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悪魔。2

「残りはアイツだけだ!やっちまえセクト!!」
「解った!!」
リプレの奥地、龍の森。
穏やかとは到底呼べない環境のその場所を二人の少年…セクトとレイは狩けていた。
今回の狩りは別に依頼では無い。単純に修行、もとい腕試しだ。
まだまだ不慣れな点はあるがここ最近のセクトの成長ぶりは目覚しい物があった。
もう一人の人格であるアレンの戦いの様子を誰よりも間近で'観'ていたのもあるのだろう、少なくともレイがセクトを自分の狩りに付き合わせても大丈夫だろうと思える程にはセクト自身の腕が上がっていた。
かと言って、レイ自身セクトに完全に背中を預けても問題無い、等といった楽観は決してしていなかった。だから、セクトに危険な状況が迫っても対応できるように目を配らせていたつもりだったのだが…
「あ…れ…?」
「!?セクト!!」
流石に、今回の事はレイは全く想定には入れていなかった。
それも仕方無いだろう。魔物に攻撃を受けた訳でも無く、道端に躓くような石が落ちていた訳でも無く…
平坦な道で突如セクトが倒れるなんて誰が想像できたというのだろうか。


「あ、あれ…?ここは…?」
セクトが目が覚めると小さな部屋の一室のベッドの上だった。
どうして自分がこんな所に寝ているのか、自分の記憶の糸を辿るがどうにも纏まらない。
少し身を起し、見渡す。この部屋には見覚えがあった…確か、リプレの宿屋であったか。
全く知らない場所にいる訳では無いと少し安心して、再度記憶の糸を辿り始めた時にドアが開いた。立付けが悪いのか、きぃぃ、と少し嫌な音が響く。
「目、覚めたか。」
「れーちゃん…?う、うん…」
入ってきた見知った友人の姿を見て、セクトはまた安心をする。
「僕、どうしてこんな所で寝てるんだっけ…?」
「お前、狩りの最中に突然倒れたんだよ。」
「え…?そう、なの…?」
「覚えてねーのか…?まぁ、いいや…いや、良くない。お前!調子が悪いんだったらどうして言わないんだ!!」
「ご、ごめん…」
レイの怒鳴り声にセクトは身を縮めて謝罪する。そして、思い出す。
あぁ、そうか。自分は倒れたんだ…でも…
「ごめん。れーちゃん…また迷惑掛けちゃったね…」
「別に。迷惑だなんて思ってねーよ。でも、調子悪いんだったら無理すんなっつってんだ。」
「うん…ごめん…」
調子が悪い訳では無かった…筈だ。
寧ろ、今日はいつもより調子がいいぐらいだった。
自分が倒れた。という事実に今、誰よりも困惑してるのは間違いなくセクトだった。
自分が倒れた理由が全くもって解らないのだ。
「で…お前、大丈夫なのかよ…?」
「う、うん、大丈夫。でもなんだかまだ眠いみたい…」
「そうか…まぁ、今日はゆっくり休んでろ。次からは調子悪かったらすぐ言えよ。いいな?」
「うん…」
それだけ言うとレイは部屋を後にした。残されたセクトは様々な考察を立てて考える。
昨日食べた物が悪かった?…多分、それは無い。
体が思った以上に疲れていた?…当日の運動量はまだ少なかったし、前日もしっかり睡眠を取った筈だ。
実は魔物から攻撃を受けていた?…体に傷は無いし、痛みも無かった。
どれもこれも理由としてしっくりこない。
考えれば考える程セクトは思考は泥沼に陥る…そして今、何よりも困惑しているのは…
どうして…こんなに眠いのだろうか…?
窓を見るにもう夜は更けているのだろう、ここに運ばれてから恐らく既にかなりの時間を眠っていた筈だ。
何が何だか解らない。自分に何が起きているのか解らない。
だが、それを思考しようにも睡魔がそれを許さなかった。やがて、セクトはぷつりと意識の糸を切り離し深い眠りに落ちた。

すうすう、と規則正しい寝息が聞こえる部屋に大きな音を鳴らさぬ様、ゆっくりと一人の人間が入ってきた。
長髪を揺らし、月明かりに照らされているセクトの体の横に立ち、彼は小さい声で呟くように問うた。
「起きているか?」
その声が掛けられた突如閉じていたセクトの眼はカッと見開き、気持ち悪いぐらいの速さで身を起し、侵入者の姿を見た。
その眼に優しい色は宿っていない、敵意、悪意、嫌悪、負を全て宿したようなその眼は普段のセクトからまるで想像する事はできない。
いや、事実セクトでは無いのだろう。
「おぉ?誰かと思ったらギルドマスター様じゃありませんかぁ…何の用だ?もしかして夜這いでも掛けに来たってか?ハハッ。」
「アレンか…」
気分が悪くなるぐらいにニヤつきながら声を出すアレンにリーンは嫌悪感を露にする。
これまでセクトと話した事はあったがアレンと実際対話をするのはこれが始めてだ。
「アンタとこうやって話をするのは始めてだったかなぁ?まぁ、俺は主さんの中から見てたからアンタの事はよっく知ってるがね…」
「そりゃ、光栄だな…」
「で、何の様だ?悪いが主さんなら今ぐっすり寝てるから主さんに用があんなら明日にしてくんないかねぇ?」
「いや…」
何気ない言葉だがそれに込められている感情は明らかに負の物だ。
長くは話していたくは無いが…リーンには何があっても話さねばならない事があった。
「今、話している事はセクトには聞こえていないという事だな?」
「あ?ま、そういう事になるなぁ?」
「用があるのは、お前だ…アレン…」
「へぇ?」
ニヤリと笑って見せた彼の八重歯はさながら悪魔の様に光っていた。

「ギルドマスター様直々に俺に用とは…光栄だねぇ本当。」
何処までも馬鹿にしたような態度。
話にならない訳では無いが…話をする気にはならない。
かといってここで彼も引くわけにはいかない。理性的になれ、そう言い聞かすように深呼吸をし、リーンは声を出した。
「単刀直入に聞くが…お前は何だ?」
「俺が何か!はっはー、哲学的だねぇギルドマスター殿!」
「茶化すな。真面目に答えろ。」
射殺すかのように鋭い視線をアレンに向けた。
それまでニヤニヤと笑みを浮かべていたアレンの表情は一変し凶悪な物へと変貌した。
「…テメェこそ何が「単刀直入」だ。まどろっこしい事言ってねぇでハッキリ言えや!ブッ殺すぞ!!」
本性を現す。といってもリーンは驚くような事は無い、そもそも本性など最初から隠してはいないでは無いか。
言葉が乱暴になっただけでその前から人を殺しにかかっているような悪意と敵意は目に見えて、耳に聞こえて、解っていた。
「…ニアという悪魔を知っているか?」
「はぁ?」
「ニア(Niar)。又はニアロン(Niaron)とも言うらしい。近く、という意味のニアー(Near)が鈍った何かしてそうなったんだろうな。」
「…それがなんだってんだよ。」
「これは図書館で見たとある本に載っていたんだが…架空の悪魔と言う事らしい。早い話…僕はお前がソレなんじゃないかと思っている。」
「…プッ…アハハハハハハヒャヒャヒャヒャ!!!!!」
笑い声というより奇声に近い声をアレンは上げた。
「こいつぁ傑作だ!!うちのギルドマスター様は架空の存在を信じちまう頭のイカれた野郎だったとはなぁ!!ヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」
「僕の頭がイカれてるんだったらそれでいい。寧ろ、そうであったほうがいい。」
表情を崩さずそう言ってのけたリーンにアレンは軽く舌打ちをした。
「で?テメェが俺がソレだと思いこんじゃってる根拠は勿論あんだろうなぁ?」
リーンは小さく頷き、口を開いた。
「コイツの特徴は固有の姿を持ち合わせていないという事らしい。だが、それ以前に最大の特徴は『人間に巣食う』と言う事だ。」
「…。」
「人間の心に入り込み、その精神を犯し、侵食し、その精神を殺して最後にはその人間に成り代わって生きるそうだ。確かに架空の存在と言われているようだが…これが存在しないと言い切れるか?」
人間の精神を殺してその人物に成り代わって生きる。この悪魔とその元の人物の性格がかけ離れた物であれば「まるで人が変わったようだ」と思うであろうが…所詮はその程度の認識で終わる。
人間の性格なんて物は生きていれば自然に変わっていく事もある。それを「悪魔の仕業」と思う方が難しいだろう。
何より、自分の見知った人間の姿形はそのままだというのにその人物は死んでいる等、想像したくも無い筈だ。
「くだらねー妄想もそこまでイっちまってたら逆に関心しちまうなぁ…だがなぁ、残念だけど俺たちはただの多重人格だぜぇ?テメェの言ってる事はただのこじ付けの妄言じゃねぇか。」
「お前たちがただの多重人格であったとしても、それはそれでおかしな点があるからこそ言ってるんだ。」
売り言葉に買い言葉。アレンの目付きは益々鋭くなりいつ武器を振り上げてきてもおかしく無い。
もしかしたら普段のアレンならそうしていたのかもしれない。だが、アレンは射殺す様な視線をこっちに向け続けるだけで動く気配が無い。
リーンはその視線に臆すること無く、アレンを見下すように見つめ言葉を続ける。
「そもそも多重人格は簡単に言えば本人に耐え難い程の精神的苦痛、肉体的苦痛…そういった物から逃避する為に別人格を作り出してしまうという物だ。レイに聞いたがセクトはそういった物とは無縁で円満な生活をしていたそうじゃないか…強いて言うならば、

セクトは自身の弱さにコンプレックスを抱いているようだが、それを克服しようと毎日努力しているセクトが弱い人間だとは僕は思えない。」
セクトは肉体的な弱さはあるかもしれないが、精神的な強さでいうならば誰よりも強い。
自身の弱さを理解してそれに向き合って努力ができる人間が弱い筈が無い…それはリーンが心から思っている事だ。
「更に言うなら、通常の多重人格はどちらかの人格がもう一つの人格を知らないという場合が多い。お前達のようにお互いがお互いをよく知っていて、さらに視覚や記憶も共有する。そんな話全く持って聞いた事が無い。」
そこまで言って、リーンは口を閉じた。視線と視線が交差して、沈黙が訪れた。
その沈黙を初めに破ったのはアレンだった。視線を逸らして、小さく呟いた。
「…お前が言ってるのは過去のケース、一般論だろ…俺達はそれに当てはまらない特殊な物なのかもしれないぜ?」
「あぁ、勿論その可能性もある。だからお前達が否定すれば僕の言ってる事はただのイカれた野郎の妄想妄言だ。」
全てを解っているような言い方をしておきながら、自身の発言を妄言であった方がいいと言うリーンの飄々とした態度がアレンには腹立たしい。
またしてもアレンは軽く舌打ちをしてリーンを睨み付け、口を開いた。
「…で?お前の言う事が仮にマジだったとして。お前はどうするつもりなんだ?悪魔祓いでも呼ぶつもりかぁ?」
「いや…そうじゃない…」
「ァ?」
「お前が仮にこのニアであったとするならば肉体を乗っ取る機会等これまで何度もあっただろう。だが、お前はそんな素振りを一切見せない。少なくとも僕にはお前達の間には絆のような物あると思っている。だから、僕はそんな誰も望んでいないような結末は迎

えたいとは思わない。」
「…散々人の事悪魔呼ばわりしといて…何がしてぇんだよテメェは!?何が言いてぇんだよ!?」
息を荒くしてアレン吼えた。
考えが読めない、何がしたいか解らないリーン物理的な手段を未だに用いていないのは奇跡に近いだろう。
リーンは少し俯いて、黙り込む。ここまで何の躊躇も無く淡々と言葉を続けたリーンがまるでそれを口にしたく無いかのように。
長い沈黙が続いたが、やがてリーンはゆっくりと口を開いた。
「…多重人格というのは一つの精神の『部分』に過ぎない。一つの肉体に何個も精神が宿っている様にも感じるが元を正せばそれは一つだ。」
ゆっくりと。
「だが、このニアが巣食っている状態は一つの肉体に無理やりもう一つの精神を捻じ込んでいるような状態だ…そして、一つの肉体に宿る精神は一つだけだ。」
言葉を紡いで。
「一つの肉体に二つの精神が宿っている状態に肉体がかかる負荷は想像以上に大きい。だから、お前にセクトの体を乗っ取る意思が無くとも…」
その残酷な事実を。
「セクトの肉体には歪みが生じて…やがて…崩壊するだろう…」
リーンは突きつけた…

「……。」
「……。」
その発言からお互い何も言わずに黙り込んでいた。
アレンも言い返す事なく、リーンも何も言わず、視線もお互い合わせず空虚な時間が流れた。
時計の針が動く音が大きく聞こえる。心臓の鼓動の様に淡々と一定感覚で動くその音がここが現実である事を証明していた。
「アホらし…。」
口を初めに開いたのはアレンだった。
小さくそう呟いてもぞもぞと彼は布団に潜り込んだ。
「テメェはやっぱイカレキチガイ野郎だわ。付き合ってらんねぇよ…もう俺も寝るから出てけ。」
「あぁ…悪かったな。こんな時間に。」
リーンは踵を返して部屋を後にした。
小さな部屋に一人取り残されたアレンにさっきの言葉がリフレインする。
『僕はお前がソレなんじゃないかと思っている。』
『最大の特徴は『人間に巣食う』と言う事だ。』
『毎日努力しているセクトが弱い人間だとは僕は思えない。』
『お前達の間には絆のような物あると思っている。』
『一つの肉体に宿る精神は一つだけだ。』
『セクトの肉体には歪みが生じて…やがて…崩壊するだろう…』
「チッ…」
頭に繰り返される言葉を振り払う。
「お前に言われなくても…そんな事、俺が一番解ってんだよ…」
自分以外誰もいないその部屋でアレンは小さく頭を抱えた。
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| 小話 | 13:34 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

イカレ野郎がわいてきたな

| 名も無き者 | 2012/01/18 14:45 | URL |

くるしもさんに待望の属性追加!
イカレキチガイ!

| 名も無き者 | 2012/01/18 15:01 | URL |

名も無き者A>
どこどこどこにいるの!?

名も無き者B>
んな属性いらねぇーよ!!

| LeanKurusimo | 2012/01/26 21:52 | URL |















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