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回想(終)

話はまた飛んで…それから2年程の月日が流れた。

「はい、これ昨日の残り物のパンね。」
「いつも有難う、おばさん。」
手渡された紙袋を持った瞬間、俺は違和感を覚える。
顔に出てしまったのだろう、おばさんは苦笑いをした。
「少ないでしょ?ごめんねぇ…」
「あ、いや…」
慌てて取り繕おうとしたが既に手遅れだった。
だが、手に持って解る位に紙袋が軽いというのは事実、気になった俺は少し遠慮しつつも聞いた。
「…何かあったの?」
「えぇ、ちょっとね…これ。」
そのどんよりとした表情でただ事では無い事が一目見て解った。
手渡された紙を読んでみるとドキリとするほど堅苦しい文体で文字が書かれていた。

『先日、村の外で凶悪な魔物が歩いているのが発見されました。
 幸いにも今のところ怪我人が出ておりませんが、魔物がいなくなるまでの間は村の外に出るのを極力控えるよう御願いします。
 尚、魔物の討伐は既に依頼の申請をしております。』

噛み砕くとこんな感じの文だったか…
ともあれ村の外に凶悪な魔物が発見されたらしい。
「それが原因でねぇ…小麦とかが外から持ってこれなくなっちゃったのよ。本当にごめんなさいね。」
「いや…そうとも知らずパンを貰いに来ちゃってごめんなさい…」
まさかそんな事になっているなんて知らなかったとは言え図々しくもパンを貰ってしまった自分を恥じた。
俺は手にした紙袋を返そうと右手を突き出したが…
「いいのよ。どちらにせよそれはもう処分しないとダメだから…処分するぐらいなら食べてもらった方がこっちも嬉しいわ。」
「でも…」
「いいから持って行きなさい。それより貴方達いつも森で木の実とか取ってるでしょう?そこにも魔物が出てくるかもしれないからしばらく森に入るのはやめておきなさい。いいわね?」
「あ…うん、解った。有難う!!」
その言葉である事を思い出した俺はそそくさと店を後にした。

月が流れて俺もすっかり村に馴染んでいた。
ただクロウの後ろに着いていた2年前とは違い、俺は1人でも大体の事をこなせる様になった。
最近はクロウは村の人のあらゆる手伝いをこなす事が中心になっており食料調達は俺がほとんど1人でやるという事も多かったのだが…
今日に限ってはクロウは朝から森に木の実を取りに行く事になっていた。
まだクロウが森に向っていない事を祈って俺は駆け足で公園へと戻った。

今となっては少し窮屈になってしまった遊具の穴をくぐって中に入るとそこにはまだクロウがいた。
険しい表情で何かを読んでいるようだが…ひとまず俺は安堵の溜息をついた。
狭い遊具の中を赤子のように四つん這いで歩きクロウに近づくと見覚えのある文字が目に入った。
「…何だか物騒だよね。おばさんもそれで小麦が持ってこれないからあんまりパンが作れないんだってさ。」
「そうか…」
「あと、森の中にも魔物が出るかもしれないからしばらく森には入らないほうがいいね。まだ木の実のストック結構あったと思うし…」
紙袋をクロウの目の前に置いて少しまた這って歩き隅っこに置かれている布の袋を開けた。
袋いっぱいに木の実は詰まっていたが、1個1個は小粒程度の大きさだ。これではあまり長く持たないだろう。
「うーん…節約すれば3日ぐらいは大丈夫かな…」
おばさんは頼りにできないし森に入るのも危険な状況だ、魚を取りに行くにしてもどうしても村の外に出ないといけない。
魔物の討伐がいつ行われるかも解らない。これだけで凌げるかどうか不安だ、場合によっては水だけの生活も覚悟しないといけないかもしれない。
これまでも水だけで数日過ごした事はあるにはあったがあまりやりたい事では無い…
思わず溜息を付き、クロウの方へ向きかえったがクロウは変らず険しい表情で紙を睨んでいた。
「…クロウ?」
「え?あぁ、そうだな…」
どこか抜けているような返事をしたため俺は呆れたような顔をした。
しかし、いつものクロウらしからぬ態度に俺は疑問を抱いた。
「まぁ、少しの間なら大丈夫だろう…なんとかなるさ。」
そう言って、クロウは立ち上がり背伸びをして穴の方を見つめた。
「何処か行くの?」
「あぁ。森に入るわけにもいかねーし村の人の手伝いでもしてくるよ。」
「じゃあ、僕も行くよ。今やれる事は無いし…」
「いや、お前は休んでろ。食料は少ないし二人揃って動き回って腹減らす事はないさ。」
立ち上がろうとした俺をクロウは言葉で制した。
心なしかその語気は強く感じたが…クロウの言う事も一理あると思った俺はそれに黙って頷いた。
だが、返事は無く…クロウは何も言わずに外へと出て行った。
何か決意を固めたようなその表情。いつものクロウからは凡そ想像できない程だった。
今、思えばこの只ならぬ様子のクロウを俺は引き止めるべきだったんだ…

「クロウ?いや…ここには来ていないが…」
「そうですか…有難うございます…」
日はもう傾き落ちかけている。
辺りはすでに黄昏ておりこの橙が黒へ移り変わるのももう時間の問題だ。
カアカアとカラスの鳴く声も心なしかいつもより大きく聞こえ俺の焦燥感を掻き立てている。
クロウが出て行ってかれこれもう数時間も経つがクロウは一向に公園に戻ってくる事は無かった。
ただ村の手伝いが長引いているだけなのかもしれないが…気持ちが悪くなる程の不安に襲われた俺はたまらず外へ飛び出して村までやってきた。
先ほどから村の人に片っ端からクロウを知らないか、と聞いているが誰に聞いてもその答えは同じだった。
もう、聞いた人より聞いていない人を数える方が早いぐらいだ。クロウが何処に行ったのか全く目星が立たず俺はその場で頭を掻き毟った。
そこで、はたと一つの可能性に行き着く。
「…まさか…?」
俺はその可能性は恐らく自分の杞憂だろう。いや、杞憂でないと困る。
俺は村の出口に顔を向け、しばしそこに立ち尽くし…気がついたらその方角へ駆け出していた。
危険なのは重々承知している。だが、そんな事を考えていられる程の余裕はもう俺には残されていなかった。
頼むから杞憂で合って欲しい。そう祈りながら俺は走った。

村の外へ出た事はこれまで何度かあったが、夜に出た事は数える程しかない。
夜の闇は見知った道を包み込み不気味な雰囲気を醸し出していた。
「クロウ!!!いるの!?」
大きな声は魔物をおびき寄せる、そんな当たり前な事すら俺は忘れて叫び、走る。
そうしながらどの位走っただろう。自分の良く見知った格好の人物はようやく見つかった。
全身血だらけでボロボロになった姿が…
「クロウ!?大丈夫!?クロウ!!」
体を揺らして呼びかけるとクロウは目を少し開いた。
どうやら息はあるようだ。ひとまず俺は安堵した。
「シカ…フ…なんで…?」
「それはこっちの台詞だよ!!村の外は危険だって解ってる筈でしょ!?」
「ダメ…だ…逃げ…ろ…シカフ…!」
「えっ…?」
クロウが見ている方向、俺の背後。
振り返ると、見たことの無い巨大な魔物がそこにいた。
猪のような姿をしたそれは赤い瞳をギラつかせジっとこちらを見ている。
逃げないと不味い、頭では解っているはずなのだがその瞳から俺は目を離す事すらできない。
永遠のようにも感じたが、睨み合いはほんの一瞬だったのだろう。俺達に向けて魔物はその牙を向け突進をする。
50、30、20、10m…文字通り一瞬だ。その速さに俺は回避行動はおろか覚悟を決める余裕すらも与えてもらえない。
そして、すぐ目の前まで迫ったその時、突如巨体は何かに弾かれたかのように横に飛び、倒れた。
早すぎる展開に理解が全く追いつかず尚その光景を見ているだけだったが…
「邪魔だクソガキ共!!」
罵声と共に目の前に人が振ってきた。
暗くてよく覚えていないが…青い髪と両手に持つ拳銃のような獲物を持っていた、と思う。
その人物はチラりとこっちを見て、即座に魔物と対峙する、立ち上がった魔物も標的を新たに現れたその人物に変えたようだ。
前足を地に擦り突進する体勢へと変る。青髪の人物は視線を魔物に向けたまま吼えた。
「ここは危険だ!!そいつ連れてさっさと村に戻れクソガキ!!」
「あ、は、はい!!」
ハっとして俺はすぐにクロウを背負い村の方へと駆け出した。
逃げる俺達の姿を魔物は気に留める様子は無い、どうやら俺達のことは目に入っていないようだ。
「レ……ス!!俺…引…付け……ら………裏……回……め!!!」
その人物の声はよく聞き取る事ができなかったが…
とにかく早く医者に見せないとクロウが危険だ、俺は無我夢中で走った。
「俺…自分が強く…なった気で…いた…んだ…」
「え?」
背負われていたクロウが苦しそうに言葉を吐いた。
今にも消えそうで、泣いているようにも思えるそれぐらい弱弱しい声だった。
「俺1人でも…魔物ぐらい…倒せるって…これで村の人に…少しでも…恩返しができるって…」
「…」
「でも…だめだった…俺は…俺は…お前まで…危険な目に合わせて…」
「…喋らないで、すぐにお医者さんに見せるから。」
クロウの気持ちは良く解った…俺は更に足を速めて村へと駆けた。

村に戻った俺達はその後すぐ診療所へと向った。
ドアを半ば殴るように叩いた時には医者に怪訝な顔をされたが背負っているクロウを見て医者は理解して俺達を中に入れてくれた。
幸い命に別状は無く、全身に強い打撲と切り傷で済んだようだ。あれほどボロボロだったにも関わらず骨一つ折れていない事には驚いたが体が鍛えられているクロウならではの事だったようだ。
しかしながら当分は入院する必要がある。俺達の状況は医者も解ってくれているためお金は取らないから気にしなくていいと言ってくれた。
次の日には村の人が何人か見舞いに来て「どうしてこんな無茶をしたんだ」とクロウに詰問をしたのだが…
「村の人に何か一つでも恩返しがしたかった」と言うと逆に村の人が申し訳無さそうな顔をして謝罪の言葉をクロウにかけていた。
村の人は恩返しなんて気にしなくてもいいと思っているのだろう。だが、俺達…とりわけ本当に小さい頃から世話になっているクロウは恩返したいという気持ちが強い。
故に…それが今回のクロウの行動に至ったのだろう…しかし、いくら体が鍛えられているとはいえ所詮俺達は…まだガキだったんだ…

クロウが入院してからは俺は1人で公園で過ごしていた。
あの夜に会った人物…早々に村は去ったようだが彼がどうやら無事に魔物を討伐してくれたらしい。
森も安全になったし木の実や魚も取れるから食料には困る事は無かったが…それより心配なのはあれ以来明るかったクロウがほとんど喋らなくなってしまった事だ。
見舞いは毎日のように行ったが話しかけても「あぁ」や「うん」と一つ返事で返され会話に全くならない。そして、医者によるとクロウは時折、夜に声を殺して泣いているというらしい。
無理もないのかもしれない…俺はしばらくクロウをそっとしておこうと決めた。
少し立てばまた、明るい笑顔を取り戻してくれる、そう信じて…

だが、退院して公園に戻ってきてからも相変らずクロウはどこか上の空だった。
まだ傷も完全に癒えた訳でもないので食料は俺が基本的に1人で調達するのが当たり前になった。
それでも俺はクロウに何も言わず…何も言えずにいた。
そんな、暗い日がどれくらい続いた時だろうか…ある日クロウは突然姿を消した。
村の人も総出で一日中探したが、結局クロウは最後まで見つからなかった…

少ししてから、クロウのあの無謀な行動や今回の事を村の人は重く見たのだろう、俺を引き取ってくれると言ってくれた家があった。まぁ、解ると思うがそれがドロシーの家だ。
ドロシーは元々俺に懐いていたのもありその事を喜んでくれたし、おじさんとおばさんもすごく俺に良くしてくれた。
だが…この村は貧しい。正直ドロシーの家だって俺の面倒を見てくれる程の余裕なんてある筈が無い。
長くはここにいる訳にはいかないと理解していた俺はその辺りから戦闘術の修行に明け暮れた。
師匠なんていない、完全に我流だったが…木の実を切るのに使っていたナイフを手に取って時間さえあれば只管にそれを振り回していた。
朝昼は村の人の手伝い、夕方頃にドロシーの相手をして…夜になったらナイフを振り回す。
その行動は物騒ではあったが、これといって不自由も無く、時間は平和に流れていった…

そしてそれからまた数年経って、今に至る。
兄さんのギルドに入ってから俺の状況は目まぐるしく変化した。
旅の目的なんて特に無く、単純にこれ以上世話になるわけにも行かないから旅に出た、それだけだった筈なのだがギルドの依頼を引き受けて人助けをするという目的を得てから俺の生活は忙しないが充実しているとも思っている。
勿論、村の人への恩返しを忘れた訳ではない…だが…
二人で一緒じゃなければ意味が、無い。それ以前に一人では到底できる訳が無いのだ。

クロウ…お前が生きているかどうかも解らないが…
もし、またお前に会えたらその時は…一緒に、酒でも飲みたいもんだな…
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| 小話 | 03:38 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

oloさんって結構高齢なのか。

| 名も無き者 | 2011/12/21 11:26 | URL |

メルセは高齢になるのか

| 名も無き者 | 2011/12/21 13:12 | URL |

olo(30) 

| 名も無き者 | 2011/12/21 20:16 | URL |

名も無き者A>
oloさんは少年だよ、すっげぇ若いよ。

名も無き者B>
高齢というオッサンと言うか…多分最年長にはなりそう。

名も無き者C>
30じゃねぇよ!!まだ10代だよ!!

| LeanKurusimo | 2011/12/25 23:35 | URL |















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