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本好き少女と赤い毛皮

暖かい日差しが降り注いでいる。
日夜ドラゴンの脅威に脅かされているリプレだがその景色は驚くほど穏やかだ。
流れる川はとても綺麗でどこまでも下に流れていっている。
その川に足を付けてメイフィ=イェルドはこの一時を満喫していた。

メイフィがリプレにやってきたのはほんの数時間前の話だった。
自身の転職が近づいているのでここ最近は修行の日々が続いていたがあまり躍起になっていても仕方が無いな、と一度落ち着ける場所に来ることにした。
もちろん転職の事もあるので修行も兼ねてはいる。ただずっと暗くて心細い場所にいるのがメイフィには耐えられなくなってしまったのだ。
涼しい風がふっと吹いていった。その風を身に受けメイフィはここに来たのは正解だったなと心底思う。
この穏やかさに比例するかのように町の住人達も優しくメイフィはとても居心地のよい物を感じていた。
するとそんな折・・・
「キュー・・・キュー・・・」
微かだが風と共に何やら悲しそうな鳴き声が聞こえてきた。
近くから動物の鳴き声は先ほどから聞こえてはいたがこの今にも消えてしまいそうな声にメイフィはただ事では無いと感じる。
足を川から出してサンダルを履くとメイフィはどこから聞こえてきたか探し始める。
「キュー・・・」
また声が聞こえる。
さっきより確実声が大きく聞こえたのでメイフィはそのまままっすぐに歩き声の主を探す。
前に1つ大きなりんごの木が立っている。
その木を見上げたその瞬間に・・・
「キュッ!キュー!!」
「痛っ!」
メイフィの視界はふわふわとした毛皮に遮られた。

顔にくっついたふわふわの毛皮を持ち上げると赤い熊のような生き物の姿が見えた。
その手の中でその熊はメイフィの顔を見て
「キュ!キュ!!」
と、まるで助けてくれて有難うと言わんばかりに声を上げた。
その姿にメイフィは「やられて」しまった。
「か、かわいい!」
メイフィそのまま熊を抱きしめる。
突然の出来事に熊はきゅーきゅーと苦しそうな声を上げメイフィは慌ててそれを地面に下ろした。
「それにしても本当にかわいい熊ですね・・・何という種類なんでしょうか・・・」
それ以前に本当にこの仔は熊なのか。様々な疑問が脳裏によぎる。
調べようにもこのリプレには図書館といった物が存在しなかった。
「貴方はなんという種類の熊なんですの?」
「キュ?」
質問した所で勿論答えが返ってくるはずが無い。
どうしたものか・・・そう考えた矢先メイフィに一つ名案が浮かぶ。
善は急げと言わんばかりにメイフィは早速とある人物に連絡を取った。

―数時間後
「・・・えーと・・・頼まれた物はこれでよかったのだろうか・・・?」
青い長髪に帽子を被った少年。リーン=クルシモは戸惑いながら声をかけた。
数時間前にメイフィから突然「生物図鑑のようなものを幾つか借りてきて欲しい」と頼まれリーンはここまで足を運んだのだった・・・が、
来てみればメイフィは何やら赤い熊とじゃれあっているではないか。熊を抱きしめて地面をころころと転がってる様子にリーンは戸惑うことしかできなかった。
「あのー・・・メイフィさん?」
「あ」
ようやく気づいたのかメイフィはそのまま何事も無かったかのように立ち上がりわざとらしく咳払いをする。
「す、すみませんリーンさんわざわざこんな所まで来てもらって・・・」
「あ、いや、丁度エリニアの近くにいたから、それは気にしなくていいが…」
リーンは目線を少し傾け熊を見た。その視線に気づいた熊はまた「きゅ?」と鳴く。
「・・・この随分と可愛らしい生き物は?」
「先ほど木から落ちてきたんですよ」
そういってメイフィは林檎の木を指差す。
大体状況を理解したリーンは軽くその木に登り林檎を3つもぎとり一つをメイフィに渡す。
熊の前にも林檎を置いてやると嬉しそうな声を上げ器用に林檎を食べ始めた。
その様子にリーンは微笑むと自分も林檎に齧りついた。
「お腹を空かせて林檎の木に登ったのはいいが、降りられなくなってしまったという所か…」
メイフィの方を見ると早速持ってきた本のページをすごいスピードで捲っていた。
「えーと・・・この種はどうやらレッドパンダと言うそうですね・・・」
目的のページを見つけるとメイフィはようやく林檎に齧りついた。
リーンは本を覗きこむとそこには確かにこの熊と同じ容姿の動物の絵が描かれていた。
「・・・レッサーパンダ科レッサーパンダ属のレッドパンダか・・・クマというよりアライグマに近いみたいだな。」
そういいながらリーンはレッドパンダの頭を軽く撫でてやる。
気持ちよさそうに目を細めている様子を見て
「本当にかわいいですねぇ・・・」
メイフィは完全にレッドパンダに骨抜きにされているようだった。
恍惚の表情でにへららと笑う姿は普段の彼女からは想像できない。その様子にリーンはぽかんとしていた。
「あの、リーンさん・・・」
遠慮がちにメイフィは声を出す。
次の言葉は大体リーンは予想が付く。
「この仔飼っちゃだめでしょうか・・・?」
そうメイフィは答えた矢先リーンの手からレッドパンダは離れメイフィの膝元にちょこんと乗っかった。
今度はメイフィがレッドパンダを撫でてやるとまたとても気持ち良さそうに目を細める。
その微笑ましい様子を見て、
「すっかり懐いているみたいだしいいんじゃないか?だが、それならこの仔が食べる物とかその辺りはしっかり調べる必要があるな。」
そう答えるとメイフィは嬉しそうにまた本のページを捲り始めた。

調べてみるとこのレッドパンダという動物は雑食であり一部ではペットとして飼っている人もいるようだった。
飼える範囲の動物だと解ったのでリーンとメイフィはもう一つの問題を片付けることにした。
「この仔の名前・・・どうしましょうか・・・」
「そうだな・・・」
いざ飼うとなると一番難しい課題だった。
お互いどうするか悩んでいると・・・どうかしたのか、と聞いてくるかの様にレッドパンダが「きゅ、きゅ?」と声を出した。
「・・・キューイ何てどうでしょうか?ちょっと短絡的すぎですけど・・・」
「いや、僕は思いつかないし・・・お前はどう思う?」
リーンはレッドパンダの方に問いかける。
すると・・・
「キュ!」
レッドパンダの元気な声が聞こえて彼の名前は本人の納得の上で決まった。

「折角ですしギルドメンバー皆で交代して飼っていくのはどうですか?」
「…そうだな。僕も是非キューイと冒険してみたい。」
「きゅ!きゅ!」
リーンの頭の上でキューイは声を上げる。
「とりあえず今はメイフィが面倒みてあげるといい。この仔を助けてあげたのはメイフィな訳だからな。」
そういうと話を理解したかのようにキューイはリーンの頭を降りてメイフィの肩にそっと乗った。
「ふふ、よろしくねキューちゃん」
「それじゃあ、僕はもう行く。キューイの事よろしくな。」
そう告げるとリーンは船着場の方に向かって走っていった。
メイフィはその姿を手を振って見送り、気合を入れるかのように力強く頷く。
「では、私も頑張らないといけませんね!」
「キュ!」
肩から聞こえるエールを受け、メイフィは再び修行を再開することにした。

quui.jpg

※キャラクター紹介に「Quui」を追加しました。
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