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迷子と再会と。

「兄さん!早く早く!!」
「はいはい…ちょっと待ってくれよ…」
澄み渡った空気が包んでいる町で二人の人間の姿が見える。
一人は無邪気な目を爛々と煌かせている少女と、その少女を少し困ったように…それでいて優しい目で見ている青年の姿だった…

彼ら二人、ドロシー=シーロックとシカフ=ヤットレイがこの武稜の町に到着したのはほんの数分前の出来事だった。
本来ならばドロシーが一人で訪れる予定であったのだが何故、それにシカフが付いて来ているのか…それは一言で言えば彼の過保護だ。
しかしながら、まだ幼い少女であるという事、自分が長年世話になって来た家の一人娘、自分の妹と同然の存在…彼がドロシーに対して過保護になってしまうのも当然の事と言えよう。
正直言って、彼はドロシーが旅をするという事を内心良くは思っていなかった。旅と言えば楽しく、心が踊るようなイメージがあるがそれと同じぐらい危険を伴い、何があるか判らない事である。
そんな事、まだ幼い少女のドロシーにして欲しいなど彼は当然思えるはずがなかったのだが…そんな事ドロシーが言っても聞くはず無いとは判りきっている事だった。
…いや、そういう訳でも無いか。シカフがドロシーに家に帰れと言った時彼女はこう言ったではないか。

『兄さんが帰るまで私も帰りません!!』

ドロシーがもし家に帰るとするならばそれは自分も再びあの家に世話にならないといけないという事だ。
それ自体は非常に容易く、簡単な事であるのだが…ただでさえ迷惑を掛けているあの家にこれ以上自分が迷惑を掛けるというのはシカフ自身が許すことができなかった。
ドロシーを家に帰したいのならば自分も帰らなければならない。
だが、それができない以上彼が取る道は「何があってもドロシーを守る」という道しか他に無かった。
そんなドロシーがギルドに入った際に決意した事に乗っ取り、彼はこうしてはるばるドロシーと共に武稜の町へとやってきたのであった。

「わぁ~…ここの人たちって何だか変わってるね~」
「あぁ、そうだな。」
武稜に住んでいる人達は主に獣人が多い。リプレにもハーフブリンガーと呼ばれる獣人がいるがそれとはまた別で、こちらに住む人はパンダのような風貌をしている。
シカフは何度か武稜に訪れた事があるためさほど新鮮味は感じていなかったが、初めて訪れたドロシーは楽しくてたまらないという様子で街中をキョロキョロと見回しながら歩いている。
「ほら、ちゃんと前見て歩け。あんまりキョロキョロしてると転ぶぞ?」
「むぅ!そんな事ないもん!」
顔を少し膨らませて少し怒ったドロシーの様子に思わずシカフは噴出す。
それを見てドロシーは更に不機嫌そうな顔になった。
「本当だよ!絶対に転ばないもん!!私、そんなに子供じゃないですー!」
「ハハッ…悪い悪い。そうだな…」
そんなドロシーの頭を愛おしくて堪らないと言った様子でシカフは軽く撫で回した。
ドロシーはまだ納得してなさそうな顔をしていたがこれ以上怒らせる事もしたくなかったためシカフは話題を逸らすことにした。
「それで?ドロシーはどこか行きたい所とかあるのか?この町なら俺は何度か訪れてるからある程度なら案内できるぞ?」
「ん。うーん…えっとねー…」
どうやら特に行きたい所というのは考えていなかったらしい。
うーんうーんと小さな声で唸るドロシーを見てシカフは苦笑した。
だとすると、何処か適当に歩いて気になる所があればそこを見ていく様にしようか…と考え、少し辺りを見回した所でシカフは思ったよりこの町の事を知らないという事に気づいた。
ある程度なら案内できる、と言った手前やや気恥ずかしい物があったがここに訪れるのは主に魔物狩り目的であった為観光として訪れた事は思えば一度も無かった。
自分が知っている所といえば体を休める宿屋と、魔物狩りの必需品の薬を売っている店…そのぐらいしか思いつかなかった。
今、自分が見ているそこの小道を入った先に何があるのか…思えば全く持ってシカフは知らなかった。
これは案外自分も楽しめる観光になるかもしれないな…そう思ってシカフは視線をドロシーに戻した…筈だったのだが。
「あれ…?」
いない。さっきまでそこにいたドロシーは少し目を離した隙に忽然を姿を消してしまっていた。
「はぁ…確かに転んではいないみたいだが…」
少し目を離した隙にいなくなる等、子供同然ではないか。
シカフは肩を落として溜息をつき、足を動かし始めた。

「あぁ、クソ何処に居るんだ…?」
シカフがドロシーを探し始めて彼是30分程経過していた。
すぐに見つかるだろう、と軽い気持ちで探し始めていたがどうやらこの町は自分が想像している以上に広いらしくその考えは間違いだという事を彼は思い知らされていた。
(流石に、町の外には出てはいないと思うが…)
今回の目的は魔物狩りでは無く観光とは行く前にドロシー自身が言っていた事だった。
だとするならば今も町の外ではなく町の中にいるはずだ。流石にドロシーは自ら魔物退治をやりたがるような何処かの女装趣味の様な性格では無い。
別に物騒な町などでは無く平穏、平和な町だ。その中にドロシーがいるとするならばシカフが心配するような要素など一つも無いはずだがそれでもやはり彼は気が気では無かった。
だが歩き続けて、探し続けてもその焦りは蓄積するばかりかもしれない、そう思ったシカフは一度頭を冷やすため、動かし続けていた足を止めた。
こういう場合ドロシーは何処に向かって行くか…初めてきた土地で何があるか判らないドロシーが何処か目的地を決めて真っ直ぐにそこに向かう事はまず在りえない。
と、なれば遠くからでもよく見える建物、その建物が何なのか判っていなくとも目立つ建物ならばそういった所に向かって歩いていく可能性も高いのでは無いだろうか。
シカフはその場で首を動かし何かそういった建物は無いかと探す…すると、それは思った以上に早く見つかった。
「あれは…」
シカフが目を留めたその先には巨大な塔が堂々と建っていた。

(こんだけ目立つのに全く気が付かなかったな…俺とした事が…)
自分がどれだけ焦っていたのかを自覚して彼は内心で毒づいた。
これだけ大きな建物であるのならば町の中なら勿論、町の外からでも見える筈だというのに彼は全く持って気が付くことができなかった。
ともあれ、彼はその塔を目指し只管に歩く。
その距離が近づけば近づくほど「セイッ!」やら「ハッ!」やら何か、掛け声のような声が聞こえて来た。
(なんだこの声…?)
考えながらも更にシカフはそこに向かって足を動かし続ける。その声は段々と鮮明にそして大きくなっていく。
そして、シカフがその建物の目の前に到着した時、それが一体何なのかようやく'思い出す'ことができた。
(ここは確か…あの武稜道場って奴か…?)

武稜道場。
その名前の通り格闘技の稽古、練習、鍛錬等を行う場所だ。
ただ一つ、特異な点を上げるとするならばそれは流派というものを持たないという点。
この道場で教えるのは一つの流派の格闘技では無く純粋に魔物退治にのみ突出した技術を教えている。
そのためここでの修行は対人では無く対魔なのである。道場の中には飼いならした魔物が大量におり門下生はそれを相手に日々鍛錬をしているらしい。
そしてもう一つ、この道場が世界に渡って名を知られているのはもう一つ理由があった。
それは道場で飼われている魔物と訪れた旅人が手合わせをできるという事。
己の技術がどこまで通用するのか、その腕試しの為にこの道場の門を叩く旅人の後が絶えないと聞く。

勿論、シカフもこの道場の名前を聞いたことは何度かあったのだが直接近くまで足を運んだのはこれが始めてであった。
どうやら先ほどから…そして今も尚聞こえ続けている掛け声は修行している門下生、または腕試しに来た旅人の声なのだろう。
(話には聞いていたが…まさかここまで大きな道場だとはな…)
遠くからでも大きさはある程度予想できていたが近くに来ればその予想を遥かに上回っていた。
見上げて頂上を見よう物なら首が痛くなる程だ。まるで天を突き抜けるかの様に堂々と聳え立つ塔にシカフは只管唖然としていた。
(…折角ここまで来たのだから俺も一つ腕試しでも…ってそれどころじゃないか今は)
自分の中に芽生えた感情を即座に打ち切る。辺りを見回してみたがどうやらここにもドロシーは来ていないらしい…
(全く…本当に何処行ったんだ…)
踵を返して道場に背を向けてシカフが歩き出そうとすると唐突に背後から軋むような大きな音が聞こえてきた。
耳障りなその音に思わず身を震わせ、振り返る…先ほどまで閉まっていた大きな道場の門がゆっくりと開き、中から一人、青年が出てきた。
獣人では無い所を見ると、どうやらこの地の人間では無いらしい。腕試しに来た旅人だろうか?
その青年は少し顔を地面に落としてゆっくりとこちらに向かって歩いて来た。
距離が段々と近づく…別に青年は自分に様があってこちらに歩いてきている訳では無いだろう。ただ、目的地の方向がこちらなだけ。
にも関わらず、シカフはその場から動く事ができなかった。理由はシカフにも判らないシカフ本人が困惑している程だ。
そして、その青年がシカフを横切り、僅かにその顔が見えた時、その理由がハッキリと判った。
(…!?)
すぐに振り返りその青年の後ろ姿を見た…少し距離が離れた場所で青年は動きを止めていた。
やがて、ゆっくりと青年はシカフの方へと振り返る、青年の顔もシカフと同じく困惑と動揺で埋め尽くされていた。
お互いに見つめあったままで固まる。長く感じたがきっとそれはほんの一瞬の出来事だったのだろう。
「あー!やっと見つけたー!!シカフ兄さん何処いってたの!?」
するとそこで場違いな声が響いた。シカフの前方、青年の後方より今度はドロシーが走ってきた。
青年は振り返りドロシーの姿を見る。シカフからは見えなかったがその表情はもはや驚愕へと変わっていた。
「シカフ兄さんは本当すぐ何処かに行っちゃうんだから!一体どれだ…け…」
ドロシーも自分を見つめる青年の視線に気づいたようだ。走っていた足を止めて、彼女もまた、困惑の表情をし…ゆっくりと口を開いた。
「う、嘘…もしかして…クロウお兄ちゃん…?」
その問いかけにクロウと呼ばれた青年はゆっくりと首を縦に振った。
そしてシカフの方へと振り返り、今度はクロウは口を開いた。
「シカフ…?シカフ…なんだよな…?」
「…あぁ…」
旅と言うのは本当に何が起こるのかわからない。
シカフが半ば諦めつつも、ずっと捜し求めていた親友との再会は偶然にそして何処までも唐突に起きたのだった。
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| 小話 | 19:30 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

お久しぶりです

Czg1U9P3
震災から1年がこんなに早くやってきた事には本当に驚かされました。
しかし、私が本当に驚かされたのはそちらではなく、
こんな衝撃的な事が、身の回りで起きている事…
我々が知らない世界は、我々のすぐ側にあるのかもしれませんね
http://5n40Al9j.7.q8a.org/5n40Al9j/

| 鳥之 | 2012/06/04 18:34 | URL | ≫ EDIT

鳥之さん>
ほう・・・どうやら貴様も気づいたようだな・・・
いや、気づいてしまったと言うべきか・・・
命が惜しいのならばそれ以上の干渉はするべきでは無い・・・この世界の真理は到底常人には耐え切れる物では無いからな・・・

| LeanKurusimo | 2012/06/05 00:42 | URL |

思わず笑ってしまった

| 名も無きあれ | 2012/06/13 18:27 | URL |

もう半月更新がありませんけど月連載ですか????

| 名も無き者 | 2012/06/15 16:54 | URL |

名も無きあれ>
な、何がおかしい!!

名も無き者>
そ、そういう訳ではないぞ…よりよい作品を皆様にお届けする為に毎日添削を繰り返してだな・・・

| LeanKurusimo | 2012/06/28 01:45 | URL |















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