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悪魔。3

『こわいよう…』
-何がだ?
『あんなのにおそわれたら…ぼくやられちゃうよ…』
-あの、小っせぇ魔物か?
『うん…だれか、たすけて…』
-戦えばいいじゃねぇか。
『そんなの…ぼくには…むりだよ…』
-そうか、じゃあ…



-俺が殺ってやるよ-




「ん…」
目が覚めると、朝の光が窓から差し込んでいた。…どうやら今日も快晴のようだ。
セクトは少し身を起こし欠伸と共に大きな背伸びをした。
体調は悪くない。結局、昨日どうして自分が倒れたのかは相変わらず解らないままだったが。
だが、その得体の知れない気持ち悪さに唸るよりも、セクトは先刻まで見ていた夢の内容に意識が向いていた。
「懐かしいなぁ…」
あの光景は今でも鮮明に残っている。
自分がまだ小さい頃、興味本位で村の外に出て行った時に小さな魔物に遭遇した時の事だ。
魔物とは言え、本当に弱小の魔物だ。その気にならなくても棒でも持てば子供でも倒せてしまう程の。
だが、それでも当時のセクトは怖がってとてもそんな事はできなかった。無論、魔物自体に遭遇した経験すら無かったのもあるのかもしれないが。
だがこの記憶が鮮明に残っているのは初めて魔物に遭遇したからというのが理由では無い。
『よう、お目覚めかい?主さん?』
「あぁ、アレン。おはよう。今日もいい天気だね。」
それ以来自分の心の住人アレンと初めて出会ったのは、その時が初めてだった。

『体調はどうなんだ?大丈夫そうなのか?』
「うん。ぐっすり眠れたから大丈夫だよ。」
万全さをアピールするようにセクトを腕をぐるぐると回して見せた。
『そうか…で、今日はどうすんだ?』
「どうなんだろう?とりあえずれーちゃんに聞いてみないとね。」
そう言って、セクトは身支度を簡単に整えると部屋を後にした。
そういえばレイの部屋は何処にいるのか聞いていなかった為、どの部屋に入ればいいだろうかと戸惑ったが丁度タイミングよくレイは隣の部屋から寝ぼけ眼で出てきた。
「あ、おはよう。れーちゃん。」
「んあぁ…?あぁ…」
ぼりぼりと寝癖だらけの髪の毛を掻きながらレイは答える。
まだ半分眠っているようで目が半開きになっている。睨み付けている様にも見えるそれに思わずセクトは少しビクりとしたがすぐに姿勢を整えて聞いた。
「今日はどうするの?昨日と同じ場所にまた行く?」
「あぁ…?お前大丈夫なのかよ?」
「うん、体調はバッチリだよ。今日は絶対大丈夫!」
「本当かぁ?お前また無理してんじゃねぇだろうな?」
「う、うん。本当だよ!」
'また’も何も昨日も無理をしていたつもりは一切無かったのだが…
もしかしたら自分が大丈夫だと思っているだけでまた昨日のように倒れてしまうのでは無いか、と思うとセクトの返答は少し濁った。
「そうか…まぁ、でも今日は休もうぜ…俺、まだ眠い。」
そう言ってレイは大きな欠伸をしてみせた。よく見るとレイの目元は隈ができている。
「…もしかして寝てないの?」
「あぁ…まぁな…」
「…ごめん、心配かけて…」
「別にお前が心配してたからとかじゃねーよ…まぁ、大丈夫そうならいいわ。俺、寝るから。今日は休みな。」
まぁ、勿論セクトが心配で中々眠れなかったのがレイの寝不足の原因なのだが…それを素直に言うようなレイでは無い。
スリッパを半ば摺るようにレイが自分の部屋に戻ろうとした時唐突にアレンは'声'を出した。
『…なぁ、俺達のギルドマスター様は何処の部屋にいんだ?』
「え…?ねぇ、れーちゃん。リーンさんも昨日ここに泊まってたの?」
「あぁ?オッサンがぁ?知らねー…俺は見てねぇよ。」
「そっか…解った…」
唐突な質問に怪訝な顔をしたレイだったが眠気が上回っているのだろう。何も言わずに自分の部屋へと戻っていった。
「って言ってるけど…アレン、どうしたの?」
『いや…別になんでもねぇよ…』
5部屋ほどしかない小さい宿屋だ。同じ場所に泊まっているなら遭遇しないという事はまず無い。
一応念のため宿屋の主人に聞いてみたが昨日の宿泊客の中にリーンの名前は無かった。
「今日はお休みか…どうしよっかな。」
てっきり今日もまた狩りに出かけると予想していた為何も考えていなかった。
もちろん、危ない事をしなくていいと言うのはセクトにとって嬉しい事だがこうなるとアレンがグチグチと文句を言うに違いない…寧ろ自分達だけでも魔物狩りに行くと言い出すかもしれない。
聞こえてくるであろうアレンの不機嫌な声に内心備えていたのだが…
『そうだな…』
セクトの予想は又しても外れた。
思えばさっきもよく解らない事を聞いてきた事といい…なんだか今日のアレンは様子がおかしい。
「アレン、どうかしたの?」
『あぁ?うっせーな、なんでもねぇよ。……休みなら適当に村でもぶらついてりゃいいんじゃねぇの?あんまり見てなかっただろココ。』
「うん…そうだね。そうしよっか。」
様子がおかしい心の住人に疑問を持ったが…確かにこの村は全然観光らしい事はしてなかった。
長閑な村だしいい気分転換になるかもしれないな、と思いセクトは少し気を良くしながら宿屋を出て行った。

リプレの気候は今日も穏やかな物だった。
住人はハーフブリンガーと呼ばれる獣人が中心なのだが彼等の気性も穏やかであり余所者であるセクトの事も歓迎してくれている。
そして尚且つセクト本人も穏やかな性格をしている…そういった点でセクトはこの村と'馬が合う'ようだった。
村の名産物を食してみたり、住人と他愛の無い会話をしてみたりと…セクトは久しぶりの休日をゆっくり満喫していた。

「あ、ここがそうなんだ。へぇ~綺麗な所だなぁ。」
少し日も暮れ始めた頃合になってセクトは少し村から外れた場所に訪れていた。
どこまでも透き通る川の流れに沿って歩いてたどり着いたこの場の景色に思わず感嘆の声を漏らす。
川に少し手を入れてその冷たさに驚きすぐに手を引き抜いてしまったが…再び手を入れてその冷たさが心地よい物に変わると、今度は靴も脱いで素足を川に晒し座り込んだ。
「ここ、メイフィさんが初めてキューイと会った場所なんだってさ。この間教えて貰ったんだ。」
独り言…では無い。セクトはアレンに向けてそう呟いた。
『そうか…』
何か面白い返事に期待していた訳ではなかったが、あまりにも素っ気無い返答にセクトは少しムっと眉間に皺を寄せた。
…だが、思えば今日のアレンの様子は朝から変だ。いつもならもっとやかましく煩わしく自分にちょっかいをかけて来る筈なのに(もちろんそうでは無いのは在り難いのだが)今日はアレンはほとんど声を出していない。
「アレン…今日なんだか変だよ?どうかしたの?」
らしくない心の住人の様子が心配になったセクトはそう問うた。
『別に。なんでもねぇよ…』
「本当に?どこか具合が悪かったりしてない?何か、悩み事でも…」
『なんでもねぇっつってんだろうが!!ぶっ殺すぞ!!!!!!!』
予想に反して、ビクりとするぐらいの剣幕の声に思わずセクトは黙り込んでしまった。
だが、やっぱりアレンに何かがあったとセクトは確信した。
口は悪いアレンだが…少なくとも、自分にはこんな事普段は言わないのだから。

『…悪い。』
それからもしばらく沈黙が続いていたがやがて先に謝罪の言葉と共に声を出したのはアレンだった。
セクトは少し顔を緩ませて首を横に振る。
「ううん、こっちこそゴメンね。」
返答は無い。これ以上追求するな、と言いたいのかもしれないが…勇気を出してセクトは続けて口を開いた。
「どうしても言えないっていうなら勿論無理には聞かないけど…でも僕、アレンの事が本当に心配なんだよ。今は言えないならそれでもいいから…もし悩み事とかあるなら僕に相談してくれると嬉しいな。アレンで解決できない事なら僕なんかに解決できる訳なん

てないかもしれないけどさ…それでも話を聞くことならいくらでもできるから…」
『…』
セクトの言葉に尚の事アレンは黙り込んだ。
だが、その言葉はセクトの心の底からの本心だという事をアレンは理解していた。
そして、意を決したようにアレンはそっと声を出した。
『なぁ、主さん…主さんにとって俺ってどういう存在だ…?』
「え?どういう事…?」
『そのまんまの意味だよ。答えてくれ…主さん』
「え、えぇ?…うーん…そうだなぁ…」
意図の掴めない質問にセクトは唸った。
どうして急にそんな事を聞くのかとか、もしかしてこれがアレンの悩み事なのか、とも思ったが…余計な考えを放棄してセクトは口を開いた。
「初めて僕達が会った日の事覚えてる?」
『あ?あぁ…』
「あの時、僕が魔物に遭遇して…何もできなくて泣いてる時にアレンが出てきてさ。その魔物をあっという間に退治してくれたよね。」
『そうだったな…』
「だから、僕にとってアレンは助けてくれた恩人…かな?」
『そうか…』
「でもね…」
一息いれてセクトは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「勿論アレンは僕の恩人だと思ってるけど…それ以前にさ、アレンはずっと僕の中にこうして居てくれてる。辛い時とか悲しい時とか嬉しい時とか楽しい時とかずっと僕はアレンと一緒に感じてきたんだけど…えぇっと…どうしても最後まで言わないとダメ?」
『…頼む。』
「口にするのは恥ずかしいなぁ…えっと、だから…どんな時でもずっと傍に居てくれていたアレンは、れーちゃんよりも…お父さんやお母さんよりも誰よりも僕にとって大切な…親友だと思ってるよ…」
そう、とんでもなくクサい事を口走ってセクトは湯気が出そうな程顔を真っ赤にして俯いた。
場所が場所ならきっとのたうち回っていただろう…
「ぼ、僕はアレンの事をこう思ってるよ…恥ずかしい事言わせないでよ本当…っていうかどうして急にこんな事…」
『………クッ…ハハハハハ!ヒャハハハハハハハ!!』
唐突に聞こえてきた笑い声にセクトは目を丸くする。
「え、え?な、何?」
『ヒッ…ヒヒヒヒヒ!悪い悪い…ヒャハハハハ!!からかうつもりで聞いてみたんだけどよ…まっさかそんなイイ事いってくれちゃうなんて思ってなくてよぉ…ハハハハハ!!』
「なっ…!?」
'からかうつもり'?なら、もしかして…
「え、じゃ、じゃあ朝から様子が変だったのもからかう為だったっていうの!?」
『そうだよ。妙に心配してくれちゃってる主さんとか中々面白かったぜぇ?』
「な、なんだよそれ…」
がっくりとセクトは項垂れた。
自分の心配はただの杞憂でまんまとアレンの思う壺に踊らされていたというのか…
まぁ…でもそれもアレンらしい。恥ずかしい事を言わされてしまったが自分の心配が杞憂だった事に安心した。
「まぁ、元気ならいいよ…もう…」
『怒るなって主さん!ヒャハハハハハ!!……まぁ…でも、有難うな…』
「え?」
『なんでもねーよ!それより主さん、ちょっと体動かそうじゃねぇかよ!魔物狩りといこうじゃねぇか!!』
「え、い、いまからいくの!?もうこんな時間だよ!?」
『関係ねぇよ!オラ!!さっさと行こうぜぇ?』
安心したのも束の間である。やっぱり自分に休日なんて物は無いらしい…
大きなため息をついてセクトはとぼとぼと村の外へ…魔物達の住処へと歩き始めた。


-やっぱり、俺はコイツを殺せねぇな…
その悪魔はある覚悟を決めた。
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| 小話 | 21:53 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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