年は更に逃げ回っていたが・・・とうとう行き止まりとなり少年の逃げ場は無くなってしまった。
「く、くそ!!こうなったら・・・おりゃあああああ!!!!!!!」
意を決して少年は無謀にもフィクシの大群に向って槍を構え突撃しようとしたのと、
「動くな!伏せろ!!」
見ていられなくなったリーンがフィクシに向って強襲をかけたのはほぼ同時の出来事だった。

突然の強襲に驚いたフィクシ達は一瞬動きを止めたが、すぐに目標をリーンに変えて一斉に攻撃を始める。
一つ一つの魔法が弾幕のように直線を描きリーンに襲い掛かるが、リーンはそれを大きく跳ねて飛び越えそこから地面に向かい一瞬で下降する。
そこから一閃。更に振り向いて前方に向けて斬撃を走らせる。
流れるような動作に腰を抜かしている少年は釘付けになった。
どの位の時間だったかは解らないが、少年が立ち上がるその前に大量にいたフィクシ達はあっという間に殲滅されてしまっていた。

「ふう・・・大丈夫か?」
二刀を鞘に戻し、リーンは少年に振り返る。
少年は状況を未だに理解をしていないかのようにぽかんとしていた。
「・・・フィクシ達はさほど脅威では無いとはいえ今は妙に繁殖しているそうだ。狩りをするのならば相手にする数を考えた方がいい。」
リーンはそう言って、少年に手を差し伸べる。
あいかわらず少年はぽかんとして何を考えているのか解らなかったがやがて自分に差し伸べられた手の意味を理解し、その手を取り立ち上がった。
「怪我は無い・・・ようだな。良かった。」
「あ・・・はい、有難うございます・・・」
少年の声は先ほどフィクシ達と対峙していた時のような大きな声では無かった。
先ほどの事でやや恐怖感が残っているのだろうとリーンは思い、恐怖心を和らげる為に少年に質問をする。
「ところで、雲の公園に人がいるなんて珍しいな。ここは見ての通りフィクシ達の巣だから人通りはあまり無いのだが・・・」
恐怖心を和らげる為の質問のつもりが結局魔物絡みの質問になってしまっている事に気づきリーンは自分の会話のボキャブラリーの無さを呪う。
だが、少年の答えは消え入るような声ではなくハッキリとした声で返ってきた。
「俺、修行していたんです。」
「修行?」
「まだ俺、冒険に出たばっかりで・・・色々な所を旅して周りたいんです!・・・でもそれにはやっぱり強くならなくちゃいけないって。」
少年は少し顔を俯け、悔しそうな顔をして答えた。
「そうか・・・だが今日は少し日が悪かったな。さっきも言ったが今はフィクシ達の数が増えているらしい。」
すっ、とリーンは指を伸ばし、今いる足場の下指した。少年は覗き込み明らかに異常とも言えるフィクシ達の数を見て思わず「うわっ」と驚いた声をあげた。
「さっき君が相手をした数も同じぐらいだ。」
「最初は1匹だけを狙っていたはずなのに・・・いつの間にかあんなに相手していたんですね・・・」
「魔物はそこら中にいるからな。狙いを定める前に周りも確かめていかないとあっという間に相手にする量は増えてしまう。」
少年は今も尚、驚いた表情を貼り付けて下を覗き込んでいる。
「ともかく、僕は今日ここでフィクシ退治の依頼を引き受けている。数が減るまでここで修行は少し危険だ。」
リーンはそう告げると、少年は顔をリーンの方へ向けた。
そして、少し悩んだような顔をして・・・意を決したかのように答えた。
「俺に・・・俺に戦いを教えてください!!」

―そして、話は冒頭に戻る。
「戦いを教えてください」といわれた時リーンも初めは断っていた。
使っている武器も短剣と槍では全く違うし教えられることは無い、と言ったのだが少年は言っても聞かず、しつこいほどに頼んできたので結局最後はリーンが折れてしまった。
承諾してしまったはいいが一体何を教えればいいのか、とリーンは初め悩んだのだが・・・
「うぉりゃあああ!!」
少年はまたしても魔物にめいっぱい近づき我武者羅に槍を振るった。
それを見てリーンはまたはぁ、と溜息を付いた。
少年は愚直であった。自分の持つ武器の利点を理解していない。
「自分の武器の長さを考えろ!そんなに近づいたら槍を生かせないぞ!!」
「はい!!」
そして、また素直でもあった。
リーンの言葉に元気よく返事をしすぐさま行動に移す姿には好感が持てた。
とはいえ「近づけ」と言えば、近づきすぎたり「離れろ」と言えば、離れすぎたりするのはどうかと思うのだが・・・
どうしたものか、とリーンはしばし思案をする。
いっそ短剣を持たせて今から方向性を転換してもらうか・・・?
いやいや、だったらショートソードでも持たせたほうがいいか、等ととりとめも無いことをぼんやり考えていた時。
「あ」
目を離している訳では無かったが、視界に映っているものが何なのか、それが理解できていなかった。
理解した時にはもう遅く、少年の後ろにはフィクシが1匹。すでにフィクシは詠唱を始めている。
少年は前しか見ておらず気づく様子が無い。
少年の後ろのフィクシは詠唱を完了し、ニヤリとその風貌からとは思えないほどの不気味な笑みを浮かべ弾を撃つ。
「あぶな・・・」
声を掛けようと立ち上がったがリーンは次の光景に思わず声が途切れる。
突如背後は振り向いた少年は目前にまで迫ってくる弾に気づき即座に身を屈めて弾を避ける。
そこから足に力を込めて、地面を強く蹴りフィクシに突進しその槍をフィクシに突き立てた。
「きゅあああ」と声を上げてフィクシは消滅し、少年は深呼吸をし・・・
「ヨッシャ!」
と、うれしそうに声を上げた。

「師匠!今の見ましたか!?」
「あぁ、いい動きだった。今の調子を忘れるな。」
ハシャギながらこちらに走ってくる少年を軽くなだめながらリーンは素直な感想を述べた。
「よーし!この調子で・・・あれ・・・」
がくり、少年の膝が折れてその場にへたり込む。
リーンは横にしゃがみ込み、少年の頭を軽く撫でる様に叩いた。
「体は自分が思ったより疲れてるんだ。今日はこの辺りにしておこう。」
「でも!」
「無理をするな。休めるときにはしっかり休んでおかないと本当に命を落すかもしれないんだぞ?」
少年はまだ納得いかないような顔をしていたがしぶしぶ頷いた。
それを見てリーンは苦笑し、辺りを少し見渡す。
「それに、この辺りのフィクシはお前がほとんど倒してしまったようだしな・・・」
もうこの公園にフィクシの姿はほとんど見えない。
もともと退治の依頼を受けていたのでそれは構わないのだが・・・自分はほとんど何もせずに終わってしまった。
リーンは少し考え、今も尚、へたりこんでいるホロウの顔をちらりと見る。
「ここで休んでいるのも何だし少し着いてきてくれないか?渡したい物があるんだ。」
「え・・・あ、はい!解りました!!」
思ったより大きい返事でリーンは魔物がまた魔物が現れないかドキリとしたがその心配は杞憂で終わった。
二人は立ち上がるとオルビスへと足を運んだ。


場所は再びギルド本部に移る。
出て行ったときは一人だったのに戻ってきたと思えば二人になってる事にレアは一瞬きょとんとした顔を見せたがすぐに凛した顔になり、
「お疲れ様でした。依頼は達成できたようですね。」
「あぁ、なんとかね。フィクシの数は目に見えて減ってるはずだ。」
「既に情報は入ってますよ。ご苦労様でした。」
レアは深くおじぎをすると、机に置いてある包みを手に取りそれをリーンへと渡そうとしたが・・・
「あぁ、今回の報酬は彼に渡して欲しい。」
リーンはそういって後ろにいた少年を自分の前へと軽く引っ張った。
少年は困惑した表情を見せ、レアもまた困惑した顔を見せる。
「今回の依頼は僕は何もしてない。彼が解決してくれた事だ。だから彼に報酬を受け取る権利があるはずだろう?」
「あぁ、なるほど・・・ですが、残念ながらそれはできかねます・・・」
レアは困った顔をして指を頬あてがいながら答えた。
「なっ・・・どうしてだ?」
「今回は貴方のギルドへと向けた依頼ですから。その報酬は赤の他人に渡すことはできませんので・・・」
「ならば僕が一度受け取る。」
「それもできませんわ。貴方は'何もしてない'のでしょう?」
レアは困惑顔を一転させニコりと意地の悪い笑みを浮かべて答えた。
リーンは自分の発言を失言だったと思い知り、苦虫をすりつぶした顔をし「ぐぬぬ・・・」と唸った。
少年は二人のやり取りを訳がわからない様子でじっと見ていた。
「まぁまぁ、ちゃんと方法はありますよ。」
レアはなだめるように答える。
「どういう事だ?」
「彼が貴方と'赤の他人'でなければいいという事ですよ。順序は逆ですけどね。」
リーンは「そういうことか」と小さく呟き、少年へと顔を向きなおした。
「そういえば自己紹介がまだだったな。僕はリーン=クルシモ。ギルド「アセンブル」のギルドマスターだ。」
少年は一瞬ぽかん、とした表情を見せたがすぐに自分も自己紹介する。
「あ、俺は、Holow=Kelvin(ホロウ=ケルヴィン)って言います!」
「それじゃあホロウ、もしお前さえよければ僕のギルドに入らないか?」
「えっと・・・ギルドって?」
「同じ目的をもった人間の集まり・・・のような物だ。小さいギルドだがきっとお前のこれからの旅の支援もしてやることもできる。」
「じゃあ・・・じゃあ、また手解きしてくれますか!?」
「あぁ、勿論だ。」
リーンはニコっと笑い。ホロウもまた笑い返す。
「俺、頑張ります!だから是非俺をギルドに入れてください!!」
「よし、それじゃあこれからよろしくなホロウ。」
「では、早速またギルドの更新手続きが必要ですね。」
レアはまた机に向かい資料を書き始める。
閉め忘れた扉から風が入り、部屋中が新鮮な空気で満たされる。
新たに加入した、すこし落ち着きの無い少年を、オルビスの風もまた歓迎しているようだった。

ほろう

※キャラクター紹介に「HolowKelvin」を追加しました。
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| 小話 | 20:03 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ワクワクするじゃあないですか。
Leanさんのようにメイプルの世界に溶け込みまくってるブログ
ってのは意外と全くと言っていいほど無いんですよね。
もうそこらへんのプレイ日記とは格が違います。

新キャラ日誌も楽しみにさせていただきます。

| とむ | 2011/06/15 22:13 | URL | ≫ EDIT

とむさん>
こんな痛々しい小話にこうも褒めてくださるとは・・・
光栄の極みです。というかなんか逆に申し訳ないです。
ともあれ非常に励みになるコメント有難うございます。

新キャラはまだまだ続々と増えていく予定です。
拙い日記ですが楽しみにしてくだされば幸いでございます。

| LeanKurusimo | 2011/06/16 02:34 | URL |















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