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英雄。17

―リーンが二度目の死を体験した時、何もかも全てが'巻き戻った'。…一度目と全く同じように、燃える炎も散った命も全てを一緒くたにして洗い流すように。
目を覚ますと、いつも通りリーンは自室のベッドの上だった。
「…。」
寝ぼけ眼で窓から外を見ると、心地よい朝日と早朝の静けさがリーンの体を包み込む。
そのままぼんやりと外を眺めていく内に、リーンはハっとして腹部を手で触った。
(何も…無い…?)
昨日、賊に撃たれた筈の腹部には傷一つ無かった。
あれほどの傷、当然ながら1日程度で治るはずもない…一体何故?
様々な思考がリーンの頭をよぎるが、窓から見える穏やかな街の景色を見て一つの結論に辿り着いた。
(夢…か…)
あまりにもリアルすぎて、思い出しただけでも気分が悪くなりそうだった。
だが、よくよく考えたらこれほど穏やかで美しい国が一夜にして地獄と化すなんて有り得ない話では無いか。

……
………?
(…違う!)
あれは決して夢なんかでは無かった。全て現実にあった事だ。
ぼんやりとしていた頭から一転。一瞬にして覚醒したリーンは即座に今日の日付を確認する。
(…立待月の七日。やっぱり巻き戻ってる…)
襲撃された日、リーンにとっては昨日だがその日からきっちり1週間巻き戻っている。
(一体どういう事だ…?どうしてこんな事が起きている?)
様々な思考を巡らせるが確信を持って言える事は何も出てこない。リーンはただただ己に起こっている事態に困惑していた。


…だが、考えていく内にいくつかの仮説が出来た。
まず一つ。恐らく、'時間が巻き戻っている'と理解しているのは自分だけ。
まさか時間が巻き戻っている等とは夢にも思わなかったが、違和感自体は前に'巻き戻った日'にもリーンは感じていた。
だが、周りの人間はそのような素振りを一切見せていない。リーンが何度か「これは前にもやらなかったか?」と聞いたにも関わらずだ。
そうなると…自分の中の'何か'が起因となってこの巻き戻りが起きている可能性が高い…だが、その'何か'が解らない。
(何かある筈だ…何か…)
リーンは巻き戻った瞬間、すなわち自分が死んだであろう瞬間を思い返す。
…現にこうして生きている以上、あれが'死'なのかどうかは確信が持てないが、あの頭の中まで暗闇に浸食されていくような…思い出すのも嫌になるほど不気味な感覚は…あれこそ'死'であるのだろうと思わせるには十分だった。
リーンの国に攻め入って来た何者がリーンを殺し…そして気が付いた時にはリーンは再び'今'の時間に巻き戻っている。
もし仮に、リーンの死がこの'巻き戻り'の引き金になっているとするならば…
(そういえば…あの時は…)
リーン一人が逃がされ森の中を彷徨っていた時、リーンは普段自分が持ち歩かない物を持っていた事を思い出す。
それはまさしくこの国の'国宝'であり…敵国の目的としていた物そのものだった。
(そんなまさか…いや、しかし…)
国宝、と言われてはいるがそれに対してのリーンの認識は'ただの綺麗な宝石'ぐらいの物だった。
美しい宝石というのならば…宝石類に関しての知識をリーンはあまり持っていなかったが…これ以外にいくらでも存在していると思っている。
ただ確実に言える事は、国を墜としてまで手に入れるほどの価値は無い。という事だ…これが'ただの宝石'ならば。
もし、仮にあの'国宝'途方もないほどの力を持っている物だとしたら?…そして、どこからかその存在を知った何者かが、その'力'を求めて国を襲ったのだとしたら…?
…馬鹿馬鹿しい、有り得ない。
しかし、そう考えれば全て辻褄は合う。そして何より、既にその馬鹿馬鹿しく、有り得ない体験をリーンは二度もしているのだ。
いやそれ以前に今、尤も大事な事はそんなことではない。
(きっと、ここで動かなければ…また同じ事を繰り返す事になる。)
そう、これは…神が…いや、'国宝'が自分に与えた奇跡なのだ。
きっと'国宝'が言っているのだ。「ここで滅ぶべき国では無い」と、「国を救え」と、「民を救え」と。
ならば、リーンがするべきことはたった一つだ。
そこで、リーンの自室のドアから軽快なノック音が聞こえた。
起きてから結構な時間が経っている、いつもなら朝食に向かっていてもおかしくない時間だ。
「入っていいぞ。」
尤も、誰がノックしたのかはリーンには解っている。
こういったタイミングでリーンの元へ訪れるのは、彼しかいない。
ドアが軽く開き、ひょこりと頭だけを覗かせたのは…やはり、リーンの予想通りカノンだった。
「おはよう、リーン。起きていたのかい?食事はとっくに出来ているよ?」
笑みを浮かべてカノンはそう言った。
リーンは軽く「あぁ」と言って頷き、立ち上がりカノンの元へと歩く。
カノンはその様子を見て笑みを消し、少し驚いた顔をして見せた。リーンの顔付きはこれから朝食を摂りに行く様な物とは程遠かったからだ。、
「すぐに国の軍備を固めろ。1週間後…夜襲がある。」
「え…?軍備?どうして?どういう事だい?」
当然だが、いくら唐突に言われたとはいえ、この言葉の意味をカノンは理解できなかった訳ではない。
ただ、理由が解らなかっただけだ。
それも当然だ。これから国が襲われるという事実を知っているのはリーンだけなのだから。
「頼む、信じてくれ。ただ1週間後に備えて防備だけでもいいから固めてくれ…何も無ければそれでいいんだから。」
「…解った。すぐに兵士達に伝令するよ。」
納得できた訳では無かったが、リーンのただならぬ表情を見て、カノンはそれ以上何も言わなかった。
パタパタと駆け足でカノンが兵舎へと向かっていく。その後ろ姿を見送りながらリーンは一人つぶやいた。
「こうすれば…この国も民も…守れる…!」
'国宝'が与えたこの奇跡をもうこれ以上無駄にはしない。絶対に国を守って見せる。
リーンの気持ちは高揚していた。自分の行動がまるで'英雄'のように感じたからだ。皇とはいえリーンは年頃だ、そういった英雄譚に憧れる気持ちは持ち合わせていた。
「絶対に守って見せる…」
決意に満ちた表情で呟き、リーンはカノンの後を追って1歩、歩き出した。
…そして、この1歩こそ。リーンがこれから体験する事になる地獄の始まりだった…



リーンが自分の体に最も変化を感じたのは、修行を始めてから14日目の事だった。
その日もいつもと同じように起き、同じように朝食を食べ、軽く準備運動をしてから走り込みを始めた。
周回数は51周。周回数は自分が数えなくとも、近くで座っているフレイヤが数えているため、自分で数える必要は無い。
しかし、今のリーンにはその数える必要のない周回数を数えるぐらいの余裕ができていた。
「ハァ…ハァ…」
「お疲れ様です…随分と余裕ができましたね。」
そう言いながら近づいてきたフレイヤはリーンにタオルと水を渡した。
何も言わずにそれを受け取り、リーンは速やかに水分を補給する。もちろん、むせ返る事は無い。
「…こうも毎日やらされれば嫌でも慣れるさ。」
含んだような言い方でリーンはフレイヤにそう言った。
その言葉を聞くと、フレイヤはいつも通り笑って見せた。
「まぁ、それが狙いですからね。…さて、そろそろ次のステップと行きましょうか?」
「次のステップ?」
そう聞き返したが、次のステップが何なのかは予想が付く。
ここまで体力を付けたのならば、次はいよいよ実践的な修行になるに違いない。
ようやく剣の修行らしく剣を持ち、打ち合えるのだ。フレイヤから剣を取り返す日はそう遠くは無い…と、思っていた。
しかしリーンの予想を裏切って、フレイヤがリーンに手渡してきたのは錘が付いた木の棒だった。
「…これは?」
聞いてみたが何を言われるかは薄々予想できた。今度は絶対に間違っていない。きっと、リーンが想像している通りの事をフレイヤは言ってくるのだろう。
フレイヤは笑顔を崩すことなく言った。リーンの予想を一字一句違わずに。
「私が'いい'と言うまで、これを振りなさい。」
「…はい。」
結局、フレイヤが'いい'と言ったのは、リーンの体力に限界が来て倒れた後。
938回目の素振りをした時だった。
「明日から毎日宿屋を51周し、その後に938回素振りをしなさい。」
薄れゆく意識の中、リーンはまたか…と絶望した。

img_0.jpg



そこから15、16、17日目は修行の初日に戻ったような気分だった。
宿屋の周りを走り、素振りをして、疲れ果てて眠る。それの繰り返し。
修行を終えて部屋に戻ろうとする度、女将が心配そうにこちらを見ていたのは解ってはいたが、それに答えられるほどの余裕はまだリーンにはできていなかった。


修行19日目。
この日もいつも通り修行を終え、眠りについたが…目を覚ますとまだ日は落ちていなかった。
体の感覚としては10日目に近い、腕を動かそうとすると鈍い痛みが走るが…動かせない程では無い。
走り込みの修行に素振りが追加されて、まだ6日しか経っていない。走り込みの修行だけをしていた時に、このような境地に達するまで10日要したが…リーンの体は早くも新しい修行に適応しようとしていた。
ベッドから起き上がり、軽く背伸びをする。走る鈍い痛みにやや心地よさを感じつつも、リーンは部屋を後にした。

「それでね、お客さん達が急に喧嘩を始めてねぇ…自分でも信じられないのだけど私ったらその二人の首根っこ捕まえてこう言ってたのよ。『ここは食堂だよ!口を動かすなら食べるために動かしな!』ってね!いやぁ、人間いざって時に何するか解らないものよね。」
「ハハ…」
遅い昼食(時間的には夕食と言った方がいいが)を食べながら、うんざりした様子でリーンは女将の話を聞いていた。無論、女将はそんなリーンの様子には気が付いていない。
本当は食事をしに来たつもりはなかった。ただ、リーンとしては何となくじっとしていられずに、自室から出ただけだったのだが、
食堂へ降りてきたリーンを見つけた瞬間、嬉しそうに声を掛けてきた女将を無視するのも気が引けたので相手をしていたら…いつの間にか食事が出ていた。
その上、女将の口からは次から次へと話が飛び出してくる。つまらない話とは思わなかったが…こうも続くとそれにもいい加減辟易としてきていた。
その時だった、宿屋に突然人が入ってきた。
その人物はあまりにも慌てた様子で入ってきたのでリーンは思わずぎょっとしたが、女将はなんてこと無さそうにその人物の方へと駆け寄った。
「ご、号外です。た、大変ですよ!旧道の方で…」
その男は郵便配達員なのだろう。あまりにも大きなニュースだったのだろうか。号外を売りながらもその内容を誰かに話したくて仕方が無いといった様子だ。
そんな男を宥めるように女将は言う。
「はいはい、解った解った。でも内容話してたら売れる物も売れないわよ。2部買わせて頂くわ。いつも有難うね。」
「毎度あり!こちらこそ、いつもありがとうございやす!」
金銭を受け取った男は、叫びながらまた黄昏の町の方へと駆けて行った。
あまりにも大きな声なので、いつまで経っても男の声が聞こえなくなる事は無かった。
「号外…?何かあったのか?」
「さぁ、何かしらねぇ…はい、これ。」
そう言って女将は買った2部の内の1部をリーンに渡した。
恐らくリーンと自分が読むために2部買った訳ではない。食堂に置いて宿泊客が自由に読める様にするために買ったのだろう。
そこまで解っていたので、リーンはできるだけ皺にならないよう丁寧に新聞を開いた。…尤も、リーンも宿泊客である事には間違いないのでそんな気遣いは無用なのだが。
『―ヘネシス旧道で死体見つかる。
 本日、夕方。ヘネシス旧道で死体が見つかった。
 身元を確認した所、マグス盗賊団の幹部であるライザムである事が判明した。
 マグス盗賊団は一年ほど前、彼等が根城にしていた洞窟で幹部を除いた所属団員が一夜にして皆殺しにされた経緯があり、先日は幹部の一人であったキルラが何者かによって殺害されていた。
 今回の事件も同一の人物、または同一の組織によって起こされた物だと考えられている。
 今回、ライザムの遺体が見つかった場所は盗賊団のアジトの一つだったらしく、道に迷った行商人がたまたま見つけた物であったようだ。
 この事件についてエレヴ警護偵察隊は捜査を進めているが、悪逆非道の限りを尽くしていた盗賊団の人間が亡くなった事に対して、当然の報いといった声も大きいそうだ。』
記事をそこまで読んで、リーンは目を丸くして驚いていた。
女将も同じ気持ちだったのだろう。リーンの表情を横目で見ながら呟いた。
「まさかまたあの盗賊団の幹部が殺されるとはね…あいつらに同情の余地は無いけれど…この辺りで殺されたというのは何だが気味が悪いわねぇ…」
人のいい女将がこういうぐらいだ。リーンは知らないがこのマグス盗賊団というのは、この記事の通り本当に悪逆非道を尽くしていたのだろう。
そんな知らない彼等が何者かによって殺された。リーンが驚いていたのはそこでは無い。リーンが驚いていた理由は…
ライザムの死体が見つかったのが、フレイヤとの決闘に使ったあの場所であった事だった。
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| 小話 | 00:12 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

亡国編と同時に進んでいくの良いですね。
非常に丁寧な描写に好感が持てます!

| あ | 2018/05/26 00:19 | URL |

これは英雄考察が待たれる

| ら | 2018/05/26 21:10 | URL |

あ>
正直一番書くのがめんどいので亡国編は適当に端折るつもりですb

ら>
考察するほど高尚なもんじゃあないっすよ・・・

| LeanKurusimo | 2018/05/26 21:33 | URL |















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