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回想1

特に意味も無いが昔の事を語ってみようと思う。
まぁ、それほど語れる事でも無いし声に出してそれを語る訳でもない。
頭の中だけで、誰にも聞かれる事の無い本当に意味も無い語りだ。
まぁ…もし今、俺の頭の中を覗いてる奴がいるとするならばつまらない話だがちょっとばかり聞いてみるかい?


-あれは今からもう10年近く前になるか。
俺、シカフ=ヤットレイは親に捨てられた、どうして捨てられたのかは…よく解らない。
愛されてなかった訳では無いと思う。
家は貧しかったがそれでも父さんと母さんは俺に優しくしてくれていた。

ある日、父さんと母さんは「旅行に行こう」と俺を連れて家を出た。
さっきも言った様に、貧しい家庭だったから旅行に行ったことなんてこれまで一度も無かった。
だから、俺は跳ねて喜んで父さんと母さんについて行った。…今思えば何の準備も無く、唐突にそんな事を言い出してその日の内に家を出たのはあまりにも不自然な事だったが…
そんな事、俺は全く気にする事なんて無かった。
舟に乗り、船に乗り、挺に乗り…自分の家への帰り道も解らなくなるぐらい次から次へと船に乗った。
観光などとはとても言えない、ただ只管に船に乗っているだけの旅だった。

そんな船旅を何日も続け、俺達が最後に辿りついたのは小さな村の小さな公園だった。
遊具と呼べる物は2つほど。ブランコ1つと少し大きいドームのような遊具だけ。
-少し、此処で休憩しようか
と、父さんはそう言ってベンチに腰を掛ける、母さんもその横にそっと座った。
俺はまだ遊び足りなかった、という気持ちもあったからそのブランコに足を掛けて漕ぎ始めた。
夕焼けの中できぃきぃ、と軋んだ音を立てるブランコは何故か今でもやたら印象に残っている。
何時壊れてもおかしくないほどにボロボロのブランコだったが風に乗るような感覚に俺は夢中で只管にブランコを漕いだ。

どれくらい漕いでいただろうか?
満足するまでブランコを漕いだ俺はブランコを降りて父さんと母さんのいるベンチに視線を向けた。
-すごく高い所まで行ったでしょ?
そんな自慢げな目をしていたと思う。
…だが、その視線の先に父さんと母さんはいなかった。
-何処かへ隠れたのかな?
俺を驚かせようとしてきっと何処かへ隠れたのだろう。まず俺はそう思った。
ちょっとしたかくれんぼ。そんな気分で俺は辺りをあちこち探し回った。
だが、公園中を探し回っても見つからない。
辺りはすっかり暗くなってしまっており、真っ暗で探すのも難しい。
-もう降参だよー。お父さん、お母さん出てきてよ!
そんな声も虚しく公園中に響く。
そして、俺が父さんと母さんの姿を見たのはそれ以降一度も無い。

父さんと母さんが突然いなくなってその日は結局ベンチの上で一夜を明かした。
目が覚めてどうして自分がベンチの上で寝ていたのか、一瞬困惑するがすぐに昨日の記憶が鮮明に蘇る。
心細さと不安で涙が自然と目から零れた。
寂しい、怖い、お腹も空いた、喉も渇いた。
様々な気持ちが濁流の様に自分の心を攻め立てるがどれ一つとしてそれを癒してくれる物などここには存在しない。
父さんと母さんを探しに外に出るべきでは無いだろうが、とも考えた。
だが、もしかしたらここで待っていたら迎えに来てくれるかもしれないという僅かな希望と、自分の今現状の絶望で俺は結局動く事ができなかった。
目が覚めてまだ数分。何もできない無力なガキが睡眠という逃避に走るのは必然の事だった。

-旅行、楽しかったかい?シカフ。
-うん!すごく楽しかったよ!
-おみやげも沢山買ったからねぇ。まずどれを開けようかしら?
家に帰ってきた俺達家族はそんな和気藹々な会話をした。
-じゃあこれから開けようよ!
俺はそう言って一番取りやすい位置にあった箱を取った。
小奇麗な包装を乱暴に剥がし、箱を開ける。
-・・・あれ?
箱の中身は何も無い。店員が入れ忘れたのだろうか?
どういう事だろう?と視線を父さんと母さんの方へ向ける。
だが、父さんと母さんはそんな事気にする様子も無くニコニコとまるで人形の様な笑みを浮かべているだけだ。
-父さん・・・?母さん・・・?
手に持っていた箱にも異変が訪れた。
ドロドロとそれは溶けるように消滅する。声をあげ慌ててその箱を投げ捨てた。
溶け出したのは箱だけでは無かった。母さんと父さんもその笑みを浮かべたまま頭から溶け出す。
言葉を失い、ただ呆然と初めは見ていた。何が起きたのかすら解らない。
やがて二人の顔が半分程溶けた、グロテスクなその笑みを今だに此方に向けている。その光景に。
-うわあああああああああああ!!!

「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!」
俺の意識は急速に現実に戻り飛び跳ねる様に起き上がった。
どうやら、夢を見ていたらしい。
なんだ、夢かとほっと安心したのも束の間、すぐに現実を思い出して俺は落胆した。
あれは夢だったが、今のこの現実は夢では無い。俺はまた俯いて目に涙を溜めた。
お願いだから、早く迎えに来てよ、父さん、母さん…そう思った矢先の事だった。
「おい。大丈夫か?」
唐突に掛けられた声に俺は驚き辺りを見回す。そして俺は今公園じゃない所にいるという事にようやく気付いた。
天井は異常に低く、狭苦しい空間。窓一つ無く中央にある蝋燭の炎だけがこの空間の光源のようだ。
そんな薄暗い空間にソイツは壁に背もたれてこっちを見ていた。
「随分うなされていたから大丈夫かと思ってたけど…つーか、まさかいきなりあんなデカい声あげて起きるなんて思ってなかったぞ。」
ソイツは立ち上がって俺の方へとゆっくり歩いてきた。
と、いってこの狭すぎる空間では5歩、歩くか歩かないかで部屋の端から端まで移動できそうなんだが…
背丈は当時の俺より少し高い。顔立ちもまだ幼いがやや年上である事が解る。つまり…そいつも俺と同じ子供だった。
俺の額に手を当てられた。
「熱は無いっぽいな。んじゃ大丈夫か。」
安心したように頷いて、額の手を離した。
「なんかベンチの上でぶっ倒れるみたいに寝てたからさ。ちょっと心配でここまで運んできたんだ。つーか、この辺じゃ見ない顔だな?どっから来たんだ?つーか、どうしてあんな所で寝てたんだ?」
マシンガンの様に浴びせられる質問に戸惑うのと、見知らぬ場所に連れてこられた事と、そして同じぐらいの年の子供と言えど見知らぬ人間であるという事に俺は口ごもり中々声を出せない。
そんな、俺の代わりにと言わんばかりにその返答は俺の腹が答えた。ぐううう、と唸るような音が狭い空間に響く。
「ハハ、なんだ腹減ってんのか?んじゃこれでも食べな、あと飲みな。」
俺の手元に少し乱暴に紙袋と水筒が投げ渡される。
紙袋を開けてみるとパンが2つ。出来てから時間が大分立っているからかぐっしょりとしてとても美味しそうには見えなかったが…入っていた。
だが、1日何も口にしてなかった俺はそのパンを夢中になって齧り付いた。
その見た目に反してそれは物凄く美味しかった。空腹は最高のスパイスという奴だろうか?
パンが2つというと今となっては到底満腹感に至れないが当時の俺からすればそれは十分すぎる程の量だった。
「アハハハハハ!随分腹減ってたんだなぁ。」
俺の食べっぷりを見てソイツは豪快に笑った。
そんなに笑われるような食べ方だったんろうか?と俺は少し恥ずかしくなって俯く。
「でさ、どうしてあんな所で寝ていたんだ?まさか昼寝してた訳でもないんだろ?」
「え、えっと…」
腹も膨れて少しばかり気分も落ち着いていた俺はようやくまともに口を開く事できた。
遠い所から両親と船に乗ってここに来た。
この公園に着いて遊んでいたら突然両親がいなくなった。
それでずっと両親を待っていたが今だに迎えに来てくれない。
今に至る迄を箇条書きにすれば3行。たったそれだけの事を伝えるのに、俺は随分と時間がかかった。
「そうか…お前も…」
さっきの様に陽気に笑いながら返事をするかと思いきや、ソイツは随分と深刻そうな顔をした。
今思えばだが、明らかに両親に捨てられたと考えるのが当然の事だろう。
でも、当時の俺はそうとは思っていなかった…いや、考えたくなかっただけか…
ともあれ、ソイツの何かを理解したような表情の意味を、俺は理解する事ができなかった。
互いに沈黙する。その沈黙を先に破ったのはソイツだった。
「んじゃ、お前のとーちゃんとかーちゃんが迎えに来るまで俺が面倒みてやるよ!つーか、どうせ行く所なんて無いだろ?」
随分と頼もしい台詞を掛けてくれたが、ソイツもまた同じ子供。頼もしさなんて微塵にも感じられない筈なのだが、見知らぬ土地で近くに両親がいないという心細さに押しつぶされそうだった俺にとっては非常に救いの言葉だった。
「俺はクロウ(Cllow)。お前は何て言うんだ?」
「ぼ、僕はシカフ…」
あぁ、そういえば当時の一人称は'僕'だったんだっけか。まぁ、それはおいといて。
こうして俺とクロウのこの奇妙な共同生活は始まりを迎えた訳だ。


なんだかアホみたいに長くなりそうなので一旦此処まで。
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| 小話 | 18:40 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

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