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回想3

クロウと生活を始めて、それからもう二月程経った。
当然だが…両親は迎えに来る事なんてなかった。
「今日は結構木の実とれたな。つーか、お前も結構木登り上手くなったな!」
「うん。いつまでもクロウに頼ってる訳にもいかないし…」
袋にいっぱいの木の実を詰めて俺達は公園への家路を辿っていた。
「明日はそうだな…川で魚でも取るかぁ?熱い焼き魚を食いたい気分だ。」
「そうだね。魚もここの所食べてなかったし、いっぱい取って村の人達に分けてあげようよ。」
「あぁ、そうだな。んじゃ明日は川だな!」
今の生活にそれなりに慣れてきた俺はクロウに色々な事を教えてもらった。
木登りは勿論だが、魚の取り方、食べれる野草、火の起し方…どれもまだクロウ程では無いが最初のような足手まといでは無く俺もそれなりにクロウに役に立てるようになっていた。
「よし、着いた着いた…お、皆いるな!」
公園にたどり着くとそこには数人の子供達が走り回っていた。村の子供達だ。
そのうちの1人がこっちに気付き大きな声を出す。
「あ!クロウ兄ちゃんとシカフだ!!」
その声に他の子供達も一斉に此方を振り向きこっちに駆け寄ってくる。
「今日は何取って来たの?」
「なぁ、クロウ兄ちゃん!ドッチボールしようぜ!!俺達のチーム入ってくれよ!!」
「ちょっと!クロウお兄ちゃんは今日は私達とおままごとするって約束してたんだよ!」
「そんなの女の子の遊びじゃんか!クロウ兄ちゃんだって俺達とドッチボールした方が楽しいだろ!?」
「おいおいおいおい…ちょっと待てお前ら…」
次々と声を上げる子供達を宥めるようにクロウは答えた。
「あはは、相変らず人気者だね。クロウ。」
この村の子供達の中でもクロウは最年長。そして面倒見もいい性格からクロウは村の子供達の人気者だった。
時折、少し出かけるから面倒を見ていて欲しいと子供をクロウに預ける親もいるぐらいだ。
親も無く、家も無い…天涯孤独の身のクロウだったがアイツは村中から信用されていた。
「約束は約束だからな。今日は俺はドッチボールはできないんだ。悪いな…また明日にしてくれ。」
「ちぇー…あ、でもシカフは勿論俺達とやるよな?」
「うん!」
今は俺も子供達と程度打ち解けて一緒に遊んでいるが…最初に俺がこの子達と会ったときは物凄い怪訝そうに見られていた。
木登りすらまともにできないぐらい貧弱だった俺だ、外遊びも滅多にしたこと無かったから初めは困惑するばかりだったが…3日ほど経った時には外遊びの楽しさを覚えて俺も一緒になって走り回っていた。
「よーし!じゃあ始めようぜ!!」
家も無くて、その日の食べ物も全て自分達で調達しなければいけない。
そんな生活をしていた俺達だったが、何も子供らしい生活全てが無くなった訳では無かった。
弾むボールを追いかけ、追いかけられ俺はどこまでも無邪気に笑っていた。

「あ、いっけねぇ…そういえばドロシーの家の雨漏り直すの手伝うって話になってたんだったか…」
すっかり日も暮れ服を土まみれにした子供達が帰った後、遊具の中で木の実を食べながらクロウは唐突にそう呟いた。
「え、そんな事頼まれてたっけ?」
「あぁ、確か頼まれてたはず…最近はバタバタしててすっかり忘れてたな…つーか、いつ頃頼まれたんだっけ…」
指折り数えていたが20ほど数えた所でクロウは断念した。
実際、頼まれたのはもう2ヵ月も前の話だ。
「かなり前の事ならもう直しちゃってるんじゃないかな…?」
「まぁそうかも知れないけど…まぁでも明日一応行ってみるか…」
忘れていた自分に不甲斐なさを感じているようでクロウは頭を掻く。
「そういえば…ドロシーって…?」
「あぁ、お前はあんまり会った事ないかもな…たまに公園に来て遊んでるけどお前は女の子と遊んだ事あんまり無いしな…」
「うん…」
女の子と遊ぶのはまだ気恥ずかしさを感じていた時期だ。公園で遊ぶとなったら大体は男とボール遊びをしていたりする事の方が多かった。
たまに一緒に遊ぶ事もあったが恥ずかしくてすぐに抜け出してしまうため女の子の名前はいまいち覚える事ができていない…今じゃ考えられない話だ。
「それに村の子達の中じゃ一番小さいし…どっちかというと公園に来るより家で親といる時の方が多いしな。」
「そっか…」
特に意識はしてなかったのだろうが…クロウの'親'という言葉に俺は少しドキリとした。
普段生活している分には親の事を考える暇自体無いが…一度考えてしまうと少し涙が溢れそうになる。
「今日は早めに寝ようぜ。とりあえず明日はドロシーの家に行こう。」
「う、うん。おやすみ…」
涙が溢れて零れる前に俺はクロウに背を向けて横になった。

次の日、目が覚めて朝食に木の実を口に放り込みほどなくして俺達はドロシーの家に向った。
ドロシーの家のおじさんに会うが否や開口一番にクロウは「忘れていてすいません!」と頭を下げたがおじさんは「そんなに気にしないでくれ」と笑って答えた。
雨漏りの箇所は1箇所だったという事もあり、まだ直す事はしていなかったようだ。恐らく屋根の僅かな隙間が原因なのだろう。
本格的な修理は望めない。ひとまずは屋根の隙間に木を打ちつけて応急処置をするという事になった。
まぁ、屋根に3人も人が乗っかって作業するのも危険だし逆に非効率だったので俺は家の中で座って待っていてくれと言われてしまったのだが…

コンコン、と木を叩く音が頭上から聞こえる。
特にやることも無く俺はただその音の方向を見上げ、目に映る天井の木目の迷路を目で辿っていた。
その難解な迷路に熱中していたという訳では無かったが…俺はすぐ隣にいつの間にか立っていた小さな人影に気がつかなかった。
「おにいちゃん、だあれ?」
その小さな声に俺は驚き思わず身を震わせ、その子を見た。
まだ年端も行かない、当時の俺より小さく、幼い女の子…ドロシーが俺のすぐ隣で頭を傾げてちょこんと立っていた。
「あ、もしかして、クロウおにいちゃんといっしょにすんでるっていうひと?」
俺が言葉を発するその前にドロシーはそう尋ねた。
俺の境遇は街中の人全員がもう知っている事だ、会ったことは無かったとはいえドロシーもその話はどうやら知っているようだった。
「う、うん。僕はシカフ。えっと…君がドロシー…ちゃん?」
女の子と話すのが少し気恥ずかしかったのもあり少し口ごもりながらも俺はそう尋ねた。
ドロシーは「うん!」と頷き満面の笑顔を浮かべた。
「シカフおにいちゃんはきょうなにしにきたの?」
「屋根の雨漏りを直しにきたんだよ。といってもクロウとおじさんがやってて僕はここで待っててくれって言われたんだけど…」
「えー、ぴちゃぴちゃっておとがしておもしろかったのになおしちゃうのー?」
不服なのかドロシーは口を尖らせてそう答えた。
まぁ、雨漏りなんて小さい子からすればそういう認識なのも無理はないが…
苦笑すると、ドロシーは何かを思い立ったようで俺に無邪気な視線を向けた。
「じゃあシカフおにいちゃんはいまやることないんだよね?ねぇねぇ、あそんであそんで!」
「えっ…う、うん。いいよ。」
遊ぶといっても小さな女の子と二人で遊ぶといわれても何をすればいいのか解らなかったが…
ここでただ只管終わりの無い迷路を辿り続けるよりはよっぽどいいだろうと俺は少し戸惑いながらも承諾した。

「-そして王子様とお姫様は幸せに暮らしていきました。めでたしめでたし。」
手に持った少し大きめの本を終幕の言葉と共に閉じた。それを合図にずっと静かに聴いていたドロシーは手を叩き、目を輝かせて全身で喜びを表した。
てっきりおままごとやらそういった類の遊びを要求される、そう思っていた俺だったがドロシーから言われたのは「絵本を読んで欲しい」という事だった。
今は村の子供達と走り回って外遊びをする事ばっかりだったが、元々は本を読むのも俺は好きだった事もありドロシーからのお願いは自分にとっても有難かった。
「おもしろかったー!」
「良いお話だったね。えっと…次は…」
初めは子守のつもりで読み聞かせていた絵本だがいざこうして始めてみると俺もかなり楽しんでいた。
「ドロシーに読み聞かせてあげる」という気持ち以前に「自分がもっと読みたい」という気持ちが先行して、ドロシーが次のお話をねだり始める前に自分から次に読みたい本を探し始めていた。
「そういえば…シカフおにいちゃんもクロウおにいちゃんといっしょにこうえんにすんでるんだよね?」
本棚から本を物色していると不意にドロシーは質問を投げかけた。
「え?うん、そうだよ。」
質問の意図が良く解らなかったが俺は物色の手を止めて振り返りそう答えた。
何故知っている事を改めてもう一度聞くのだろうか?
「じゃあ、シカフおにいちゃんもおとーさんとおかーさんにすてられちゃったの?」
「ッ!?」
それは、俺が考えるのをずっと避けていた事。あまりにも残酷な質問だった。
ドロシーに悪意やそう言った物は無い…幼さ故の好奇心。それだけだった。
この村に来たばかりの俺なら直ぐにでも「違う!」と声を張り上げて、半狂乱になって否定しただろう。
だが、それを否定できない程に月日はもう流れすぎていた…
「…そう、かもね…」
口調の穏やかさに自分がかえって驚いた程だった。
捨てられた事を理解しただけでは無く、それを納得したかの様に…
どうしてここまで穏やかに自分を保っていられるのだろうか。
「そうなんだ…でも、だいじょうぶだよ!」
「え?」
「おとーさんがいってた。『ここは貧しい村だけど、それでも皆が手を取り合って協力して生きている。だからこの村の人達は誰であれ皆家族なんだよ。』って!だからわたしたちみんなシカフおにいちゃんのかぞくだからさみしくないんだよ!」
「あ…」
その言葉で俺は自分の心境を理解した。
両親に会いたくない訳でも、悲しくない訳でも無い。
それでも、決して'寂しい'と思わないのはそれは優しい村の人達や子供達、そして…何よりクロウのお陰だと。
「ふぅ…終わった終わった。お、ドロシー、久しぶりだな!」
「あ、クロウおにいちゃん!」
どうやら雨漏りの修理が終わったらしく、クロウが階段から降りてきた。
その姿に気がつくとドロシーはクロウに飛び掛るように抱きついた。
「あのねあのね!シカフおにいちゃんがいっぱいえほんをよんでくれたんだよ!」
「お、そうなのか。ははっよかったな!」
頭を撫でながらクロウは視線をこっちに向けた。
「…どうかしたのか?」
「え…?ううん、なんでもないよ。」
よほど神妙な面持ちをしていたのだろうか、投げられた質問にハっとした俺はすぐに表情を戻しそう答えた。
「それよりもう屋根は大丈夫なの?」
「あぁ、しばらく大丈夫だろう。細かい事はおじさんがやるって言ってたから俺達はそろそろ帰ろうぜ。」
「えー?もうかえっちゃうの…?」
ドロシーは名残惜しそうに顔を俯け、悲しそうな声を出した。
それをなだめる様にクロウはまた頭を撫でた。
「またその内遊びに来るからそんな悲しそうな顔すんなって…」
「うん…やくそくだよ…?」
「おう!」
「シカフおにいちゃんも…またきてくれる?」
ドロシーはそういって今度は俺に顔を向けた。
「うん。また絵本読んであげるからね。」
俺は笑ってそう答えると嬉しそうにドロシーは天使のような微笑を見せた。

「そろそろ良いかな…アツツ…」
あれから川で魚を取った俺達は夜の公園で焚き火をしていた。
火の中で像のように静止し表面に焼け跡を残していく魚をクロウは一つ手に取ってそれを口に運ぶ。
「うーん…まだちょっと早いな…」
生焼けだった身を吐き出し食いかけの魚をまた火に戻す。
そんなクロウを気にも留めずに微動だにせずただ座していた。
「…お前、ドロシーの家に行った時からやっぱりなんかおかしいぞ?」
事実だった。ドロシーの言葉を聞いたときから俺はどこか夢見心地のような。地にうまく足がついていないようなそんな錯覚に囚われていた。
心配そうに俺を見るクロウだが、俺の心境はクロウが心配するような深刻な物じゃない。
揺らめく炎を見つめ、俺は言葉を紡ぎ出した。
「あのさ…僕ってやっぱり…父さんと母さんに捨てられちゃったのかな?」
改めて聞くまでの事では無かった。この質問の答えはすでに自分の中で解答されている。
返答に困っているのだろう、困惑した表情を見せるクロウだったが、これ以上優しくも残酷な気遣いを続ける方が酷だと判断したクロウは苦い顔をして返した。
「正直に言うと…そう、なんだと思う…」
「だよね…」
そう呟いた俺の心境は絶望に染まっているとクロウは思ったのだろう。
慰めになるような言葉を捜すように星空を見上げて小さく唸った。
「今日さ、ドロシーに聞かれたんだ。お父さんとお母さんに捨てられたの?って。」
クロウは黙ったまま俺の言葉に耳を傾けている。
「そう言われてさ、始めて僕は捨てられたんだなって自覚したんだ。…今までは全くそんな事考えてなかったんだけどね。ううん、考えたくなかっただけかな。」
「…」
「でもさ、その後に言われたんだ『ここは貧しい村だけど、それでも皆が手を取り合って協力して生きている。だからこの村の人達は誰であれ皆家族なんだよ。』って。」
おじさんの受け売りらしいけどね、と俺は付け加えて笑った。
「父さんと母さんに捨てられたんだなって思ったらそりゃ勿論悲しいけどさ…でも、不思議と寂しいとは思わなかったんだ。多分、その言葉通り皆が家族みたいに接してくれてるおかげなんだと思う。だから村の人達に改めて感謝しなきゃなって思ったし、何より…」
そこで一度言葉を途切った。次の言葉を口にするのは今更ながら少し恥ずかしかった。
「こうやって僕を面倒見てくれてるクロウにお礼を言わなきゃなって思ってさ…」
気恥ずかしさを隠すように俺は火の中の魚を木の棒で突付いた。
「な、なんだよ突然、気持ち悪いな……でも俺も同じ気持ちだよ。」
無言で話を聞いていたクロウだったがようやく口を開いた。
視線は向けず揺れる炎を見たまま更に言葉を続ける。
「俺もさ、両親にここに捨てられて今まで生きてこれてるのは村の人達のおかげだと思ってる。つーか、思うも何も事実なんだけどな…親に捨てられた場所なんて忌々しいとしか思わない筈なのに寧ろ捨てられたのが此処で良かった、なんて思ってるぐらいだよ。」
「うん…」
「だから俺はさ、いつかこの村に恩返ししたいと思ってる。どういう風にすればいいのかまだ解らないけど…」
さっきの食い掛けの魚を一つ手に取りクロウはそれをまた口に運んだ。今度はきっちり中まで火が通っているようだ。
「…いつか絶対に俺達二人でこの村に恩返ししよう。それが、ここで世話になってる俺達の義務だと思うから。」
「うん!」
『この村の人達は誰であれ皆家族』村の人達にとってこれは俺達のような捨て子とて例外では無い。
だからこそ俺達は今、生きる事ができている。
その恩義は計り知れない程であり返す事ができる程小さな物であるはずが無い…
それでも、その大きすぎる恩をいつか必ず返そうと、二人で一緒に返していこうと俺達は決意した。

次回で回想終了(予定)
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| 小話 | 13:05 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

41回!

| 名も無き者 | 2011/12/13 13:11 | URL |

次回 Assemble of Memories

クロウ、死す

| 名も無き者 | 2011/12/13 16:54 | URL |

あにきぶんはしぬってそうばはきまってるもんな

| 名も無き者 | 2011/12/14 18:17 | URL |

名も無き者A>
だからなにかぞえてんだよ!!

名も無き者B>
し、しなないよ・・・たぶん・・・

名も無き者C>
相場に則ってクロウには死んでもらうしかないのか・・・

| LeanKurusimo | 2011/12/21 03:37 | URL |















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