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守人の少女達。

目を閉じていても解るほどの強く、心地よい光がリーンの体を照らす。
もう、朝がやって来たのかとリーンは重い瞼を開け、重い体を上げてぼうっとした顔で窓の外を見た。
リーンが宿泊しているこの宿、ジパングのとある宿屋であるのだがその全部の部屋から見えるように作られている庭園は非常に見事な物である、としかいい様が無い。
ジパング独自の建造物の配置や綺麗に波を描くように敷き詰められた砂利、そして庭園に流れるように作られている小さな川…昨日ここに入った時は辺りは暗くなってしまっていた為その全景は見ることはできなかったのだが今こうしてみるとここまで美しく作りこまれいたのかと、リーンは眠気が全て飛んでしまう程驚いていた。
更にこの宿屋はこの庭だけでなく他の施設も全て美しく、退屈させない作りになっているのだ。言うならば、他の町の宿屋は「一晩眠る為の場所」とするのならばこの宿屋は「この地に滞在する為の場所」と言えばいいだろうか。
昨日の夏祭りの疲れもまだ少し残っている、今日はゆっくりとこの宿屋で過ごしていようか…と、考え再び眠気に身を任せようとした直後にリーンは昨日のとある一幕を思い出した。
『すぐにまたこっちから連絡するから!!』
そう言って闇夜に消えていった少女と女性の事を。
…リーンの背筋にひやりと冷たい汗が流れた。
アマテラス本部に来るようにと命令をされてそれを無視し、更に逃亡。
よくよく改めて考えればこれは非常に不味い事なのではないだろうか?
二人が本部に来るように言われた理由は恐らく…ギルドに無許可で所属しているという事であろう。
もしかしたらアマテラス本部から何かしらの処罰があるかもしれない、だがそれは彼女達が勝手にやった事であり誰が悪いのかで言えば間違いなくあの二人。
まぁ、リーンとしても二人が処罰されるような展開は望んでいない事であるのだが…だが、そんな話は単純に済むだろうか?
仮にも相手はあのアマテラス、名前こそ忘れられかけている存在とは言え、その権力は本物の組織…事と次第によっては自分達も危うい状況になりえるのでは無いだろうか?
あの二人が悪い、悪くないそういった事は置いといて…その二人が無許可で所属しているギルドは、紛れも無くこの「Assemble」であるのだから…
頭の中でグルグルと考えや不安が巡り、いてもたってもいられなくなったリーンは結局、寝起きからものの30分程度で宿屋を後にしていた。

「案外、何事も無いな…」
宿屋から外に出た瞬間にいきなり囲まれたりしないだろうかと聊かの不安を覚えていたリーンだったが結局それは杞憂で終わっていた。
それどころか、あの二人を捜索しているような慌しさや物々しい空気そういった事すら一切感じる事すら無い。一応気になってジパングの掲示板を見たが二人が尋ね人になっている様子も無かった。
「…本当にあの二人を探す気があるのか?」
穏便に済むならそれに越したことすらないがこのあまりにも平和的すぎる空気にリーンは若干呆れた様にそう独り言を吐いた。
だが、この様子ならば問題ないかもしれない、そう思いリーンはとある場所…まぁ、隠す必要も無いのだがアマテラス本部へと足を向けた。
何はともあれ2人を、そして自分達をどうするつもりなのかを全て知っているのはアマテラスである事は間違いない。一番手っ取り早いのはやはりそこの人間に聞いて見る事だろう。
歩いていてもやはり何事も無く、本当に平和な物だった。早起きの子供たちが遊んでいる横を通り過ぎ、出店の前を通り過ぎ…リーンは呆気なくアマテラス本部の前に辿り着いた。
「大きいな…」
本部がどこにあるのかは知ってはいたが実物を見た事が無かったリーンが発した第一声はそれだった。
藍やキーリの話を聞いていて…失礼な話だがアマテラス本部はもっとみすぼらしい物だと想像で思っていたのだがそれはどうやら大きな間違いだったようである。
建物の大きさはもちろんだが何よりその敷地もかなりの物だ。外周を軽く散歩するだけでもかなりの運動になるんじゃないかと思える程だ。
「…そういえば…中に入れてもらえるのだろうか…」
足を向けるだけ向けておいてリーンそこまで考えが至ってなかった。
協力しているとはいえ自分は部外者であることには変わりない。そんな自分が易々と中に入れてもらえるとは…少しばかり考えにくい。
こうも立派な建物を目にすると余計にそう思える。どうしたものかと考えていると、リーンは正門の近くで掃除をしている人物が目に入った。
「あれは…」
見覚えのある人物だ。彼女なら今回の事をよく知っているだろうし中に入らずとも話を聞けるに違いない。
そう思ったリーンは少し小走りで彼女へ近づいていった。

「あら…?貴方は…リーンさん、でしたよね?おはようございます。」
唐突にこちらに向かって走ってきた人物に初めは怪訝そうな表情をしていたがそれが誰だか解ると鈴音蜜柑は表情を和らげてそう挨拶をした。
どうやら、自分達はお尋ね物にはなっていないと安堵してリーンもまた「おはよう」と軽く挨拶を返す。
「どうかなさいましたか?随分焦っているように見えましたが…」
「あぁ、ちょっと聞きたい事があってな…」
「聞きたい事?」
「あの二人…鈴音藍とキーリ=ユダルクの事なんだが…」
「もしかして二人が見つかったのですか!?」
言いかけて唐突に目を見開いてそう詰め寄る蜜柑にリーンはやや気圧された。
町の空気からそうには思えなかったが、あの二人が今も尚、尋ね人になっているのは間違いないようだ。
「いや、そうじゃないんだ…ただ、あの二人がどうして尋ね人になったのか気になってな…」
「あぁ、そうだったのですか…失礼しました…」
そう言うと蜜柑は申し訳なさそうに頭を下げた。
「理由は…簡単ですよ。あの二人が無許可でギルドに所属している、という事です。」
やはり、とリーンは思った。まぁ、他に考えうる理由も無かったのだがリーンは改めてそれを確信する事ができた。
「…もしあの二人が見つかったらどうなるんだ…?」
「まぁ…その時は、しかるべき処置をするつもりです。」
'しかるべき処置'…これはやはり処罰されるという事なのだろう。
そうなるのはあの二人の自業自得…だが…
何度も言うようにそれはリーンも望んでいる事では無い。覚悟を決めるように深呼吸すると、リーンは頭を大きく下げ、口を開いた。
「その事何だが…あの二人をギルドに入る様に唆したのは僕なんだ…だから、どうかあの二人を責めないでやって欲しい。全ての責任は僕にある。だから、どうか頼む。」
「え、え?」
「僕にできる事なら何でもする。本当にあの二人は僕に唆されて入っただけで何も悪くないんだ、だからどうか…」
「いえ、あの…何か勘違いされているようですね…」
「え?」
「何もあの二人が見つかったとしても処罰するつもりなんて微塵もありませんよ。確かに無許可でギルドに入ったのは少し勝手だと思いますけど…入ってはいけないと決められている訳はありませんので…」
「だ、だがさっきしかるべき処置と…」
「それは私個人がやるお仕置き…の様な物です。…あの子達を見ていれば解ると思いますけども…あの子達はこうやって度々勝手な事をするんです。いくら問題にはならない無いとはいえこうも勝手な事されるのは問題でしょう?」
「まぁ、それは確かにそうだ、な…」
別に禁じられていないから、とは言って何をやってもいいという訳では当然無い。
今回の事もその一つのようだ…ともあれ、事はリーンが思っていたような深刻な状況にある訳では無いらしい。その事実にリーンはほっとため息をついた。
「どうやら…貴方は色々苦労していたようだな…」
「えぇ、お互いに。」
口元に手をやって蜜柑はそう苦笑した。
「でも、私少しホッとしました。貴方のような方がマスターをしているギルドなら安心ですから…」
「…そうだろうか?」
「えぇ、メンバーを庇って罪を全部被ろうとするような人って中々いないですから。」
ニッコリと笑って蜜柑はそう言った。
どうやら全て見透かされていたらしい…リーンとしては本気で形振りかまわず言った台詞だった為、こういう顛末になってしまうと…
今更になって気恥ずかしくなったリーンは赤面して顔を背けた。
「それにしても…あの二人は本当に何処に行ってしまったのか…今度ばかりは少しガツンと言ってあげないと…」
「あぁ、それなんだがな…」
こうなった以上、もう隠す必要はもう無いだろう。
リーンは蜜柑に少しすれば二人から連絡がくる旨を話した。

「遅いですね…」
「だな…」
本部近くの甘味屋で二人は団子を齧りながらこんな会話をすでに数回行っていた。
待っていれば連絡が来る、と聞いた蜜柑は「じゃあ私も一緒に待たせていただきます。」と、答えリーンと行動を共にしているのだが…
予想以上に連絡が来るのが遅くすでに日は傾きかけている。
何もせずに待っているのは退屈だったのでリーンも掃除を手伝い…それが終わってからは美味しい甘味屋があると言う事でここに来たのだがそれでも未だに連絡は来ない。
「もしかしたら今日は来ないのかもしれないな…すまないな、てっきりすぐ来ると思ったのだが…」
「いえ…私こそ掃除の手伝いまでさせてしまって…本当申し訳ありません…」
「いや、それは別にいいさ…まぁ、今日は僕は宿屋に戻るとするよ。また、明日にでも。」
「はい。それではリーンさん、また。」
「キュキュ~」
「またな。」とリーンが返事をする前に何やら可愛らしい声が足元から聞こえた。
足元を見ると小動物が足元に擦り寄っている。
「キューイ…?どうしたんだこんな所で…」
持ち上げて辺りを見回したがメイフィや他の連中はいない。どうやら一人のようだ。
「あら、可愛い…この子は?」
「あぁ、この子はキューイ。ギルドで飼ってるペットみたいな物だ。」
「きゅっきゅっ」
「あらあら…本当可愛らしいですね~こっちおいで~」
蜜柑がそう言うとキューイはすっとリーンの手を抜けて蜜柑の元へ飛んだ。
「うふふ、私は蜜柑っていうの。よろしくねキューイちゃん。」
「きゅ~」
「…。」
キューイは元々人懐っこいからキューイの行動にはあまり驚く事は無かったが…
「にゅふふ、毛が柔らかくて気持ちいいですね~」
どうやら蜜柑は可愛らしい物に弱いらしい。
この反応…キューイと一緒にいるメイフィにそっくり…いや…
「うふふ…本当にかわいいですねぇ…にゅふ…にょふふ…」
「きゅ…きゅー!!」
失礼を承知で思うが、'気持ち悪い'の一言に尽きた。
よく見ると涎が垂れているでは無いか。キューイも若干嫌がっているようにも見える。
体が涎で濡れていくのにとうとう我慢できなくなったのかキューイは蜜柑の魔の手から離れ逃げるようにリーンの後ろへと回り込んだ。
「ハッ…!し、失礼しました。お見苦しい所を…」
「い、いやいいさ…キューイは可愛いからな…ははは…」
引きながら、引きつった笑みを浮かべながらリーンはそう言った。
しっかりとした言動からあまり想像できない意外な一面であった為、そのギャップが余計にそうさせた。
「きゅー!きゅー!」
と、そうした所でまたしてもキューイがさっきよりも少し大きい声を出した。
何かを伝えようとしているのか、尻尾を見せびからす様に振りながら…
「…ん?」
よくよく見るとキューイの尻尾にリボンが付いている。
メイフィ辺りが付けてあげたのかと、キューイを改めて持ち上げてそのリボンをまじまじと見つめると毛皮に若干埋もれて解りにくかったが小さな紙が一緒に巻きつけられていた。
紙だけを引っ張って取り出して中を見ると…見覚えのある字が目に入った。
「リーンさん、それは?」
「…あの二人の居場所が解ったぞ…」
それは紛れも無く藍とキーリからの伝言であった。

場所は変わってヘネシスの町…から、少し外れた小さな空き家。
元々ヘネシスの居住区は現在よりも少し大きかったらしい。だが、魔物の活性化によって手放さずを得なかった場所がいくつか在ると言う。
この空き家もその一つだった。その証拠に空き家の前には鎮座するように他のキノコ型の魔物より一回り以上大きな魔物が立ちはだかっていた。
「ママシュ」と呼ばれているその魔物はその名前と見た目の通りメイプルキノコ達の母と言われている魔物だ。…実際はどうなのか解らないがメイプルキノコをそのまま巨大化させたような魔物はまるで彼らの親のように見えるのは無理は無い。
「ここに隠れていてくれ。」
茂みに隠れていた二人と一匹だったがリーンがそう告げると蜜柑はキューイを抱いて小さく頷いた。
それを見て即座にリーンはママシュの前に躍り出た。
気が付いたママシュが戦闘態勢を取る…前に地を滑るように一閃。
図体は非常に大きいが所詮はメイプルキノコが大きくなっただけのような魔物だ、あまりにも呆気なくママシュは断末魔の声を上げて倒れた。
二刀を鞘に収めて蜜柑の元に戻ろうと背を向けた瞬間、倒したつもりだったママシュの眼が怪しく光った。
「リーンさん!危ない!!」
「なっ!?」
気づいた時には遅い。巨体は既にリーンの眼前まで迫っており…リーンの体は衝突の衝撃で大きく突き飛ばされた。
「くっ…仕留め損ねたか!!」
なんとか受身を取ったリーンは再度二刀に手をかけて抜刀した。
再度ママシュに向かって挑みかかろうとした時、目の前に蜜柑が躍り出た。
「なっ!!危ない!!下がれ!!」
言葉は届かなかったのか蜜柑は下がる事無く、寧ろママシュに向かって距離を詰めて行った。
丸腰で目の前に現れた女性を当然ターゲットにしない訳は無い。ママシュの視線はもうリーンから外れ目の前にいる蜜柑にだけ向けられていた。
そして、蜜柑が数メートル手前にまで瞬間、このタイミングを狙っていたのかママシュは再び飛び掛った。
(くそっ!間に合わない!!)
自分ならともかく女性があの一撃を受ければきっとひとたまりも無い。やや覚悟したようにリーンは少し目を伏せたが…
次の瞬間に聞こえてきたのは蜜柑の苦悶の声では無く…紛れも無くママシュの断末魔であった。
「なっ…」
蜜柑を見るといつの間に手にしていたのか蜜柑の身長並みの大きさの錫杖が握られていた。
「甘く見ないで欲しいですね。私だってこう見えて'アマテラス'の一員なのですから。」
「…そうだったな。忘れていたよ。」
アマテラスの活動は'守護陣'の修繕、そして…魔物討伐。
ともなれば彼女だって当然戦う術は持っているのは何もおかしくは無い。
「武器を持ってるようには見えなかったからな…てっきり戦えないとばかり思っていたよ。」
「流石にこんな物を常に持っていますと疲れますからね…普段はこうしてるんですよ。」
そう言って彼女は錫杖を持っている手を離した。持ち主を無くした錫杖はそのまま地面に落ちる…事無くその空間から消滅した。
「どういう機構になっているかは企業秘密ですけどね。こうすれば重い物を常に持っている必要もありませんし…それに…」
「それに?」
「こうやって油断させておけば魔物も楽に倒せますからね。」
「…。」
やはり姉妹なのだろうか。確かに合理的ではあるのだが…
(汚いな…)
そう思わざるを得ないリーンだった。

障害を排したリーン達は空き家の前に立った。
キューイが持ってきたあの紙…それは自分達の居場所が書かれていたのだが…まさかこんな所に隠れている等想像すらしていなかった。
「あの子達ったらこんな所に隠れていたんですね…全く…」
どうやら蜜柑も同じ感想のようだ。ここに確かにいれば人に見つかることは無いかもしれないが、外には魔物が大量にいる。こんな所にいたら眠る事すら難しいのは明白だった。
ともあれ、リーンがドアを軽く2回ノック。程なくして、ドアが開き中から藍が小さく顔を出した。
「あ、リーン君!よかった~手紙ちゃんと届いたんだ!」
「あぁ…何とかな…それから藍、お前に客人だ。」
「客人?誰かな?」
そう聞くと藍は顔を少し外に出して辺りを見渡し…
「こんばんは。藍ちゃん。」
やや顔が怒っている、蜜柑の姿を目があった。
「…お、お姉ちゃん…?な、何でここに?」
「リーンさんに貴方達の居場所を教えてもらったのよ。…今回はちょっと勝手が過ぎたんじゃないかしら?」
返答の代わりに返ってきたのはバタン、と勢いよくドアが閉まる音と、カチャリ、と鍵を掛けた音だった。
「お、おい藍!!別にアマテラスはお前を処罰する事はないんだぞ!だから出てきても…」
「リーンさん。少し後ろに下がっていてくださいね。」
「へ?」
言葉の意図を理解する前にリーンの耳に大きな衝撃音が響いた。
ドアは真っ二つに割れており、蜜柑の手には先ほどの錫杖が握られている。どうやら扉をそれで破壊したらしい…
「リーンさん、私はちょっとあの子達を'軽~く'お仕置きしてきますので…そこで待っていてくださいな。」
そう告げてニコりと笑った蜜柑の顔は今までみた何よりも迫力があり…
「は、はい…」
リーンは蛇に睨まれた蛙の気分でそう答えることしかできなかった。
「改めてこんばんは。藍ちゃん、それにキーリ。」
「げぇっ!?み、蜜柑さん!?」
「お、お姉ちゃん…こ、これには訳が…」
「言い訳は無用です!貴方達はまた勝手な事して!!」
「ま、待ってお姉ちゃん!!うぅぅぅ!!リーン君の裏切り者ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「や、やめてください蜜柑さん!そ、それだけは、やっやめてぇ!!」
なるほど、二人が逃げていたのはこういう事だったのか。とリーンは一人他人事のように…実際他人事であるのだが、納得していた。
彼女達は別にアマテラスから処罰される事が無いのは初めから解っていたのだろう。ただ恐れていたのは'勝手な事をした'事に対しての蜜柑からの'お仕置き'。
藍とキーリの断末魔の声を聞いて、リーンは背を向けて呟いた。
「えーと…なんか、すまない…」
辺りはすっかり暗く、星はいつもよりも綺麗に輝いて見える。
中でも取り分け強く輝いている星が二つ、リーンが見ている傍で消えた。…ような気がした。

「…何したんだ?」
「ふふふ、企業秘密です。」
阿鼻叫喚の声が収まった頃合を見てリーンが空き家に入ると目に映ったのは正座をしている藍とキーリの二人。
彼女達の目に光は無く、うわ言のように「ごめんなさい、ごめんなさい」と只管呟いている。
この様子だけ見るとホラーだな…とリーンは思った。
「えっとですね…度重ねて申し訳無いのですが一度この子達をアマテラス本部まで連れて行ってもいいでしょうか?」
「本部まで…?」
やはり何かしらの処罰があるのでは無いか、とリーンは聊かの不安を覚える。
それを察したのか蜜柑は首を横に二度振った。
「あ、勿論処罰されるといった事はありませんよ。ただそれとは別に総帥も一度話を聞かせて欲しいという事でしたので…貴方も是非という事でしたので、一緒に来てもらえませんか?」
「構わないが…」
「では、早速向かいましょう。ほら二人とも今日はまだ優しい方だった筈でしょう?早く立ちなさい。」
「「はい…」」
蜜柑から声を掛けられた瞬間二人はビクっと少し身を震わせたがやがて力なく返事をして立ち上がった。
普段の二人からは本当に想像できない光景である。本当に何をされたらこうまでなるのか…
リーンは何とも言えない表情で蜜柑の方を見ると…
「どうかなさいましたか?リーンさん。」
「い、いや。何でも無い…」
怖いぐらいの満面の笑みでそう言われてしまい、結局彼は何も言う事ができなかった。
結局二人はアマテラス本部に到着して再び蜜柑に一言言われるまでずっとこの調子で何も言わずにまるでゾンビのように歩いていたという…

「ここに総帥がいらっしゃいます。どうぞお入りください。」
「あぁ…」
アマテラス本部内の扉の前にリーン達は立っていた。
アマテラス本部に無関係の自分が入れるのか?と思っていたが本部の門の前にいた人物に「私の知り合いです。」と蜜柑が一言告げるとあまりにも呆気なく、身体検査やそういった類の事もされる事無く中に入ることが許された。
余計な手間が省けたのは在り難いが仮にも重要組織としてそれはいかがな物かとリーンは思ったりもしたのだが…
「どうかなさいましたか?」
「いや、ちょっと緊張してな…」
現在リーンが不安に思っている事はそんな事では無かった。
あのアマテラスの総帥なる人物。一体どんな人間なのか…そう思うとリーンは直前にして今更な不安を覚えているのであった。
自分が敬語も禄に使えない口の悪い人間である、という事はリーンは自覚している事だ。流石に今回ばかり不慣れな敬語を使った方がいいだろうか。
いやいや、それでは逆に不審な人物にも見えるかもしれない…等とリーンの頭は珍しく少しばかりパニックに陥っていた。
「大丈夫ですよ。総帥は厳しい方ではありませんし…寧ろとても可愛い方なんですよ。」
「可愛い、ね…」
可愛げがある人物という事だろうか。どちらにせよ普段から接しているであろう蜜柑はこれといって緊張する事無くいつも通りの様子を見せている。
自分の考えすぎなだけであろうか…ともかくここに来て今更後には引けない。リーンは意を決して扉を開けた。
「お初にお目に掛かります。ギルド『Assemle』のマスターを務めているリーン=クルシモと申します。この度はこ、このような場所にお招き頂き真に光栄で御座います。」
入ってすぐリーンは膝を付き、頭を大きく下げて挨拶をした。
考えた末のリーンの決断は「不慣れな敬語を使う」という事。既に舌が回らなくなりつつあるがこう始めてしまった以上もう後には引けない。
意地でも最後まで敬語を使い切ってやる。そんな覚悟をリーンは内心で固めた。
「ご丁寧に有難う御座います。どうか、お顔を上げてください。」
透き通るような高い声が部屋中に響いた。
すっかり男性だと思っていたが意外にも相手はどうやら女性のようだ。とはいえ自分の知っているアマテラスの人間は女性ばかりなので元より女性が多い組織なのかも知れない。
なので、リーンはその事にはさして驚くことは無かった。
「はい。恐縮で御座いま…す…?」
そして、顔を上げた瞬間にリーンの顔は驚いたような、呆気に捕らわれたような表情へと面白いぐらいの変貌を遂げた。
確かに彼は総帥が女性だった事には驚かなかった。だが、これは…
「どうかなさいましたか?」
「こ、子供…?」
リーンの目の前で疑問の表情を浮かべる人間は…紛れも無く、きっとリーンや他のギルドメンバーよりも幼く、可愛らしい少女であったのだ。

「おい蜜柑…この子は何だ?もしかして総帥のお子さんか…?」
余りにも想像を超えた姿の人物が目前にいたためリーンは堪え切れずにすぐ隣にいた蜜柑に小さな声でそう聞いた。
「いえ…この方は…」
「おー黎魅ちゃん!相変わらず可愛いねぇ!!」
と、そういって黎魅と呼んだ少女に駆け寄って抱きついたのはいつの間にか復活していた藍であった。
「藍さん!もう、何処に行っていたんですか?ずっと探していたんですよ?」
「ごめんねぇ…どうしてもお姉ちゃんの魔の手から逃げないといけなかったの…聞いてよ黎魅ちゃん。お姉ちゃんったらまた私を苛め…」
「人聞きの悪い事言わないの!それに藍ちゃん、総帥に向かって失礼でしょう!?」
「総帥だなんてそんなかしこまっちゃって~お姉ちゃんもいつもみたいに黎魅ちゃんって言えばいいのに…」
「うっ…と、時と場合ぐらい弁えなさいって言ってるの!!」
「まぁまぁ二人とも…ほら、お客様が困っているじゃないですか…」
「…。」
そんな3人のやり取りをリーンは呆気に捕らわれて見ていた。
そして何より蜜柑は確かにこう言った「総帥に向かって失礼でしょう」と。
と、いう事はこの幼い子は紛れも無く…
「ま、驚くのは無理ないわなぁ…アンタの想像通りあの方こそアタシ達アマテラスの総帥、熨斗亞 黎魅(Reimi=Nosia)様だよ。」
リーンの疑問に答えたのはこちらもいつの間にか復活していたキーリが答えた。
こんな小さな子が?本当に?嘘だろう?頭で事実の処理が追いつかず尚も呆然としているリーンに気づき黎魅はペコりと小さく頭を下げた。
「では改めまして…このアマテラスの総帥を務ませて頂いている熨斗阿 黎魅と申します。初めまして、リーン=クルシモさん。私達は貴方を歓迎します。」
「あ、あぁ…」
「それから貴方の想像は少し正解です。私は先代の総帥の娘なのは間違いありませんから。」
「そ、そうなのか…」
ニコッリと無邪気な笑顔を向ける彼女の姿に、リーンは最初に決めた覚悟など等に忘れて相変わらず呆気に取られた表情のままそう答えた…

「…こ、これは失礼しました…えー、本日もお日柄もよく…あー…えー…まさかあのアマテラスの総帥なる人物が、えーと、こんなに…」
今更取り繕うように敬語を再び使い始めたリーンだったがもはやグダグダの一言に尽きた。
言葉を選ぶよりも先に声が出てしまい最早自分でも何を言ってるかよく解らない。
「'こんなに子供だとは思っていなかった'ですか?あはは、無理も無いですよね…」
「も、申し訳有りません…」
「いえいえ、いいんですよ。最初は皆そういう反応をしますから…」
そんなリーンの様子を気にすること無く彼女は笑ってそう言って見せた。
「それから…言葉遣いも普段通りで構いませんよ。私は貴方よりも年下な訳ですから…」
「し、しかし、だな…」
「私の事は妹だとでも思ってくれればいいのですよ。あ、何でしたら『お兄ちゃん』とでも呼ばせて頂いてもいいでしょうか?」
「い、いやそれはいい……ならばお言葉に甘えさせてもらう…」
「はい、それでお願いします。」
そういってまた彼女は笑った。
相手はまだ子供だというのにすっかり会話のペースを彼女に握られてしまっている。
だが、その事をどうこう思う以前にリーンが思ったのは「見た目以上に…寧ろ藍達以上にしっかりした子だ」という事だった。
「それで、今回僕を呼びつけた理由は何だろうか?それを聞かせて欲しい。」
「あ、そうですね。えっと、その前に申し訳ありませんが、まずは何故二人が貴方のギルドに所属する事になったのか…それを少し聞かせて頂けませんか?」
「?あぁ…構わないが…」
予想外の質問をされてリーンは戸惑いの表情を浮かべた。
今回自分がこの場に呼ばれたのは間違いなく「二人がギルドに加入している」という事についてだろうとは勿論理解していた。
そのためリーンの予想は、「二人がギルドに入っているのは規定では何ら問題は無いが業務に支障が出る可能性もやはりある為二人をギルドから脱退させて欲しい。」と、いった所では無いのだろうかと思っていたのだ。
黎魅の質問の意図がよく理解できなかったが…リーンは事実のみを簡単に話し始めた。
アマテラスは人員不足なのは否め無い為協力してくれる人物を探していた。
更にアマテラスは資金面も芳しく無く…協力する代わり報酬は払えない為タダ働きしてくれる人間を探していたという事。
その事を踏まえて「構わない」と言ったのは自分が率いる「Assemble」のギルドだったという事。
だがそれではやはり申し訳ないと藍が自分もギルドに参加してギルドの一員として働く事によってギルドの信頼を上げる手伝いを申し出てくれたという事。
その後成り行きで藍の知り合いであるキーリもギルドに加入したという事…
実際はあれやこれやと藍が茶々を入れた為話はもっと長くなってしまったが話が脱線する度に黎魅は笑ってそれを聞いてくれていた。(無論、蜜柑がその度に藍を軽く叱ったのだが)
そして、話が終わると、「解りました」と一言言って黎魅は頷いた。
「わざわざ有難う御座いました。とっても面白いお話を聞かせてもらって楽しかったですよ。」
「喜んでもらえたなら何よりだ…それで、この話がどうかしたのか?」
「あ、それはですね…リーンさん、つまりギルドは人数が多ければ多いほどギルドにとって有り難い事、と思ってもいいのでしょうか?」
「む…まぁ、そうだな…人数が多すぎると統率を図るのは苦労するが…僕のギルドはまだ人数はかなり少ない方だ。人数が増えてくれるならばそれに越した事は無いな。」
「なるほど…でしたら、蜜柑さん。」
「はい。」
「貴方はこれからリーンさんのギルドに加入してリーンさんのギルドの為に働いて欲しいと思うのですが…お願いできませんか?」
「勿論大丈夫ですよ。了解しました。」
「げっ…だ、駄目だよ!!お姉ちゃんがギルドに入るなんて絶対駄目駄目!!」
「うわ…そ、そうですよ蜜柑さん!貴方はもっと他にやるべき事が…」
「…二人の思ってることが丸解りなんですけど、一応理由を聞いておきましょうか…?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!ど、どういう事だ?」
余りにも想像できなかった方向に話が進んでいきリーンは思わずそこで話を遮った。
すると、黎魅は少し申し訳なさそうな表情を浮かべてこう話し出した。
「あ、すみません勝手に話を進めすぎましたね…貴方もご存知の通り確かに私達の組織は人員も金銭も余りあまり多くはありません…組織の一員にも満足するほどの給金を差し上げられていないのが現状です…」
「「うっ…」」
そういって申し訳無さそう表情で視線を明後日の方向にずらしたのはキーリと藍の両名だった。この二人がギルドに加入したのは「申し訳無いから」の気持ちだけでは無かったからであろう。
流石の二人も小さな子にこんな顔をさせてしまうのは良心の呵責に苛まれるようだった。
「そして協力して下さっているリーンさん達にも何一つ差し上げれる物も無くて…協力してくれる方々がいると聞いた時からずっとそれを気に病んでいたのです…」
「いや…藍にも始めに言ったが何も気にする事は無い。貴方達がいてくれるおかげで僕達は安心して眠れる場所がある。そんな貴方達に協力をするのは僕達に取って当然の事だとも言える。」
「そう行って下さるのは本当に嬉しいです…ですが、やはりそれでは私の気が済まないのです…そして先ほどリーンさんのお話を聞いてピンと来たのです。そちらの人員が増える事でリーンさん達に恩を返せるというのならば…と。私の、いえ私達の気持ちを受け取って下さいませんか?勿論我々の業務の事もありますから常にリーンさん達の為に動けるという訳では無いのですが…」
「いやそんな事は勿論は構わないが…だが…いいのか?ただでさえ人数が少ないのだろう?貴重な人員を僕達の為に使うのは…」
「元々守護陣の修繕で私達は各地に飛んでいる事も多いですから…その行き先でそちらの依頼を引き受けるぐらい何一つ問題はありませんよ。そうですよね?」
そう言って黎魅は既に経験者の藍とキーリに顔を向けた。
「まぁ、守護陣の修繕は割りとすぐに終わるしね~出先でギルドの依頼を少し引き受けるぐらいは全然問題ないかな~」
「アタシは魔物狩りのついでだけどね…」
「だからって先輩は事ある毎に私呼びつけるのはいい加減やめてくださいよ!どこの戦闘民族なんですかアンタ!!」
「アッハッハ、出来のいい後輩を持ってアタシは幸せ…」
「何回目ですかその台詞は!!」
「…まぁ、こういう事です。こちらの業務に支障をきたす事を有りませんのでお気になさらず…あ、勿論リーンさんがよろしければの話なのですが…」
「いや、勿論大丈夫だ。心遣い、本当に感謝する。」
ここで断るのは寧ろ失礼なのだろう。リーンはこの幼い総帥が計らってくれた厚意を有り難く受け取る事に決めた。
「では、私は少し準備をして参りますね。ふふ、リーンさんまた後ほど。それから藍ちゃんもキーリも…文句は無いですよね?二人とも?」
「「全然ありません…」」
最後の言葉の迫力に負けたのか二人は声を揃えてそう答え、蜜柑は満足そうに別室へと歩いていった。
「それでは、リーンさんこれから3人をどうか宜しくお願いします。もしリーンさん達に何かありましたら遠慮無く私達に言ってください。大した事はできないかもしれませんが…アマテラスは全力で貴方を援助させて頂きます。」
「何だか…逆に気を使わせて済まないな…有難う、黎魅…」
「いえいえ、こちらこそ。これからもお互い良い関係を築いていきましょう。」
そういって差し出された手をリーンは握った。
強く握れば壊れてしまいそうなぐらいか細いこの手にアマテラスの全てが掛かっている…それを彼女はどう思っているのか解らないが…
この少女の為にも今まで以上に自分達も協力をしてやらねばならない、リーンはそう強く思った。

※キャラ紹介に「Mikan=Suzune」を追加しました。

mikan.png
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COMMENT

ブサイクwww

vLT36nP0
ちょっと聞いてくれよ、昨日会った
A○B48にいそうなブサイクwww
まじブサイクwwwww
でも舐めさせるだけで金貰えたからいいはwww
http://33kT82r9.akb4488.info/33kT82r9/

| B専 | 2012/11/15 19:46 | URL | ≫ EDIT

>B専
そうブサイクブサイク言ってやるな。
A○B48はよく知らんが彼女達もきっと普段頑張っているんだぞ。

それはそうとここは健全な日誌だからな。
ナニを舐めさせたかは知らんがな・・・

| LeanKurusimo | 2012/11/19 23:27 | URL |















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