HOME

2014年08月 | ARCHIVE-SELECT | 2014年10月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

頭の悪い弟子。

ルディブリアムの東に立つ巨塔、エリオス塔の最下段。
図書館として一般に開放されているこの場所は普段は静かであり勉学に励む者、ただ何か物語を読みたい者にとっては楽園と言っていい地である。
「えーと…それでは僭越ながら私がホロウさんのお勉強の先生として色々お話させて頂きますね。」
「はい!よろしくお願いします!先生!!」
「ほ、ホロウ君ここは図書館だよ。もうちょっと静かに…」
突然の大声に怪訝そうな顔でこっちを見つめるいくつかの顔にリーンは頭を下げて溜息を吐いた。
予測はできていた展開ではあったが早くも先行きが不安になる。
「では、そうですね…とりあえず数学の勉強辺りからはじめましょうか…んー…どの辺りから始めるのがいいでしょう?」
「そうだな…ひとまずは日常生活で使う程度の事で十分だ。まずは足す、次に引く、そして割る、掛ける程度でいいだろう…」
「うーん…でもこういう事っていざ誰かに教えようと思うと案外悩んじゃうね…こう考えると先生ってすごいんだなぁ」
セクトが感心するような声でそう言った。
確かに、無意識と言ってもいいように日常的に使っている事。それを誰かに解り易く教えようと思うとなかなかうまく言葉にできない。
まぁ、教科書を丸読みするだけで教師という職が成り立つのであればそんな物とっくに無くなっていてもおかしくはない。
それが遥か昔から今にかけて存在しているというのは決してそういう訳ではないからなのだろう。
「安請け合いしてしまったが僕達で教えるのは難しいかもしれないな…内容が内容だし1日でいいから専門の人間に頼んだ方がよかったか…?」
エーデルシュタインという町には大きな学校がある。使った事は無いが時折、何かを学びたくなった冒険家の為にいつ飛び入りでやってきても対応できるように多めに教師陣を配置していると聞く。
簡単な問題だから、とそういった施設を活用する必要は無いと考えていたが…
「とりあえず私にできる範囲解り易く説明してみます。解りにくかったらごめんなさいね、ホロウさん。」
「大丈夫です!よろしくお願いします先生!」
そんな暢気な声を出して笑うのは事の発端その人だった。
先ほど諌められたのをもう忘れたのか、又しても大きな声に向けられた視線にリーンは再び顔を下げ、呆れながらこのやや頭の悪い弟子を軽く叩いて見せた。

さて、何故突然ホロウの勉強会などを開くことになったのだろうか。事の発端は数日前、久方ぶりに開いたギルド集会が発端だった。
先日より世界中で行われている「U&Iフェスティバル」その祭りの一環にある「メイプルカードゲーム」なる物をギルドメンバー全員集めてやってみようとリーンは考えたのである。
なので、集会…というよりも交流会と言った方がいいだろうか。
リーン自身は騒がしいだけで風情が無いと思っていたこの祭りにはあまり興味は無かったが、先日その運営者に唆されたのもこの交流会のきっかけの一つではあったが…
なんやかんやでギルドメンバーは増えているがあまり顔合わせした事の無いメンツ同士も多い、この先共に仕事を行う機会があったとして妙なわだかまりができるのも好ましく無いと思えたのがやはり一番の理由だったのかもしれない。
しかしながら、こういうのに興味が無さそうな人間も何人かいるだろうし全員集まることは無いだろうと思っていたが、意外な事にキッチリと全員集まっていたのリーン自信驚きであった。
「驚いたな…まさか全員集まるとは…」
自分含めて、12人。それが全員ちゃんと集まっているこの光景は圧巻であった。
「当たり前だよー!寧ろ折角こんなお祭りがあるんだからいつこういう事するのかなってずっと待ってたんだから!リーン君、お祭りとか好きなんでしょ?」
そう言って、突っかかってくるのは藍だ。
遅すぎる、と言わんばかりに彼女は唇を尖らせながらそう言った。
「好き…っていう訳でもないがな…」
「え?でも前のジパングの祭りは結構ノリノリだったでしょ?あれだけ必死こいて焼きそば作ってる人なんて私見たことないよ?」
「藍ちゃん…もうちょっと言葉を選びなさい…」
そう言って呆れ顔を見せるのは藍の姉の蜜柑だった。
「何て言ったらいいんだろうな…ジパングの祭りみたいな花火が上がったりと風情がある祭りは好きなんだが…どうもこういうただ騒がしいって祭りはどうも苦手でな…」
「あー、解らなくはないなそれ。アタシもこういう祭りはちょっと気が引けるし。」
リーンの発言にうんうんと頷きながらキーリが口を挟んだ。
「そもそも先輩は魔物狩り以外何も興味ない様な気がするけど・・・」
「あ?なんだって?」
「いえ、別にー?」
「まぁまぁ…折角皆さん集まったのですし…」
今にも小競り合いを始めそうな二人を宥めつつメイフィはそう言った。
正直、リーン自身キーリが魔物狩り以外に興味がある事は意外だったが…
それとは別にリーンはもう一つ気になることがあった。
「自分で誘っておいてこんな事を言うのはアレだが…3人は'本業'の方は大丈夫なのか?」
'本業'とは無論アマテラスの業務の事である。Assembleのギルドメンバーに入ってるとは言えメインの仕事はそっちだ。
大事な集会でも何でもないこの交流会に顔を出している暇はあったのだろうか。
「平気平気!この話を聞いて普段からは考えられないぐらい業務の方に精を出したから!」
「へぇ?藍ちゃんは普段は業務に手を抜いてるんだ…ふーん…」
「あ…い、いや今のは言葉の綾って奴で…」
墓穴を掘った藍は口をを詰まらせながらそんな事を言う。
その様子を見て面白がるようにキーリは追い討ちをかけた。
「蜜柑さん、藍の奴は普段は『めんどうくさーい』とか『だるーい』とか言いながら仕事してるんですよ。」
「そそそそそんな事ないよお姉ちゃん!っていうか自分の仕事ほっぽり出して修復を私にまかせっきりの先輩に言われたくねーですよ!?」
「まぁ、その話は後でゆーっくりと聞かせてもらいましょうか?」
そう言って蜜柑はこの話に区切りを付けさせた後、リーンに軽く目配せをした。
これ以上、無駄話で進行の邪魔をさせる訳にもいかないと思ったのだろう。
その意図を読んでリーンは軽く頷き、皆の方へ向き直った。
「それじゃあ、各自ルールブックを読んでくれ。軽く僕もさっき見た程度だが簡単なカードゲームだ。隅々まで読まなくとも…」
「おい、オッサン。」
離している最中に今度はレイが口を挟んできた。
こういう集会を開くときは毎度毎度不機嫌そうにしている彼だったが顔を見る限りでは今回はそうでも無いらしい。
「なんだ?」
「こういうゲームなんだからよ、もちろん優勝者には何か賞品が出るんだよな?」
「れ、れーちゃんこれは大会じゃなくて交流会って…」
「知るか!やっぱりなんか商品が無いと張り合いってもんがねぇだろ!」
名目は交流会だが確かに勝負事である以上何かしら賞品が無いと張り合いも無い。
これは確かにレイのいう事も最もだ。
「そうだな…確かにレイの言うとおりだ。うーむ…賞品、賞品か…」
とはいえリーンは賞品など何も考えてはいなかったのだが…
「そうだな、優勝者には僕の熱い抱擁でも…」
「喧嘩売ってんのか?オッサン…」
「リーン君、それはセクハラだよ…」
冗談のつもりだったが女性陣の目線が冷たい。
しかしどうした物か、賞品に出せるような物は何も…
「ハッハッハ。兄さん、別に優勝者に何かを渡すって考える必要はないだろ?こういう時は寧ろ罰ゲーム方式にするのが一番さ。」
「罰ゲームか…例えば?」
「そうだな…ドベだった奴はメイド服を着て皆にお茶を注ぐとか…」
「兄さん…最低…」
「どうしてだドロシー!なんで兄さんをそんな冷たい目で見る!!男のロマンを否定するつもりか!!」
冷たい義妹の視線にシカフは必死な形相で答える。
弁論になってない言葉にドロシーの視線どころかさっきまでリーンに向けられていた女性陣の冷たい目線全てが一気にシカフへと移った。
「なぁ、シカフ…それ、俺がドベだったりした場合もメイド服着るんだよな…」
「…やっぱ無しだ。他の物を考えよう。」
クロウのそんな突っ込みに少し考えるような素振りを見せた後、急激に冷静になったシカフは小さくそう答えた。
恐らく想像したくない物を想像したのだろう。確かに、野郎のメイド服姿などリーンとて見たくは無い。

「それじゃあ、負けた人間は今日の夕食をメンバー全員に奢る事。それでいいな?」
リーンの確認に全員が首を縦に振って承諾してみせた。
結局、あれから色々考えたのだが(女が負けたらメイド服、男が負けたら燕尾服を着てお茶を注ぐなどの意見も出たが)結局は夕飯を奢るぐらいが無難だろうという結果に終わった。
だが人数が人数であるという事と、お金を余り持っていないであろうと予測される人の為に、出すメルの最大金額は30000メルと予め決めておいた。
「うーん…30000メルなら大丈夫だけどそれでも負けたら結構痛いなぁ…」
「大丈夫だドロシー。勝てばいいんだ勝てば。」
不安そうに顔を暗くするドロシーにニヤりと歯を見せてシカフがそう言った。
シカフの事だ、自分の勝ちを捨てても少なくともドロシーが最下位にならない用にうまく立ち回るのは間違いない。
「うーん…30000メル…30000メル…ど、どうしようお姉ちゃん!もし最下位になっちゃったら私、明日のご飯食べれないよ!?」
「なんで藍ちゃんの方がお金に困ってるのよ…」
「…まぁ、とにかく始めるぞ。くじ引きを作ったから同じ色同士でまずは対戦。そこからは1位同士、2位同士が…という風に対戦メンバーをローテーションする。1位は2ポイント、2位は1ポイント、3位、4位は0ポイント加算していき合計10戦して一番ポイントが低かった人間が罰ゲームだ。」
「…最下位が何人もいた場合は。」
疑問系とは思えないような口調でそう聞いたのはレイミスだった。
自分のギルドメンバーの中では一番来ない可能性があるのは彼なのでは無いかとリーンは思っていたがどうやらその心配は杞憂だったようだ。
レイミスの疑問にリーンは少し考えるように唇に手を当てうーんと唸った。
「まぁ、ギルドの人数上通常は3人か4人でゲームをするがもし最下位が何人も居たらその時は最下位全員で1ゲームすれば多分問題ないだろう、見たところかなりの大人数でもできそうなゲームだしな。」
「解った。」
「よし、前置きが長くなったが始めよう。一応言うが、勝負はフェアに行う事。」
フェア、と言っても先述の通りシカフやクロウ辺りはドロシーに手心を加えてしまうだろうが…リーンとしても例え払える範囲であっても幼い彼女にお金を払わせるのは心苦しい。
それにはこの際、目を瞑ろう。それに何より大事な事は…
「後は、皆で楽しく好き勝手騒ごう。」
その言葉を区切りに、ギルドAssembleカードゲーム大会が今、始まった。

「ん…単純なゲームだが中々難しいな…」
手持ちのカードとにらめっこしつつリーンはそうぼやいた。
非常に単純なゲームであるのだがゲームの進行は中々思い通りに行かない。
さっきから上がりにリーチをかけては元通りの繰り返しで歯がゆい思いを何度もしている。
「そうですね…あ、藍ちゃんごめんなさいね。」
メイフィがそう言って申し訳なさそうに出したのは攻撃カードだった。
攻撃カードを出された場合、次の順番の人間はそのカードに書かれている枚数分カードを引かなければならない。
手持ちのカードを全て無くした人間が勝利するこのゲームでは攻撃カードは勝利を遠のかせる一番脅威的なカードだ。
「おぉ!?怖いなぁメイちゃん!でも私も攻撃カードは持ってるもんね!ごめんねリーン君!」
次の順番の人間が攻撃カードを持っている場合はそれを出せばその攻撃から逃れることができ、更に前の人間が出した攻撃カードと自分が出した攻撃カードに書かれている枚数分次の人間が引かなければならない。
無論、次の人間も攻撃カードを持っていればいいのだが…
「ああああああああああああクソ!!勘弁してくれ・・・」
生憎リーンはそんなカード持っておらず二人からの攻撃合わせて4枚、カードを引くことになってしまった。

(クソっ、レイミスの野郎もう残りカードが1枚か…まずいな…)
内心でそう悪態を吐くのはレイだ。
どちらかと言えば運の要素が強いこのゲームだが表情というのはこのゲームの勝負を分ける事柄の一つだ。
だが、レイミスは常にどんな時も無表情であり全く読めない。無口で無表情な事は解っていたがこのゲームでまさかこれがここまで強みになるとは…
(だが俺は'オズのカード'を持っている、これが出せれば…)
'オズのカード'は攻撃カードの一つ、だが全ての攻撃カードの中で最も上位な攻撃カードなのでこれを出されると次の人間は攻撃カードを出して反撃するという事はまず不可能なカードだ。
だが、これは赤色のカードなので場のカードが赤、もしくは手前の人間が攻撃カードを出してこない限り出す事ができない。なんとかしてこれを出せればレイミスに大打撃を与えられるのは間違いない…
「うーん…青の2か…青は無いからここは赤の2だな…」
そう言って、クロウは赤2のカードを場に出した。
「よっし来た!!食らえレイミス!!」
ようやく訪れたこの時にレイは歓喜してオズのカードを場に出した。
これでレイミスに大打撃…かと思ったが…
「ミハエルのカード。俺の勝ちだ。」
無常にも出されたカードは'ミハエルのカード'だった。
これはあらゆる攻撃を無効化することのできるカードであり'オズのカード'に対抗できる数少ないカードだ。
「あああああああああああああああ!!!!!なんで最後の最後にそれ持ってんだよ!!!!!!!!!」
「切り札は最後まで取っておく。当然だ。」
なんでもないようにそう答えるレイミスにレイはギリギリと歯軋りを立てた。
更に、それに追い討ちをかけるように…
「お、黄色か。じゃあ俺もこれで上がりだな!」
クロウが黄7を出して勝負は決まったのであった。
彼らのゲームテーブルに残されたのはレイの悲痛な叫びだけだった…

かくしてゲームは緩やかに…所々で阿鼻叫喚の叫びが響きつつも進む。
「ハァ…手を抜いてるつもりはないのだが…」
主催であるリーンが得点を記入しながら重い溜息を吐いた。
自分の順位は現在11位、ギルドメンバーの総数は12人なので罰ゲーム射程内だ。
随分前に行ったギルド集会でもなんやかんやで全員の夕飯を奢るハメになったリーンとしてはなんとかしてそれは避けたい展開であったのだがこれはいよいよ持って覚悟を決めたほうがいいのかもしれない。
そう考えてまた重い溜息を吐きそうになった時、別テーブルから怒ったような呆れたような声が聞こえてきた。
「だからァ!2枚と2枚と3枚だからお前が引くカードは7枚だっつの!!何回間違えてんだよテメェ!!」
「あ、あれ…?あ、アハハ…そ、そうだよね。ゴメンゴメン…」
レイの声に一瞬キョトンとしたような顔を見せた後すぐに謝ってみせたのはホロウであった。
レイの叫び声はさっきから何度も聞こえてきたので気にしてなかったが自分のテーブルのゲームは早々に終わってしまいやる事が無かったリーンは少し気になってレイ達の方へ足を運ぶ。
「どうかしたのか?」
「あァ?どうもこうもねーよ。こいつさっきから何回も足し算間違えてんだよ。こんなのガキでも解るってのに…」
「まぁまぁ、れーちゃん…ほ、ほら、瞬間的な計算になるから間違えるのは仕方ないよ。」
そう言ってセクトはフォローしていたが表情はやや硬い、温厚な彼とは言え内心ではやや呆れているのかもしれない。
「ほ、本当ゴメン!俺、計算とか昔から苦手でさ…ちゃんとしっかりやればできるけどちょっと焦っちゃって…」
「焦って間違えるような問題でもねぇだろ!!」…と、レイが次に言うのはリーンは彼の表情を見てすぐ理解できた。
実際彼も「こんな単純な計算で…?」と思う所ではあったが、このまま放って置くのも忍びないと感じリーンはそれを制す様に口を挟んだ。
「焦ることは無いさ、ゆっくりやればいい。レイもあまり強く言ってやるな。」
尚も、レイは不貞腐れた様な顔をしていたがそれ以上何も言わなかった。

レイとホロウの一悶着があってからは以降特に何事も無くゲームは進み無事終了した後、一行はリプレの小さな飲食店、そこのテーブルを占拠していた。
ゲームが終わった後に皆で食事をするというのは交流会を開く当初は考えていなかったので、予約も取らずこんな大人数で押しかけて大丈夫だろうかとリーンはやや不安に思っていたが、
訪れた際に、店主はやや驚いた顔をしてみせた後すぐに笑顔になり急遽テーブル同士をくっつけて全員が同じ席で食事ができるよう取り計らってくれた。
結局、カードゲーム大会の一位はレイミスで決まった。戦術もさることながら完璧すぎるポーカーフェイスが功をなした…のかは解らないが彼が参加するゲームは全て彼が一位を取っており一位と二位の間でもかなりの差が出るほどだった。
反対に、最下位の座に輝いたのは後半で覚悟を決めたリーン…では無く。
「あー…負けちゃったなぁ…」
苦笑いを浮かべながら頭を掻くホロウであった…

「しっかし…前々から馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど本当に馬鹿なんだなお前…」
名物の羊肉の料理を口に運びながらレイはそう声を上げた。
先ほどの計算ミスの連発を未だに彼は根に持っているようだった。
「アハハ…そうなんだよ…俺、ほんと頭悪くてさ…」
怒るよりも羞恥が先に出てしまうのだろう、項垂れる様にホロウは力なく言った。
「ホロウさん、私達とゲームしてる時も何回か間違えてたけど…他の所でもそうだったんだ…」
「ドロシー、事実とはいえそうストレートに言ってやるな…」
どうやら計算ミスはレイ達とゲームしている時だけでは無かったらしい。
他のメンバーの表情を見てもやや複雑な顔をしている。恐らく、全員がホロウの計算ミスを目の当りにしたのだろう。
…実際、レイとホロウ達のゲームが終わった後、リーンはホロウと同じテーブルになったのだがそこでも2回ほど計算ミスをしていた。
「…ホロウはロクに学校に行ってなかったからな。それだけじゃ無いだろうがコイツの頭の悪さは筋金入りだ。」
やや沈黙が流れる場に無表情でそう言ったのはレイミスだった。
「学校に行ってない?じゃあ、まさかホロウも…」
「コイツの家は無い、だとか何か悲劇的な物を想像しているなら間違いだ。コイツは単純に学校をサボって俺の邪魔をしていただけだからな。」
何か暗い過去があるのではと深読みしたクロウがそう言うと言葉を遮ってレイミスはそう答える。
「じゃ、邪魔って…酷いなぁレイミス!俺の事をそんな風に思ってたのかよ!?」
「俺の修行の邪魔をしていたのは事実だろう。…少なくとも学校をサボってまでするような事じゃ無かった筈だ。」
何も言い返せずホロウは「ぐぬぬ…」と小さく唸った。
ここまで聞いて「なるほどな。」とリーンは納得したように頷いた。
確かに学校にロクにいってないのならば…申し訳ないがこの頭の悪さは頷ける。なんで学校に行こうとしなかったのか、その理由は置いといてだが。
「えっと…学校に行ってなかったという事は…国語とか理科とかそう言ったことも…」
「あ…うん…正直全然…」
遠慮がちに聞いたメイフィにホロウはやや俯きながらそう答えた。
「まぁ…学の無さについては俺もどうこう言える立場じゃないが…少なくとも計算ぐらいはなぁ…」
そんなシカフの言葉で撃沈したようにホロウはいよいよテーブルに顔を突っ伏す。
理科や歴史、そんな物は日常生活で使うような事ではないが簡単な計算というのは生きていれば常に付き纏ってくる事だ。
自分自身も勉強ができると思っている訳では無いがこれは流石に…とリーンが思ったその時、突っ伏していた顔が突如勢い良く上がった。
「師匠!!俺に勉強を教えて下さい!!」
転んでも挫けず立ち上がるのはホロウのいい所…いい所であるのだが…
またしても教える事が増えてしまいほとほと手間のかかる弟子にリーンは大袈裟に溜息を吐いて見せた。
かくして、話は冒頭に戻る。
スポンサーサイト

| 小話 | 08:46 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。