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頭は悪くない弟子。

「だったら…これの答えはこう、でいいんですよね?」
図書館の静寂を破る様に、自信の無さそうな声が響く。
問いかけられたメイフィは問題と答えを一瞥すると満面の笑みを浮かべた。
「はい、正解ですよ。」
「ヨッシャ!!」
そう歓喜の言葉を出したところですぐ隣にいたリーンは作業的にホロウの頭を軽く叩いた。
この動作も何回目になるかすら解らない。だが、リーンは呆れよりも感心の気持ちの方が大きかった。
初めの内はお世辞にもいいとは言えない正答率であったがここ何十問かは何一つ間違えていない、自分達からすれば出来て当然の問題ではあったが散々な結果だったほんの1時間ほど前とは比べ物にならない結果には感心してしまうのも無理はない。
「調子がいいね、ホロウ君。もう計算に関しては全く問題ないんじゃないかな?」
「アハハ、なんかコツ?みたいなのが掴めたのかな。ちょっと考えたら答えがすぐ出てくるようになってきたよ。」
セクトの言葉にホロウは笑ってそう答えて、すぐにまた別の問いを解き始める。
あくまで印象でしかなかったがリーンはホロウが勉強が嫌いというイメージがあったのだがこの熱心ぶりからそういう訳ではないらしい。
まぁ、勉強が嫌いであるならばこういう話を持ちかけるような事はしなかったであろう…基本的にはホロウは努力の人のようだ。
戦いの手解きをしている最中のホロウの様子を想起して、リーンはそう思った。だが、ここまで勉強に熱心になれるのも、覚えが非常に早いのも…
「先生が優秀だからこそ、だな。」
そう言ってリーンはメイフィの方へと顔を向けた。
それを聞いてメイフィは顔を少し紅く染め、恥ずかしそうにはにかんだ。
「いえいえ、私なんて基礎を少し教えただけですから…」
「そこまで謙遜しなくとも…」
「そうですよ、メイフィさん。僕もメイフィさんの教え方本当に解り易かったですし…僕もメイフィさんみたいな先生に教えてもらえてたらよかったのになぁ…」
謙遜するメイフィにセクトはそうべた褒めしてみせた。メイフィの顔は尚も紅くなとうとう顔を背けてしまった。
メイフィの教え方は言葉だけでも非常に丁寧で解り易かったがそれだけでは無く実際、物を使って視覚的にも解りやすい物であった。
自らが持っている本を開きそこから林檎であったり人形であったりを'取り出して'解き方を説明するというメイフィだからこそできる方法であるのは間違いない。
「私が思うに、ホロウさんは頭が悪いという訳では無いのだと思います。ただ、答えの導き方を教えて貰っていなかっただけ、なのだと思います。だから私はそこを少しだけ解り易く教えただけに過ぎません。」
簡単な問題にしかこういった方法は取れないが、基礎さえとことん解り易く教えてしまえば後はいくらでも応用ができる、という事だろう。
現に、それだけ聞いたらホロウは「なるほど!」と、流れるように問題を解いていっている。
「ですから、世の中に'頭が悪い人'なんて居ないのだと私は思います。皆、答えの導き方を知らないだけなんじゃないかと…」
「そうだな…確かに、そうかもしれない。だが、やはり僕はそれを解り易く教えられる先生の力があってこそだと思うな。メイフィは学校の先生に向いてるんじゃないか?」
解り易く教え、大らかに生徒を包み込めるメイフィほど教師に向いてる人は居ない。リーンは心からそう思った。
「アハハ…そう、でしょうかね…そうだといいのですけれども…」
やや表情を暗くしたメイフィにどうしたのか、とリーンは聞こうとしたが…
「先生!答え合わせお願いします!!」
問題を全て解き終わったホロウがそう元気な声を上げてそれは遮られてしまった。
リーンはまたしてもその頭を軽く叩き、その様子を見てメイフィとセクトは小さく笑って見せた。

穏やかに時間は過ぎていったが時間はもう夕暮れに近い。
窓から入る明かりは薄暗い物へと変わり、館内に照明がぽつぽつと点き始めていた。
「もう、こんな時間か…このぐらいにしてそろそろ引き上げるか?」
窓から外の様子を見ていたリーンは…熱心に問題を解いているホロウにそう声を掛けるのも忍びないと思ったが…そう言った。
「あら、もうこんなに時間が…そうですね、今日はこのぐらいにしておきましょうか。ホロウさん。」
「え。うわ!もう外がこんなに暗い!頑張ったなぁ俺…」
メイフィからそう声を掛けられて、ようやく自分が疲れた事を自覚したのだろう。
鉛筆を机に放り出して椅子の背もたれに思い切り体重をかけてだらしなく背伸びをしてみせた。
「あ、ちょっと待って。僕からもちょっとホロウ君に渡したい物が…」
そう言って少し離れた所にいたセクトが手に一杯の本を持ってとてとて、と危なっかしく歩いてきた。
そういえば、「勉強を教えるなら僕も」と一緒についてきたセクトであったが実際ここまで教えていたのはずっとメイフィだった。
その事に気付いたメイフィの顔を申し訳無さそうな表情へと変わっていく。
「ご、ごめんなさいセクトさん。私ったらセクトさんの事を忘れて…」
「ううん、いいんですよメイフィさん。教えるのならメイフィさんの方がずっと解り易いですし、それに僕がやろうとしてたのは最初から面白い本を渡す事だけですから。」
気にしないでください、とセクトは笑って言い、持ってきた本を机の上に乗せた。
ハードカバーで厚みのある本ばかりだからだろう、乗せた瞬間に机がみしり、と嫌な音を立てた。
「本、か。そうだな国語の勉強には本を読むのが一番いいだろうな。」
「国語もそうなんですけれど僕が持ってきたのは歴史小説ですね。いくつか面白いのが合ったのでオススメを持ってきてみました。」
「オススメって…うへぇ…これ結構な量だよ…セクトはこれ全部読んだの?」
目の前に大量に積み上げられたオススメの本の山を見て流石にホロウは苦い顔をしてそう言った。
「あ、うん一応ね…何冊かに絞ろうと思ったんだけど絞りきれなくて…」
「すごい量だな本当…僕も本は好きだが流石にこれほどは読んでいないかもしれないな…」
リーンも感服した様にそう言った。
しかもここにあるのはあくまで'オススメの本'だ、実際セクトが読んだ本はこれ以上にあるのだろう。
「ここからもっと絞るなら…そうですね…過去の五英雄の本か、あるいは'先の大戦'の本なんてどうでしょうか?」
「あ、だったらこの本がいいかな…'先の大戦’の本なんですけどすごく面白いんですよ。」
そう言ってセクトは山から一冊本を引き出して皆に見せた。
'九英雄の戦い'とシンプルに書かれたタイトルだがその本の厚さは本と言うより鈍器と言ったほうがしっくりと来た。
「あ、この本なら私も読んだことあります。さすがにフィクション色が強いでしょうけども1人1人の心情もしっかりと描かれていて凄く惹きこまれるんですよね。」
「ですよねですよね!僕は登場人物のティルがすごく好きなんですよ!僕もこんな風にかっこよく戦えたらなぁ…」
ティルというのは'先の大戦'…すなわち今から約百年程前、闇の魔術師を打ち滅ぼした戦いのメイプルワールドの英雄の1人、ティルフィング=モーガン(Tyrfing=Morgan)の事だ。
ありとあらゆる剣や銃、ありとあらゆる武器を使いこなし鬼神の如き戦いぶりを見せたと言われる彼は九英雄の内で最も人気があり彼が主人公に描かれる歴史小説も数多く存在する。
「九英雄の戦いなら流石に俺もちょっとは知ってるなぁ。全部が全部って訳じゃないけどティルの事なら聞いたことあるよ!」
「じゃあこの際だから読んで見てよ!本当、すっごく面白いからホロウ君も絶対楽しめるよ!」
自分の好きな本の話だからかセクトの声と顔がいつもよりかなり生き生きとしている。
その様子に流石にホロウも少し引きながらも、差し出された本を手に取った。
「じゃあ折角だし読んでみようかな。…でも、いつも思うんだけど'九英雄'って中途半端だよなぁ…もう1人居れば10人で十英雄だったのに。」
「そうだね…本当は十英雄になる筈…だったんだけど…」
'先の大戦'で活躍した九英雄。
先ずは先ほど話題になった『千剣千銃のティルフィング=モーガン』
『時の剣、ミゲル=マーティス(Miguel=Martis)』
『百花繚乱、ユーリ=フレイム(Yuri=Flame)』
『猪突猛進、アラン』
『フリードの意思を継ぐ者、エヴァン』
『気高きエルフの王、メルセデス』
『神出鬼没の大怪盗、ファントム』
『星の子、ルミナス』
『精霊の拳、隠月』
彼らを総じて、九英雄は人は呼ぶ。
だが、九英雄の戦いを語るに置いてもう1人外せない人物が居る。
それが、英雄に成り損ねた人間『裏切り者、ヨシュア=カルセム(Joshua=Culsem)』の事だ。
「ヨシュアが最後の最後までティル達と戦っていれば英雄になれたのにね。最後の最後で闇の魔術師に誘惑されなければ…」
「戦いの最中に錯乱したようにアラン、メルセデス、ファントム、ルミナス、隠月を殺害した…のでしたよね。誘惑されたとは言われていますが恐ろしい方です。」
ヨシュアは闇の魔術師との最後の戦いの際、闇の魔術師に誘惑され彼らを殺害、その後残った4人が何とか闇の魔術師を討った後に彼も又、討たれた…そう語られている。
実際、何故ヨシュアが突然裏切りに走ったのかは解らないが、数々の人を誘惑し闇に堕としてきた魔術師によって彼もまた堕とされたのだろう、と言われている。
歴史上最大の裏切り者と忌み嫌われている彼だが、その裏切り行為にドラマ性があると踏んで、彼を主人公にした作品等もいくつか在るほどだ。
「…どうかしましたか?リーンさん?」
メイフィ達の話をここまで黙って聞いてリーンだったが、その表情の暗さに疑問を抱いたメイフィがリーンにそう言葉を投げかけた。
ハッ、としたようにリーンは顔を上げてすぐに笑顔を見せる。
「いや、何でも無い。ヨシュアがもし裏切らなかったらどうなってただろうな、とちょっと考えてただけだ。」
「だったら、リーンさんにはこの本がオススメですよ!if作品ですけどヨシュアが裏切らなかったら、という前提で書かれたif作品です!」
リーンの言葉を聞いたセクトが本の山が崩れる可能性もお構いなしに本を一冊抜き取ってリーンに突き出した。
「ハハ、そうだな。セクトのオススメなら面白いだろうし僕も読んでみようかな。」
リーンは苦笑しながらも突き出された本を受け取って、そう答えた。
「…。」
なんて事無い、行動と言葉、その筈なのだが。
彼の作ったような笑顔がメイフィの頭から離れなかった。
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| 小話 | 23:09 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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