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口の悪い男女。

カニングシティーの夕焼けは美しい。
この薄汚いイメージのスラム街で唯一誰もが認める美点だろう。黄昏の中に映る廃工場がその美しさを更に際立たせている。
その廃工場の敷地の土管の上に一人の長い髪の少年が腰を掛けていた。

リーン=クルシモがカニングシティーに来たのは数日前だった。
近頃カニングシティーの近くの魔物の動きが活発になっていると、ギルドに対して依頼が来たので彼は一人現地に向かい魔物狩りをしていた。
メイフィ=イェルドも引き受けると連絡が来たのだが、彼女はカニングシティーから遠く離れたルダスレーク地方にいたのと一人でもこなせる量だということもあってリーンが自分からそれを断っていた。
活発になっているとはいえ元々カニングシティーの周りにいる魔物は然程脅威では無い。量が量だった為時間はかかったが今となっては来た当初程魔物はいない。
「とりあえず依頼はこれで達成・・・かな・・・」
微かな声・・・とは言いがたい声でリーンはそう独り言を呟く。
本人は無意識の内に呟いていたので思わずハッとして周りを見渡した。
聞こえるような距離に人はいない。だが少し離れた距離に動く物が見えた。
一瞬それが何だか解らなかったが少し目を凝らす・・・夕闇の中を機敏に動く何か。どうやら人の姿のようだ。
短いスカートを履いていたのでリーンはその人が少女なんだなと理解する。
彼女が投げる手裏剣が光をきらりと反射する。その美しくも勇ましい姿にリーンは少し見惚れてしまった。
見たところかなり腕が立つようだった、にも関わらずここで狩りをしているという事は彼女もギルドへの依頼を受けた一人なのだろう。
残りの魔物の駆除は彼女任せて、リーンは報酬を受け取りに一足先に街に戻ることにした。

土管から腰を上げて軽くリーンは背伸びをする。見上げる黄昏は美しくリーンはこの景色を堪能するようにゆっくりと足を動かす。
少し遠くからカラスの声がカアカアと聞こえたがその声もすぐに溶けて消える。とても静かな夕暮れだった。
カッカッと足音がいつもより大きく聞こえる。誰もいない訳では無い、だがまるで今ここに存在するのは自分だけと錯覚してしまいそうになる。
心細さは感じるが悪い気分では無い。そんなノスタルジックな気分を味わいつつリーンは煉瓦の道を歩いていた。

その時。不意に後ろに引っ張られリーンはつんのめりそうになった。
思わず身構えて振り返るとそこには・・・可愛らしい少女が一人立っていた。
「オッサン、ちょっと薬買ってきてくれね?」
少女から掛けられた言葉は余りに聞き慣れない二人称。
そして突拍子の無い頼み事にリーンの思考は停止する。
口を少し開けて無表情になっているリーンに少女は更に追い討ちは掛ける。
「何ボケた顔してんだよオッサン。まだ流石にボケは始ってないだろ?」
「それ以前に僕はまだオッサンと言われるような歳じゃない・・・」
それも全く見知らぬ少女に。そして可愛らしい顔をしているのにこの口の悪さ。
あまりにもアンバランスさにリーンは咄嗟の返答に困り、思わず直前の言葉に対しての返答をする。
彼女はそれをはっと鼻で笑い蔑むような目で見られ、
「そんなのどうでもいいよオッサン。とりあえず薬買ってきてくれよ。もう無くなりそうなんだ。」
「いや何で・・・というか何で見知らぬ奴にそんな事頼まれないといけないんだ。」
彼女の物言いにリーンは苛立ちが募る。そんな彼の気持ちも知らないと一蹴するかのように彼女の言葉は更に続く。
「とりあえず頼んだからなー。俺はまだここでこいつら始末してるから買ってきたらまた戻ってきてくれ。」
「あ、ちょ、おい!」
そう告げると彼女は嵐のように去っていった。
素早く動きつつ。手裏剣を投げそれを当てる。その姿がまた夕闇に照らされ美しく見えた。
「何なんだよ・・・もう・・・」
その姿を見送りながらリーンは呟いた。

「お疲れ様です。これが今回の報酬です。」
依頼の主がそういって包みをリーンに渡した。リーンはその包みを少し開けて中身を確認する。金貨がずっしりと詰まった中身を見てリーンは少し感嘆の声をあげた。
「ご不満はありますでしょうか?」
ニコリと笑う依頼主に否定の意味を込めてリーンは首を横に振る。
報酬はリーンの想像以上に多かったのでリーン自身に不満は無かった。
リーンは依頼主に会釈をしその場を後にした。

外に出て少し街中を歩く。生活資金も手に入ったので当分の間は問題無く生活ができそうだ。
狩りをした魔物は弱いとはいえ量が量だったため重い疲労感を感じる。リーンはそのまま休める場所を探そうと思ったが・・・ふいに、先ほどの少女の事を思い出した。
思い出してから・・・金貨の袋をまた少し開けてリーンは溜息を付いた。

辺りは暗くなり始め星の瞬きが見える。少女はまだ魔物狩りを続けていた。
その姿を見つけてリーンは近づいていった時自分の方向に向かって光が飛んで来た。
思わず驚きの声を上げ、寸でのところでリーンはそれを避ける。
光は即座に下降しチリンと金属音を立てて地面に転る、どうやらそれは手裏剣のだった。
その声に気が付いたのか少女は手を止めてこちらに呼びかけて来た。
「あれ?さっきのオッサンじゃん。」
「危ないだろう!何処に向かって投げてるんだ!」
「こんな魔物がいる所に危ないも何もねーだろ。馬鹿か。」
「んな・・・」
言い返そうとしたがリーンはそれを抑える。彼女の言うことにも一理あるし何より早く彼女の前から去りたい気持ちが勝った。
怒りを抑えるように大きく溜息をつき、
「・・・ほら。薬だ・・・」
彼女の横にリーンは薬を置く。
「お、マジで買ってきてくれたのか。ありがとなオッサン。」
「え?」
'オッサン'はともかく素直に礼を言われた事にリーンは少し拍子抜けした。
彼女は薬を確認すると懐から包みを取り出しそれをリーンに投げつけた。
「おっ・・・とと・・・?」
さっきの事もあってかリーンは反射的に避けそうになったが飛んでくるものが鋭利な物でない事を理解し、それを慌てて受け止める。
彼女は'開けろ'と軽く目配せをした。リーンは不信な顔をしつつその場で腰を掛け袋を見つめる。
少しばかり重みがあり振ってみると中からはチャリチャリと金属が擦れ合う音がする。それを開けてみると中には金貨が入っていた。
「薬代だ。まぁわざわざ届けてくれたんだし少し多めに入れといた。」
てっきりタダ働き前提で考えていたのでリーンは更に驚く。
「感謝しろよな。ただでさえ俺の手持ちは少ないんだから。」
「今のは薬を届けた事に対する報酬だろう・・・僕から礼を言う筋合いは無い。」
一瞬不機嫌になったかの様に彼女はムっとした顔をしたがそれ以上は何も言わなかった。
「それに・・・お前も報酬はもらえるはずだろう?見たところかなりの数を狩ったようだし報酬は弾むと思うが。」
「報酬だぁ?んだよそれ?」
「お前もギルドへの依頼を引き受けてここまで来たんじゃないのか?」
「俺はそんなもん参加してねーよ。俺はただ最近この辺りの魔物が随分暴れてるって聞いたからここまで来ただけだ。」
「そう・・・なのか・・・」
てっきり今この辺りで狩りをしている人間はギルド所属の人間ばかりだと思っていた為リーンは少しばかり驚いた。
ただ、魔物の動きが活発になってるから。それを聞いて見返りも求めず動けるこの少女は思ったより悪い人間じゃないのかもしれないな、とリーンは思う。
彼女はリーンの横に腰を掛けて気だるそうに背伸びをしてみせ、
「俺はギルドっていうのがあんまり好きじゃないんだよ。なんか面倒な規約とかそういうのがあったりで自由に行動できないんだろ?」
右手で自分の肩をたたきながら彼女は言う、
「まぁ、人数が多いギルドだと統括を図る必要は出てくるだろうな・・・」
ギルドは一つの団体。頭数が多くなればなるほどその統括の必要性は増す。
各々が個人で動けば時としてギルドの名誉や信用にも関わってくる。
だが、リーンのギルドは・・・
「ずいぶん人事なんだな・・・オッサン。」
「生憎、僕のギルドは人数が多くないギルドなんでね。各々が適当に好きなように行動してるさ。」
「何?オッサン、もしかしてギルドマスター?」
彼女は少し驚いたような顔をして、リーンの体をジロジロと見た。そしてふっ、と鼻で笑うと、
「オッサン人望無さそうだもんなー。」
「うるさいよ・・・」
何処までもへらず口を叩く彼女にリーンはもう慣れ初めていた。少なくとも悪い人間じゃないということはもう解っている。
そう、ただ口が悪いだけ。だがリーンは言わずにはいれなかった。
「別に女だからこうあるべき。等と言うつもりは無いがもう少し言葉遣いを何とかしたらどうだ?」
「いや、俺女じゃねーし。男だから。」
「あぁ・・・そう・・・」
どうせまたそのへらず口で返されるのは理解していたのでリーンは適当に相槌を打った。
打った後、リーンは彼女の言葉を理解し、
「・・・は?」
今日一番の驚愕の表情を見せた。

「お前・・・変態だったのか・・・」
リーンは座ったまま後ずさりながら気持ち悪そうに言う。
「何言ってんだよオッサン。つーか俺、女なんて一言もいってねーし。勝手に勘違いしたのはそっちだろうが。」
「生憎僕の知ってる範囲ではスカートは女性が履く物だと聞いているのでな・・・」
「これはただ単に動きやすいからだ。」
「その長い髪は?」
「オッサンだって長いだろうが。」
「・・・その手裏剣は?」
「いや、もうそれ男とか女とか関係ねーから。」
そんな漫才のような問答をして、リーンは深呼吸すると、
「つまり・・・お前はただ動きやすいからその格好をしているんだな?」
「だからそうだって・・・」
「別に女の格好して性的興奮を覚えるような類の人間じゃあないんだな?」
「・・・それ以上言うとぶん殴るぞオッサン。」
本気で殴りかかってきそうな迫力があったので即座にリーンは黙る。
リーンはまた世界の広さを実感した。
「別に俺の格好はどうでもいいんだよ。ちょっとオッサンのギルドの事教えてれねーか。」
「僕のギルド・・・?別に構わないが・・・」
唐突に話が変わったのでリーンは不信に思ったが大した情報でも無かったのでリーンは答えた。
まずメンバーが2名しかいない小さいギルドである事。
一応魔物狩りがギルドの目的ではあるので各々それを行動の本筋にいれる事。
後は自由にしていいということ。
と、それだけ答えると彼女はうなずいて、
「よし、俺もそのギルド入れてくれ。」
「断る。」
「いや、何でだよ。ここは普通笑顔でイエス!だろ。」
「誰がお前みたいな変態女装野郎を・・・痛ッ!」
脛を渾身の力で蹴り上げられリーンは飛び上がった。
「お前・・・マジで殴るぞ・・・」
「今のは絶対殴られるより痛い・・・というかなんで突然僕のギルドに入りたいなんて言い出すんだ・・・」
「俺は基本的に金に困ってるんだよ。とはいえ面倒な組織には入りたく無い。」
「そこを考えるとオッサンのギルドは自由に行動ができそうだし俺も金の稼ぎどころができてオッサンもメンバーが増えて一石二鳥だ。」
「僕の得があまりにも少ないような気がするがな・・・」
「グダグダいってねーで入れてくれよ。俺、結構オトクだよ?強いよ?」
自信満々に言う彼女・・・いや彼の顔を見てリーンは溜息を付いた。
先ほど蹴られた脛を撫でながら彼に問う。
「・・・名前は?」
「俺か?俺はRay=Myuell(レイ=ミュエル)だ。レイとでも呼べ。」
「じゃあレイ。一つだけ条件がある・・・」
「あ?面倒だったら断るぞオッサン。」
「安心しろ・・・今すぐできる簡単な事だ・・・」
そう言ってリーンは立ち上がり彼女の方をみてスっと息を吸って叫んだ。
「僕をオッサンと呼ぶのはやめろ!!」
その悲痛な叫び声はカニングシティー中に広がる。
だが、その叫びもすぐに街の闇の中に溶けていってしまった。

raymyuell.jpg

※メンバー紹介に「RayMyuell」を追加しました。
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| | 2016/09/13 00:45 | |















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