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英雄。2

リプレから船に乗りメイフィがたどり着いたのは天空の街オルビス…そのギルド本部の扉前。
小一時間程の旅の果てにたどり着いた目的地であったが彼女は少々困ったような顔をしてそこに立ち尽くしていた。
それもその筈である、目的地にまさかこのような張り紙がされている等、彼女は想像すらしていなかったのだから。
『資料更新の為、本日の営業はお休みとさせて頂いております。』
リーンの話によるとギルド本部でレアの手伝いをするというのは間違い無いが、その本部の前にこんな張り紙がされていれば聊か入るのを躊躇してしまう。
だが、よくよく考えればこの「資料更新」があるからこそリーンが呼ばれたのだろうか?と、彼女すぐに察する。
どんな事をするのかは解らないが…自分から引き受けた以上いまさら引き返す訳にも当然いかずメイフィは意を決して扉をゆっくりと開けた。


「遅い!!」
扉が半開き程になったぐらいで聞こえてきた怒声にメイフィはビクりとし、その場で硬直する。
こつり、こつりとハイヒールの足音が彼女の元に近づき扉の隙間からレアの怒りの顔が見えた…と、同時にメイフィの怯えた顔を見てレアは困惑した表情をして見せた。
「あ、あれ?ご、ごめんなさいね。知り合いかと思った物で…申し訳ありませんが今日のギルド本部の営業はお休みしております。また日を改めて来て下さい。」
レアとメイフィは2、3回程度しか直接対面した事は無いがその度にメイフィが思うことは『常に凛としていて淡々と完璧に仕事をこなす女性』だという事だ。
そんな彼女がほんの一瞬であったがこんな顔をするのはメイフィにとって正直意外であったが、それは今はどうでもいい事だ。
メイフィは引きつっていた顔を正し、相手をしっかり見て自分がここに来た理由をレアに告げた。
「突然来てしまって申し訳ありません。本日はAssembleギルドマスター、リーン=クルシモ……さんの代理で此方に来たのですが…」
本当はフルネームで呼び捨てにするつもりが何だか申し訳無くなり少し間を置いて『さん』と付けてしまうのがなんともメイフィらしい。
「貴方は……確か、メイフィ=イェルドさんでしたよね?リーン=クルシモさんの代理で来たというのはどういう事でしょう?」
レアはメイフィは誰であるのか理解してなかったようだが、相手の顔を今一度よく見て、彼女が誰であるかというのをすぐに記憶の隅から思い出すことができたらしい。
「リーン=クル…いえ、リーンさんが貴方から今日仕事を引き受けたと聞いたのですがリーンさんは随分お疲れのようでしたので、本日はゆっくり休んで頂こうと思いまして…ご迷惑で無ければ私がその仕事を代わりにと…」
「あぁ、なるほど…そういう事ですか………………………………あのク…ロ…毛め…」
「え?」
「あぁ、いえ何でもありません。こちらとしては本当に有難いのですが本当に宜しいのでしょうか?雑用とは言え結構ハードな仕事になるのですが…」
「はい、大丈夫です。私にできる事なら何でも致しますので…」
メイフィの言葉を聞いて、目を見て、華奢な見た目だが芯はしっかりしているようだとレアは思った。多少の申し訳なさを感じてはいたが彼女はメイフィの厚意を受けようと決め、少し口元を緩めて頷いた。
「解りました、本日は宜しくお願いします。それではこちらへどうぞ。」
レアは相変わらず半開きだった扉を前回まで開けメイフィを中に招き入れた。


「メイフィさん、次はこちらをお願いします。」
「はい、解りました。」
必要最低限の会話だけを行いつつ仕事は淡々と進められていく。
メイフィが今やってる仕事は資料の整列。言ってしまえば渡された資料をギルド名のあいうえお順に並び替えるだけであるのだがその量は尋常じゃ無いほど多い。
その資料には当然、各ギルドのメンバー情報もある。正直これを一般人に過ぎないメイフィが行っていい作業なのかと始めに仕事内容を教えられた時にレアに聞いたのだが…
『本当は駄目なんですけどね。ただ、もう一人の秘書のレナリウが熱を出してしまって休みらしく…かといって今日中に終わらせない訳にはいかないのでアイツ…いえ、リーン=クルシモさんにこの仕事を依頼したのですよ。』
『あ、勿論ここで見た情報は他言無用でお願いします。貴方は口が硬そうですし、何より真面目な方なので心配は無いとは思いますが…もし話すような事があれば…』
と、若干脅し気味にそう言われた。
無論、メイフィとて話すつもりは毛頭無い。必要以上の情報が頭に入ってこない様にギルド名以外の情報はなるべく見ないようにしているぐらいだ。
「メイフィさん、次はこちらを。」
「はい、解りました。」
簡単な仕事ではあるが立ったり座ったりとメイフィは休む暇一つ無い。
だが、ここで音を上げてしまえばレアにも申し訳無いし、何よりリーンにどんな顔を引き下げていいのかも解らない。
メイフィただしっかりリーンが休めている事を願いつつ、仕事を進めていった。


「…心配だ。」
所変わってリプレの宿屋。
リーンはベッドに横たわりながらそうぼやいた。
休んでいてくださいという言葉に甘えて彼女を見送った後、すぐ部屋に戻り眠りについたのはいいが2時間ほどで目を覚ましてしまいそこから眠るに眠れず今の状況に至る。
別にメイフィがちゃんと仕事できているか、等そういった事が心配な訳ではない。しっかりしている彼女の事だからどんな事であっても問題無くやる事はできるであろう。
なので心配なのはそちらでは無く『レアがどんな無茶な仕事をメイフィに叩き付けているか』の一点だけだった。
過去にも何度か彼女の仕事を手伝わされた事はあったが時には無茶苦茶な事を言われて達成できなかった暁にはボロクソに言われてきた経験をしてきたリーンにとっては気が気でない。
様子を見に行きたい…が、もしここで様子を見に行ってしまえば折角のメイフィの厚意も無駄になる…二つの気持ちが有りリーンはただベットの上で眠れずにただただ寝返りを打つことしかできなかった。


「メイフィさん、少し休憩にしましょう。」
「はい、解りました。」
レアから掛けられた言葉に反射的に答え、資料を持って立ち上がろうとした所でメイフィは先ほどまでとは違う言葉を掛けられた事に気づきハッとしたようにレアの方を見た。
そんな彼女の様子を見てレアは苦笑しながら手に持っていたマグカップを見せびらかすように顔の近くまで上げた。
「もうかれこれ4時間ほど働きっぱなしですしね。もうお昼を過ぎてますし食事とお茶にしましょう?」
「あれ、もうそんなに時間が…あっ…」
ぐるる。と控えめな彼女のお腹から控えめとは到底言えない大きな音が響いた。
赤面して俯く彼女の様子を見て、レアは少し大きな声で笑って見せた。

「それにしても…急な事なのによく働いて下さって…本当に有難うございます。」
昼食としてレアが用意していたサンドイッチをメイフィが頬張っていた所でレアは改まったようにそう言った。
急に声を掛けられメイフィは慌ててそれを飲み込み、返事を返す。
「コホッ。いえいえ、とんでもありません…私なんかがお役に立てているのかどうか…」
「そうご謙遜なさらずに…もしも貴方がどこにも所属していないのでしたら是非うちにスカウトしたいぐらいですもの。」
「あはは…そうでしょうか……ご馳走様でした。おいしい食事を有難うございます。」
そう言って、メイフィは再び仕事に戻ろうとゆっくりと立ち上がろうとした…のをレアは手を上げてそれを制した。
「貴方のお陰で仕事は滞りなく順調に進んでおります。もう少しゆっくり休みましょう?」
「え…ですが…」
「あんまり急いでやろうとするよりも休む時は長すぎるってぐらい休んだ方が返って捗る事もありますよ。」
それはどうなのだろうか。と、メイフィは少し思ったが…先ほど立ち上がろうとした時に少しばかり疲労を感じてしまったのもまた事実だ。
レアの言う事も一理あるかもしれない、そう考え直したメイフィはその言葉に甘える事にして「解りました。」と小さく頷いた。
「では、すぐにお持ちしますね。実はおいしい紅茶とお菓子があるんですよ…高価な物なので本当は大事なお客様に出す物なのですが、今は私達しかいませんからね。」
そう言ってレアは悪戯なウィンクをして見せて厨房の奥へと入っていった。

「本当に美味しいですね…」
出された茶菓子を一口食べてメイフィは率直な感想を述べた。
大事なお客様用と言われて正直食べるのに躊躇していたメイフィだったがここまで美味しいと食べないでいるのは無理だと思う程の一品だ。
「でしょう?武陵桃源から特別に取り寄せた一品ですからね。普通じゃまず手に入れる事はできませんよ。」
武陵桃源と言えばその名の通り桃の産地で有名な大陸だ。一口頬張ればまるで取れたての様な新鮮な桃の味が口一杯に広がり思わず口元が緩んでしまう。
「実はこれが資料更新の際の楽しみなんですよ。この日だけは管理者は遠出していますし、本部にいるのは私とレナリウの二人だけですからね。」
尤も、レナリウはこんな日に限って熱を出してしまいましたが…と、レアは続け溜め息を吐いた。
「でも、今日来てもらったのが貴方でよかったかもしれません。あの男が来ていたら今頃文句ばかり吐いていたでしょうしね…きっとこの茶菓子を出しても『こんな物で僕を釣る気か』なんて言うに決まってます。」
「ぷっ…アハハ!なんですかそれ。リーンさんの物真似ですか?」
「あら?結構似ていると思ったのですが…」
思いの外に笑われてしまったためレアは少し恥ずかしそうにそう言った。
ここに来て何度かレアはリーンに大して悪態を吐いている。だが、なんだかんだレアはリーンを信頼しているのだろう。それはその時の表情を見ていれば解る。
だからだろうか、レアならもしかして知ってるいるのかも知れないと思いメイフィは一つ質問をした。
「あの…レアさんはリーンさんの年齢ってご存知ですか?」
急にそう聞かれたレアは、ぽかんとした表情を見せたがすぐに記憶の糸を手繰るように頬に指を当て視線を宙に舞わせる。
「そういえば年齢は聞いた事はありませんね…でもあの背格好なら18かその辺りでは無いですか?」
「そう、ですよね……」
「ギルドを作成する際には年齢の確認等は基本的にしないですからね。名前だけ告げて貰えば基本的にはどんな人間でも作れるのがギルドですから。」
「そうなのですか?」
意外そうにメイフィはそう答えた。
加入自体は簡単な物だったがギルドを作るとなるとそれなりに大変な物だとてっきり彼女は思っていたからだ。
「我々の仕事は簡単に言えばギルドに対して仕事を斡旋する。というだけですからね、勿論ギルドの数が増えれば今回の様に資料更新が大変になりますが…例外を除けば我々の懐からギルドに対して報酬を渡している訳ではありませんからどんなギルドであれギルドが増えるというのは我々にとっても悪いことではありませんからね。多くの人が自由にギルドを設立し自由に仕事を引き受け活動し、この世界に貢献する。それがギルドの基本理念です。…無論、しばらく活動が見られないギルドであったり悪事を働くようなギルドであったりするのであるならば即刻解散となりますが。」
成程、とメイフィは頷いた…が、レアは自分が言ったことに反して溜息を吐いて見せた。
「と、いうのが昔からのギルドと言うものの伝統なんだそうですよ。個人的にはギルドを作るのであるならばそれなりに条件を作るべきだと思うんですけどね…資料更新も大変ですし、何より何かあれば依頼者からクレームが来るのは私達ですから…はぁ…」
「あぁ、やっぱりそうなってしまいますよね…」
「…メイフィさん、今すぐにあの男のギルドなんかやめて私達と一緒に働きませんか?待遇は保証しますから!是非!」
「えっ、えぇ!?いえ、あの、私は…」
急に手を握られてそんな事を言われてしまいメイフィはたじろいだ。
ギルドを抜けるつもり等、毛頭ないのだがそんな話を聞いた今、すぐに断るのも何だか気が引けてしまう。
何か上手い言葉は無いかと考えているとレアはくすり、と笑みを浮かべて握っていた手を離した。
「なんてね。冗談ですよ、冗談。」
「あ…それはそうですよね…アハハハ…」
「でも、半分ぐらいは本気ですよ?もし気が変われば是非、声を掛けてくださいね。さっ、仕事の続きにしましょうか。」
「え…あ、はい!」
そう言われ、メイフィはすぐに立ち上がった。先ほどよりも体は軽くこれならまだまだ仕事する事ができそうだ。
…結局、彼の年齢は解らないままであったが…

「メイフィさん、後はこれをお願いします。これで最後ですよ。」
「はい、解りました。」
長い休憩を取ってからどのくらい時間が経ったのか…時計を見ていないので解らないが窓から星の輝きが見える辺り外はもう夜であるのは間違い無い。
少し背伸びをして手渡された資料のギルド名を確認し、メイフィは少しだけ笑みを浮かべた。そこに書かれていたのは自分がよく知っている名前…Assembleだったからだ。
「…あれ?」
その名前を見てメイフィに一つ疑問が浮かぶ。自分がこれより前に受け取った資料にもAssembleと書かれた資料が確かにあった筈だ。
自分の加入しているギルドだからこそそれはよく覚えている。
疑問に思いつつもそれを片付けるべき棚へ持って行き、片付ける前に棚から資料を何個か取り出し、ギルド名を確認する。
確かに、そこにもギルド名がAssembleと書かれた資料が一つあった。
どういう事だろうか、とメイフィは「うーん」と小さく唸り…少し考えた後申し訳ないと思いつつその資料の内容をしっかりと目を通す。
Lean=Kurusimo、Mayfy=Yeld、Ray=Myuell、Holow=Kelvin、Sicaf=Yatray…そこにはずらりと自分の見知った名前が並んでいた。
だとするならこの資料はやっぱり自分のギルドAssembleの資料だ。…ならば、これは?
もう一つのAssemble。だが、同じギルド名が同時に二つ存在しているのは無い、筈だ。
予測でしかないが今日並べていた資料を見てもギルド名が重複しているという事は無かった。だから、おそらく重複はできないようになっているのだろうとメイフィは予想していた。
「…御免なさい。」
誰に言うわけでもなかったがメイフィはその場で小さく謝罪をしてその資料の中身を覗き見る。
そこに書かれていたのは…Freyja=Kurusimo(フレイヤ=クルシモ)一つの名前だけであった。
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| 小話 | 22:55 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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