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迷子と再会と。2

日も暮れ、空はすっかり暗くなり静寂が街を包み込んでいる。
しかしながら街の中はそれなりの明るさがある。蛍の様に転々と輝く街灯と、こんな夜中にも開いている店だけがこの闇を照らす唯一の光だった。

少し小洒落た店内の中は夜も更けているというのに店内はそれなりの活気が満ちている…おそらく殆どの客は冒険者達であろう。
ある者は自分の武器を下ろして今日の出来事、そして明日の予定等を仲間と語っていたり、またある者は一人ゆっくりと酒を呑みながら考え事に耽っていたりしている。
昼夜関係無く彼方此方を動き回る冒険者にとってこういった夜中まで開いている店というのは非常に在りがたく、憩いの場と言ってもいいぐらいだ。
そして、こういう夜中まで開いている店というのは大抵は酒場であるという事もあり、店内は酔った客の声で外の静寂とは考えられないぐらい賑わっている。
そんな賑やかな店内でカウンター席に二人の青年が腰掛けていた。
二人の前にはコップが一つずつ。中身は言わずもがな酒だ。二人は軽くコップを合わせ乾杯をしてその酒を少しだけ煽った。
「で…そろそろ今まで何をしていたのか教えてくれないか?」
コップをテーブルに置き、長い緑髪の青年はすぐ横にいる赤髪の青年にそう切り出した。
その質問にクロウは少し笑い、答えた。
「いや…なんつーか…別に隠しているつもりじゃあなかったんだがな・・・」
「あれだけこっちに質問攻めしておいてよく言うな…あれじゃまるで『俺の事は何も聞くな』って言ってる様に見えたぜ?」
日中、思わぬ所でクロウと再会したシカフは当然今まで何処で何をしていたのか聞こうとした。
が、言いかけた所で即座にクロウがこちらに対してさながらマシンガンの様に質問攻めをしてきたのだった。
後で聞けばいい、そう思ったシカフはその質問に答えつつ、間が空いた所で再度質問しようとしたがそうすれば再びクロウが質問を繰り返す。
よくもまぁ、そこまで質問するネタが尽きない物だな、とシカフは思ったがそういった事が数回続くとなると何か言いたくない理由があるのかもしれないと思いその場ではそれ以上追求はしなかった。
それに、ドロシーがクロウと再会できた喜びでそんな事全く気にしていなかったというのものある。ここで聞かれたくない質問をして場の空気を濁すより後々二人になった時に改めて聞けばいいとシカフは判断した。
ともあれ日中は3人であちこちを回って観光し、気が付けばこんな時間にまでなっており、最終的には遊びつかれて眠ってしまったドロシーを背負って宿まで送った後、シカフはクロウをこの酒場まで連れ出したのだった。
「…すまん。本当に隠していた訳じゃ無かったんだ…ただ…言い辛くてな…」
真剣な面持ちでクロウはそう告げた。
「言い辛いって…何か妙な事でも今までしてたのかい?」
「別にそういう訳じゃねぇけど…」
間が空く。何をそんなに言いにくそうにしているのかシカフには全く判らない。
そこまで言いたくないのならば本当に追求しない方がいいのだろうか、だが、彼が村から出て今まで何をしていたのかは非常に気になる。
無理でも聞き出すべきか、聞かざるべきか、そう考えているとクロウは唐突に深呼吸をしてシカフの目を見て口を開いた。
「…お前さ、俺の事…恨んでるよな…?」
「はぁ?」
「いや、だって…俺がお前の事面倒見てやるってデカい口叩いておきながら勝手に村から出て行ってさ……つーか、正直、今こうやってお前が俺と口聞いてくれるなんて思ってすらいなくてさ…」
「…」
「本当に、済まなかった…」
真剣な表情で頭を下げるクロウだったがシカフは「なんだ、そんなことか…」と内心で溜息を付いていた。
当然、シカフはクロウの事は感謝こそすれ、恨んでなどいない。
普段は頼りがいのある兄貴肌を見せ、妙な所で気を使う。そんな性格はあの時から全く変わっていないようだった。
「…俺はそもそもお前はとっくに死んでると思っていたさ・・・恨むも何もねぇよ…」
「シカフ…」
とはいえこのシカフ=ヤットレイは当時の様な素直な性格では無かった。
「気にするな。」の一言で済むというのに捻くれた口を叩いてしまう。
そんな、彼の言葉の意図を掴んだのかクロウは少し笑った。
「お前は可愛げが無くなったなぁ…」
「そうかい…」
「昔はクロウ、クロウ~って俺の後ろに付いて来てたのになぁ…昔のような素直なお前は何処に行っちゃったのかなぁ…」
「む、昔の事はいいだろ別に…」
唐突に昔の話を出されてシカフ照れくさそうにそっぽを向いた。
そんな様子をケラケラとクロウは見ていた。
「とにかく…別に俺はお前の事は恨んでなんかねぇよ…お前は妙な事で俺に後ろめたさを感じてるかも知れんが…そんなの、全く気にすることじゃねぇさ…」
「…そうだな。有難うな、シカフ…」
そういってクロウはシカフの頭をポンポンと軽く叩いた。
最近は自分が誰かに対して行う事が多くなった動作だったが今更自分がされる側になるのはどうにも恥ずかしく、照れた表情でシカフはクロウの手を払った。
「んじゃ、話すよ…といってもまぁ、大した話でも無いんだがね…」
そう言って、彼は軽く息を吐き自分がこれまで何をしていたのかを話し始めた…

-あの時、俺は自分が無力っていう事を本当に思い知らされた。
自分一人でも魔物ぐらいどうって事は無い、あの時は本気でそう考えて・・・一人で無茶して、村の人にもすげー迷惑掛けて本当に情けなかった。
なんつーか…俺は当時村の子達の中でも最年長って言うのもあったから常に「自分がしっかりしないといけない」「強くならなくちゃいけない」って気持ちがあって…
その気持ちがいつの間にか「最年長なんだからしっかりしている筈だ」「自分は強い筈だ」っていう気持ちにいつの間にか変わっちまってたんだと思う。
ははっ、今思えば本当恥ずかしい…その結果がアレなんだからな…
恩を返さなきゃいけない筈の村の人にすげー迷惑かけて…兎に角、恥ずかしくて、情けなくて…な…
それで、自分は今のままじゃ何もできないって思った。
強くならなくちゃいけないって、気持ちだけの話じゃなくて本当に強くならないといけないって思ったんだ。
で、一度だけドロシーの家にあった本で見た事あったんだ。村から遠く離れた場所に魔物退治の技術を専門的に教えてくれる道場があるって事を…

-そこまで話してクロウは一度口を閉じた。本当に長く語る程の事でも無かったが…シカフは今まで彼が何をしていたのかを理解した。
「…じゃあ、お前は武稜道場の門下生なのか?」
「そういう事だ。村を出て彼是…8年近いか…?ほとんど外も出ずにずっとあそこで俺は過ごしていたよ。」
そう言って彼は自分の服の袖を少し捲って見せ、シカフは驚愕した。
当時の頃よりも遥かに筋肉が付いているのが判る…が、それ以上に服の上からだと全く判らなかったが腕中あちこちに生々しい痣や傷が残っていた。
「そんなになるまで…ずっと修行してたのか…?」
「あぁ、まぁな…」
捲った袖を戻して、クロウはまた酒を煽った。
「…じゃあ、またすぐにあの道場に戻るのか?」
「普段ならそうなんだがな…うん…」
そこでクロウは言いよどむ。シカフは少し首を傾げその言葉を続きを待った。
「…今日になって師範に突然言われたんだよ…『もっと世界の事を知れ』ってな。腕は認めてやるが今のままでは一人前とは認めてやれないってさ。」
「どういう事だ…?」
「こっちが聞きてぇよ…まぁ、意味はそのまんまなんだろうけど…抽象的すぎて何すりゃいいかわかんねーし途方に暮れてたんだよ…」
で、そんな時に俺やドロシーと再会したって訳ね…と、シカフは内心で思った。
扉から出てきたクロウが顔を俯けていた理由も彼は納得する事ができた。
「なら、一度村に帰ったらどうだ?俺もしばらくは村に帰ってないが…俺が村を出る時もみんなお前の事ずっと心配していたんだぞ?」
その言葉にクロウは首を横に振った。
「これは俺が勝手に決めた事だけどさ…道場で一人前って認めてもらうまで村には帰らないって決めてるんだ。道場で認めてもらって、俺はやっと胸張って村に帰れる気がするからさ…」
「そうか…」
正直な所、シカフとしてはそんな事気にせず元気な顔を少しでも早く村の人に見せてほしいとも思ったが…
彼自身村にはもう1年近く帰っていない為そんな事言える立場では無い。シカフは言いたい言葉を酒と共に腹の中へ飲み込んだ。
「なぁ、シカフ。お前は村の人達への恩返しって何か考えてるか?」
「え…?」
唐突な質問にシカフは少し戸惑った表情を見せる。
村の人への恩返し…勿論、忘れた訳では無かった。だが、実際どんな事をするかクロウがいなくなってから本気で考えた事があっただろうか?
…はっきりいって全くと言ってい程無い。これ以上迷惑を掛けてはいけないという気持ちばかりが先行して恩を返すという事を全く考えていなかった事に彼は今更ながらに気づかされた。
「…すまん…正直、全く考えてなかった…」
クロウは怒るかもしれないと思ったが、シカフは正直に自分の気持ちを告げた。
だが、シカフの意に反してクロウは笑うだけだった。
「ハハ…まぁ、無理もねぇわな…つーか、そんな事を考える余裕を無くしちまったのは俺の所為な訳だしな…」
「そういう訳じゃないが…」
そういう訳では無いと言ってもそれは事実だ。
だが、それをクロウの責任として押し付けるような事、シカフはしたくは無かった。
何とかフォローを入れようと思うが上手い言葉が出てこない…
「…実は…俺、村に帰ったら自警団をやろうと思ってるんだ。ほら、あの村って魔物と戦える人達って少ないから魔物が出たら村の外の誰かに依頼しないと退治なんてできないだろ?…あの時からずっとそう考えてるんだ。」
「…」
「だからその…もし俺が一人前って認められてさ村に帰る時が来たら…お前さえよければ俺と一緒やってくれないか?」
自分は何も考えていなかったのにクロウはずっと村の事を考えていたという事にシカフは自分を恥じた…それと同時に安心した。
何年もずっと会っていなかったがクロウは何も変わっていないと言う事に。あの時から変わらず自分の一歩先を進みながらも自分の隣を歩かせてようとしてくれる彼の姿に。
「あぁ…俺でいいなら一緒にやらせてくれ…有難う…クロウ…」
「?何言ってんだよ、つーか、礼を言うのはこっちだよ。有難うなシカフ。」
そう言ってクロウはまたシカフの頭を軽く叩いた。今度はそれを払いのける事をシカフはしなかった。
「まぁ、それにはまず何としても一人前って師範に認めてもらわないといけないんだがな…どうしたもんかなぁ…」
「あぁ、なら俺から一つ、提案があるんだ…」
久方ぶりの再会で…村に恩を返す、というあの気持ちを思い出すことができた。
あの時から何も変わらないこの頼れる兄を一人前として認めてもらう手助けを'此処'ならできるかもしれない。
そしてそれと同時に…自分も一人前と誰かに言ってもらえる人間にならなければいけないと。
彼の隣を堂々と歩ける人間にならねばならないと青年は思った。

※キャラクター紹介に「Cllow」を追加しました。

くろう
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