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英雄。19

カニングシティーとはどんな町か。リーンは歩きながらそれをフレイヤに聞かされていた。
曰く、「他の町と比べ、不自然とも言えるほど文明が発達している地」なのだと言う。
その言葉の意味を、リーンはいまいち理解できていなかったがカニングシティーに足を踏み入れた時、その言葉の意味を理解した。
ヘネシスの旧道のような、鬱蒼とした森を抜けた先にあったのは…町全体が石でできており、そこいら中が炎では無い鮮やかな光に照らされ、鉄が道を走っている場所だったのだ。
「…。」
町の様相にリーンは言葉を失った。見る物全てがリーンが全く知らない…行ってしまえばリーンが空想に描いていた世界の未来の姿がそこにあったのだ。
唖然としているリーンを見て、フレイヤは少し笑って声を掛ける。
「カニングシティーは初めてですよね?驚いたでしょう?」
「あ、あぁ…」
放心したようにそう口にしたリーンの前を、鉄の塊が信じられないほどの速さで駆け抜けていった。
驚いたのも束の間。その塊はリーンの少し離れた場所に止まり…中から人が出た後に、また走り去っていった。
「あれは車です。まぁ…見ての通り人の移動に使う物だそうです。今はこのカニングシティーの中だけで運用されているようですが…うまく行けばビクトリアアイランド全体で運用する予定だそうですよ。」
「へ、へぇ…」
出来る限り冷静な態度でいる事を務めて、リーンはそう返した。
下手な事を聞くと先日の'先の大戦'の話のような反応されるかもしれないと思ったからだ。
…しかし、目前に広がる数々の未知を前にしては、それも限界があった。
1歩、また1歩と町を歩く度にリーンは目を丸くして見せるので、フレイヤはその都度それが何なのかを説明してくれた。
「…あれはテレビという物です。簡単に言えば遠くの映像を流す物ですね。」
「ほぁ…」
もはや、言葉になっていない返事をリーンは返す。
そんな、リーンを見て今日、何度目かになるかわからない苦笑をフレイヤは見せた。
「'先の大戦'時…'次元の図書館'という不可思議な世界と、この世界は一時的に繋がりました。そこは……まぁ、一言で言えば'ありとあらゆる世界'の英知が集う場所だったのです。
 次元の図書館が我々にもたらした知識によって、我々の世界の文明は飛躍的に発展しました。それによって生み出された強力な武器や魔術、兵法…それらのおかげで闇の魔術師を倒す事ができたのです。」
'次元の図書館'。
またしても聞いたことの無い言葉が出てきた。それに'ありとあらゆる世界の英知が集う場所'等と、さらっととんでもない説明まで付いてだ。
しかし、今のリーンはそんな事はどうでもいいと感じていた。
それほどまでに凄まじかったのだ。このカニングシティーという町の様相は。
「当時はとにかく闇の魔術師の討伐に念頭を置いてそこで得た知識を使ってきましたが…無事に討伐する事ができたので今度はその知識を我々の生活に還元しようとしているらしいです。」
「なるほど…」
「まぁ、私個人としては世界中がいずれこのような様相になってしまうと思うと…ちょっと息苦しいと感じてしまいますね。穏やかなヘネシスは今の姿のままあって欲しいですし…大自然と共に人々が生活するエリニアの形を変えてしまうのも…………」
どうやら、フレイヤ自身はこの町の事をそれほど良くは思ってはいないようだった。
尤も、とにかく自分の知らない物で埋め尽くされ、未だに唖然としているリーンの耳にはその言葉はあまり入っては来なかったのだが。
だが、世界全体がこの町の様相になるのは…リーン自身もあまり快く思えない気持ちは確かにあった。
文明は発達しているのだろう。解らない物は多いが、恐ろしく便利な場所なのだろう。
しかし…それ以上にこの町に対して抱く印章は'騒がしい'という気持ちが強かった。
利便性は高いはずなのに…住んでいると気疲れしてしまうのではないか、と思えてしまうほどに。
まぁ…穏やかで優しいヘネシスの町に長く居たリーンなのだから、それはある意味当然なのかもしれないが。
ただ…
(夕日が…綺麗だな。)
時刻はもう黄昏時。
西日に照らされ、影を落とす石の塔達。
影を落とした場所を照らす、異形の炎。
それらが描き出す、人の手によって作り出された幻想的な景色は…リーンがこれまで見てきたどの黄昏よりも切なく、美しいと感じさせた。


翌日。
リーンは、これまでと同じように食事を取り走り込みと素振りの修行を行った。
場所は変われど、やる事は変わらない。だが、いつも以上にリーンは肉体的、というより精神的な疲れを感じていた。
それは、いつもと違う石畳の上を走っているからというのが大きいのだろうが…何より道行く人が奇異の目でこちらを見てくるのがひしひしと伝わってきていたからだ。
場所が変われば住む人間も変わる。どうやら、このカニングシティーでこういった行動はこの場にそぐわない行動であるらしい。
自分に向けられる視線、時折聞こえる嘲笑。それらを全て見えない、聞こえないふりをして一心不乱に修行を続けたが、これから毎日この町の中で修行を続ける自信が早くもリーンの中からは消え失せていた。
「ふぅ…」
一通りの修行を終えリーンは大きく息を付き、近くに置いてあったタオルを手に取って汗を拭いた。
フレイヤはいない。走り込みを終えた時点で、「ギルド分所の方へ行ってきます。」と、一言告げて行ってしまった。
何気なく、空を見上げると太陽はまだ真上にあった。燦々と輝く太陽と同じ様に、この町の人間もまだ活動的な時間だ。
リーンは恨めしそうに声にならない声を上げる。
今が真昼間ではなく黄昏だったなら。あの美しい黄昏の時間なら、きっとリーンの心はもっと晴れやかな気持ちでいれただろうからだ。
「…。」
いつまでも太陽を睨みつけていても、時間の流れは速くなる訳が無い。
こうしてても仕方が無いと、リーンは小さく溜息を吐いて座り込んでいた石の階段から立ち上がり、宿屋への帰路を辿った。

宿屋に足を踏み入れた時、番台の男と目が合った。
異質な物を見るように睨め付けられたが、やがてリーンが宿泊客であることを思い出したのだろう、何も言う事無く視線を読んでいた新聞に戻した。
どうやら彼がこの宿屋を経営している人間であるらしいが…リーンはこの宿屋に到着した時から、この男を好きにはなれなかった。
ヘネシスのあの宿屋に泊まった後だからというのも勿論あるのだろう。寧ろ、必要以上に客に関わらない彼の姿勢は正しいのかもしれない。
それは頭では解っているのだが、あの可愛がってくれた女将の事を思い出すとリーンはどうしてもそう思ってしまっていた。
何も言う事は無く、リーンは自室に戻ろうとしたが…ふと、体の疲れはそれほど大きくない事に気が付いた。
時計を見ると、時刻はまだ昼にもなっていない。普段の事を考えればフレイヤが戻ってくるまでまだ大分時間がある。
そこでリーンは一つ、前々からやらなければならないと思っていた事を実行に移す決意をした。
「すまない。この辺りで図書館のような物はないだろうか?」
どう見ても年上の人間である店主に向かって、へりくだる事無くリーンはそう尋ねた。
店主は見るからにめんどくさそうな顔をして見せると鼻を鳴らし、言った。
「なんだぁ?運動をしていたかと思えば今度はお勉強か?性が出るねぇ小僧。」
おおよそ、客に対する態度とは思えない返事が返ってきた事にリーンは顔を歪めた。
反射的に文句を言おうとしたが、それより先に店主の言葉が続く。
「'こんな町'にそんなもんある訳……いや、そういや最近作られたか?ギルド分所の近くにそれっぽいのがあったような気がしない事もねぇな。」
「…ギルド分所はどこにある?」
「さぁね。それも最近出来たばっかだから詳しくは知らねぇよ。……あぁでも、確かここから東の方だったかもしれねぇな。」
「…感謝する。」
大雑把な方角した教えてもらえなかったが、リーンは短く礼の言葉を返した。
尤も、リーンの心情は感謝の気持ちよりも早く会話を切り上げたいという気持ちの方が強かったのだが。
善は急げと言わんばかりに、そそくさと宿屋の出口に向かおうとした時、後ろからまた声が掛けられた。
「…小僧、路地裏や薄暗い場所には近づくな。ま、命が惜しいならの話だがよ。」
「…。」
リーンは何も言わず、振り返る事もなく頷き、宿を後にした。

(命が惜しいなら、か。)
宿屋から出て歩きながら、リーンは先ほど店主に言われた言葉を思い返す。
命は別に惜しくない。…ただ、捨てるタイミングは少なくとも今では無い。
「…。」
リーンは腰に提げてある棒切れに視線を落とした。
あんな話を聞いてしまった以上こんな物でも持っていないよりはマシだろうと、置いてくることなくそのまま持ってきていたのだ。
(…そういえば、今やってるのって剣の修行の筈…だよな。)
だが、自分がここ最近やっている事と言えば…ひたすら走って、ひたすら素振り。それの繰り返しだ。
真剣を最後に握ったのはいつだっただろうか?
本当に、これで自分は強くなれるのだろうか?
様々な想いが自分の中で反響する。だが、確かに言えることは一つある。
(体力は間違いなくついている…な。)
今日は特にそれを実感していた。
いつもの走り込み、素振り。それを終えて尚且つまだ時刻は昼前だったからだ。
前々から徐々に終わる時間が早くなっているのは感じていたが、昼を跨ぐことなく一日の修行を終えたのは今日が初めてだった。
今だって足取りも軽い、腕だって自由に動かせる。
疲労感、という物をリーンは段々と覚えなくなってきていた。
(ん…?)
考え事をしながら小さな路地を通り過ぎた時、リーンは何か妙な違和感を感じた。
気になって、体勢はそのまま後ろに下がり路地を見やるとその違和感の原因はすぐに解った。
同時に、店主が『路地裏や薄暗い場所に近づくなと』と忠告した理由もだ。
(なるほどな…)
路地にはボロ布を纏った人間が座り込んでいた。
頬は痩せこけて、視線は空へと向かっている。尤も、本当にその空を見ているのかは解らないが。
いわゆるスラム、なのだろう。繁栄した町の中にこういったものの存在は常に付き物と聞く。
この路地の先に進めば確かに無事では済まない気がする。見えるのはただ一人の人間が座り込んでいるだけの景色だが、そのずっと奥に佇む暗闇はそれを想像させるには十分すぎる物があった。
じろじろと見続けて何か因縁を付けられては堪らないと、リーンはすぐに路地から視線を外して歩き始めた。
「…。」
ヘネシスのような長閑な町にずっといたからだろうか。
こういう光景を目にしてしまった事が、リーンはどうしてかショックだった。


図書館に到着して、リーンは早速書物を読み漁り始めた。
読む本は…もっぱら歴史書の類だ。
(やはり…か…)
リーンが座っている椅子の前のテーブルには既に数十冊の本が積み重ねられていた。
全部を読み切った訳では無い。ただここの歴史を大雑把に知りたかったからだ。
そして読んでいく内に…ある一つの事実をリーンは理解した。
(ここは…僕の住んでいた'世界'じゃない。という訳か…)
ここに来る前から半ばリーンはそれを理解していた。
ヘネシス、カニングシティー。聞いたことの無い町。
フレイヤが使っていたあの'魔法'のような物。
メル。自分が聞いたことも無ければ、見たことも無い通貨。
そして、このカニングシティーの発達した文明。
誰かに聞かなくとも、調べなくとも、ここがいわゆる'異世界'だという事は想定していた話だ。
だから、リーンは驚かなかった。
信じられない、という気持ちも無かった。なにせ、自分こそが少し前までその'信じれない'力を身に宿していたのだから。
自分がこの世界に来たのも、間違いなく自分の'力'によるものなのだろう。
リーンは自分が身に宿していた'力'の本質がどういった物なのか、どういった事が可能なのか全てを理解している訳では無かった。
ただ、自分が理解している範囲だと「途轍もない速さで動ける」「時間を逆行できる」「不死」この3つだけだ。
(でも、「速さ」と「時間」と「空間」は違うようで似通った性質の物だ。どれか一つでも操作ができるなら、次元の壁を越えて異世界に来たというのも不思議では無い、な。)
そう簡単に結論付けて、リーンは読んでいた分厚い書物を閉じてテーブルに置いた。
(…そういえば…誰が言っていたんだっけ?この話は)
ふと、疑問に思いリーンは記憶の糸を辿る。だが、その答えは1秒もかからない内に出た。
そうだ、こんな事を言う奴なんて自分の知ってる人間の中には一人しかいない。
リーンの脳裏に浮かぶのは…今となっては遠い祖国の、親友の姿だった。
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| 小話 | 18:28 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

次で20の大台ですよ! 
しかし詳しくなさすぎて次元の図書館とかに関する話が
オリジナルなのか本来のものなのかすらぼくにはわからない。
くっ・・・。

| あ | 2018/06/21 19:10 | URL |

あ>
次元の図書館は名前だけ借りてほぼオリジナル要素です。
ですがメイプルの次元の図書館の話は面白いのでオススメです。

| L | 2018/06/21 20:30 | URL |

リーンさん田舎っ子だったのか…
いつかショーワとかにも行ってほしいですねえ

| ら | 2018/06/22 14:29 | URL |

ら>
田舎っ子というか元の世界の文明はそんなに発達していなかった感じですかね。
とはいえリーンの国自体もそこまで大国という訳でもなかったみたいな設定です。

| L | 2018/06/23 14:45 | URL |















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